○私費運用の考え方について

昭和四四年二月二二日

四四教学学発第八五号の一

都立高等学校長

PTA等から出されている経費の運用にあたつては、父母の教育費負担を少なくするためにも、できるだけその削減に努めなければならないことはいうまでもありません。

しかしながら、公費による予算措置が十分ではないこと、また、高等学校教育が義務教育ではないことなどの理由から、従来、学校教育費を父母の負担に依存することについて、必ずしも厳密な検討を行なうことなく、ややもすれば安易に過去の慣習に従う傾向がなかつたとはいえません。

もとより父母の念願は子女によりよい教育を受けさせることでありますし、一方、日進月歩の社会にあつて、教育水準をいつそう高めていくためには、学校教育費を増大していかなければならないわけでありますし、本教育委員会においてもその増額に努力を続けておりますが、都財政の実状、また、東京都における公立と私立高等学校との均衡などの理由から、これまた必ずしも十分ではないことはまことに遺憾に存じております。

今後の公費増額を目指して、現在、高等学校の「学校運営標準経費」算定作業を進めており、この結果に基づいて、昭和四五年度以降予算措置を講じたい所存であります。

したがつて、理想的には当然公費で措置すべきものも、現状では父母の負担に依存せざるを得ない場合が少なくありません。しかしながら、高等学校への進学率が、今や義務教育諸学校のそれに近づいてきた状況を考えますと、学校教育費を父母の負担に依存することは真に止むを得ない場合にのみ限るよう、改めて十分に検討を行う必要があります。学年末また学年始を迎えるにあたつて、特にこのことに留意し、今後の学校運営について特段の創意と工夫を加えられるよう希望いたします。

なお、従来PTA等から支出されている経費のうち、餞別金等―これには公費の措置は考えられません―について、最近世論のきびしい批判を受けていることは、周知のとおりであります。このことについて十分に検討を行ない、従来の態度を改めようとする学校及びPTA等がふえてきておりますが、一部には、まだなお旧来の観念からぬけきれないむきもあります。

この問題については、父母の負担を軽減するという点からはもちろん、また、公務員としての教職員と生徒の父母との関係においても正さなければならない筋道の問題として考え、転退職に際して父母から贈られる餞別金等は、教職員がこれを自発的に辞退すべきものであると考えます。

つきましては、貴職におかれましても、このような本委員会の趣旨を御理解くださいまして、所属職員に対し十分周知されるとともに、PTA等の協力を得て、その実効が期せられますよう特段のとりはからいをお願いいたします。

私費運用の考え方について

昭和44年2月22日 教学学発第85号の1

(昭和44年2月22日施行)

体系情報
都立学校教育部高等学校教育課
沿革情報
昭和44年2月22日 教学学発第85号の1