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とうきょうの教育 第93号 中学校版 学力向上

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公開日:平成23年(2011)1月31日
最終更新日:平成23年(2011)1月31日

東京の子供たち、文章を書く問題が少し苦手です。

平成22年4月20日に実施した「全国学力・学習状況調査」の結果から、東京の子供たちの学力に関する課題が明らかになりました。

「平成22年度全国学力・学習状況調査」(平成22年4月20日実施)
国語B(活用)問題

赤太字の部分は、人間が何をどうすることを表したものですか。10字以内で書きなさい。

【資料】
〈略〉猫のように一年じゅう同じ物を着通せというのは、不完全に生まれついた彼らにとって、ちと無理かもしれんが、なにもあんなに雑多なものを皮膚の上へ載せて暮らさなくてものことだ。羊の御厄介になったり、蚕のお世話になったり、綿畑のお情けさえ受けるに至ってはぜいたくは無能の結果だと断言してもいいくらいだ。
(明治時代の小説 夏目漱石「吾輩は猫である」による。)

  •  
  • 「人間が衣服を着ること」
    このような正しい解答ができた中学3年生は、全体の37.8%でした。
  • 「ぜいたくは無能の結果」
    このような本文の一部を引用しただけの解答をした中学3年生が、44.0%いました。

(「平成22年度全国学力・学習状況調査報告書」(東京都教育委員会作成)から)

 

本文中の比喩(例え)を用いて表現された内容について、その意味をとらえて簡潔に書く問題です。

この問題は、東京の中学校3年生の生徒の、およそ3人に2人の生徒が正しく解答できず、本文の一部を引用しただけの解答が多くありました。

「文を作り出すことに慣れていない」「比喩(例え)という技法を理解していない」「読解するための知識が不足している」といったことが原因と考えられます。

 

東京の子供たちの学力向上のために、東京都教育委員会では、子供たちの読み解く力を伸ばす授業を行っていきます。

  • 文章や図表、グラフ等を手がかりに、問題を解くのに必要な情報を正確に取り出す力を伸ばします。
  • 取り出したいくつかの情報を比べたり、関連付けたりして、問題の内容を読み取る力を伸ばします。
  • 読み取った内容と、自分の知識や経験とを照らし合わせて、意図や背景、理由を考えて解決する力を伸ばします。

 

子供たちの「読み解く力」、東京都教育委員会ではこのような授業で伸ばしていきます。

赤太字の部分は、人間が何をどうすることを表したものですか。 10字以内で書きなさい。

【資料】
〈略〉猫のように一年じゅう同じ物を着通せというのは、不完全に生まれついた彼らにとって、ちと無理かもしれんが、なにもあんなに雑多なものを皮膚の上へ載せて暮らさなくてものことだ。羊の御厄介になったり、蚕のお世話になったり、綿畑のお情けさえ受けるに至ってはぜいたくは無能の結果だと断言してもいいくらいだ。
(明治時代の小説 夏目漱石「吾輩は猫である」による。)

 

「この問題に解答するときの条件を、先生はこのように整理してみました。どのように解答したらよいのか、これからみんなで考えていきましょう。」

  1. 「何を」が示しているものを考えよう。
  2. 「どうする」は何をすることだろう?
  3. 10字以内で解答をまとめよう。

「「羊の御厄介になる」とか「蚕のお世話になる」ってあるけど、羊も蚕も人間が世話をするものなので、変な感じがします。」

「そうですね。だから、これは書いてある意味そのままだと考えると、不自然ですね。そのままではないとすると、どうでしょうか?」

「何か他のことを、この「羊の御厄介」という言い方で何かを例えているっていうことはありますか。ぜいたくをすることかな?」

「いいところに気付きましたね。こういう表現を「比喩」といいます。この「羊」「蚕」「綿畑」から何か思いつきますか?
文章の他のところも、ヒントがあるのでよく読んでください。」

「文章内に「着通す」とか「皮膚の上へ載せて暮らす」とあるから、これって着るもの・・・服のことを指しているのかな?」

「羊と蚕からできるものだから、ウールとシルクのこと?綿畑っていうのも綿のことでよさそうだね。どれも洋服の材料だ!」

「下線部が何を指しているのか、イメージができてきましたね。整理した「何を」「どうする」こと、に当てはめてみましょう。」

「「洋服を」「着る」こと!」

「そうですね。「洋服を着ること」で7文字なので解答するときの条件と合っています。ただ、この小説が書かれたのは明治時代ですので、着物も日常的でした。したがって、「衣服を着ること」とすると、もっとよいでしょう。」

 

「読み解く力」は、単なる「読解力」とは異なります!

  • 文章や図表、グラフ等から、解決に必要な情報を正確に取り出す力
  • 取り出した複数の情報を比較・関連付けて読み取る力
  • 読み取った内容と、自分の持っている知識・経験を照らし合わせて推論し、根拠を明確にして解決する力

学力の基礎となるこれらの能力を、「読み解く力」としています。

Q. 「読み解く力」はどうして大切なのですか?
 また、子供の「読み解く力」を伸ばすために、日ごろから家庭でもできることはありますか?
A. ある程度長さのある文章を読んで必要な情報を見付けたり、いろいろな条件が示されている中から、必要な情報を選んで活用したりする能力は、国語科の学習だけでなく、どのような教科でも、またこれから様々な情報に触れていく中でも必要となる、大切な基礎です。
学校の授業だけではなく、家庭での毎日の学習習慣を大切にすることで、「読み解く力」を伸ばしていくことができます。分からないことを家族一緒に調べたり、新聞やテレビのニュースで気になったことを話し合って、自然に伸ばしていきましょう。

 

4月からは高校生!基本的な学習習慣を身に付けよう!

東京の子供たちの生活習慣や学習環境等の調査により、子供たちの基本的な学習習慣の確立と学力の向上との間には、密接な関係があることが分かっています。毎日の生活の中で、基本的な学習習慣を身に付けましょう。

必要な情報を手に入れよう!

必要な情報を得るために本や新聞を読み、学習したことを活用しようとしている中学生の方が、活用しようとしない中学生よりも正答率が高いということが分かっています。

東京都では、新聞やテレビのニュースに関心を持っている中学生の割合は、全国平均よりも高い67.4%となっています。色々なことに関心を持ち、様々な方法で情報に触れる習慣を作りましょう。

情報収集のために本や新聞を読むことと平均正答率の関係
  国語
平均正答率
数学
平均正答率
している
たいていしている
76.4% 67.2%
しないことが多い
しない
70.8% 62.1%

分からないことは調べよう!

疑問に思ったことを自分で調べようとしたり、調べるに当たって方法や計画を考える中学生の方が、これらを行わない中学生よりも正答率が高いということが分かっています。

また、読書習慣がある中学生や、自分を根気強いほうだと思っている中学生は、そうでないと思っている中学生よりも高い正答率となっています。

分からないことをそのままにしないで、自分なりに考えたり調べたりすることを心掛けましょう。

疑問点を自分で解決しようとする意識と平均正答率の関係
  国語
平均正答率
数学
平均正答率
している
たいていしている
77.2% 69.5%
しないことが多い
しない
69.8% 59.7%

「平成21年度児童・生徒の学力向上を図るための調査報告書」(東京都教育委員会作成)から

 

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