○義務教育における私費負担の解消について

昭和四二年三月一三日

四二教総庶発第一四八号

各区長

義務教育における学校運営費については、貴職の格別なご配慮により、毎年公費が増額されているところでありますが、なお、公費で負担すべき経費について、私費に依存している分野も見受けられ、こうした実情にあることは、教育の正常な姿でなく早急に改善すべきものと考えられます。

今般、都は、別添の「義務教育学校運営費標準」の設定を行い、その所要経費を都区財政調整を通じて措置することにしました。

したがつて、各区におかれても、昭和四二年度を期して、抜本的な私費負担解消の施策が推進されることと思います。

ついては、この標準を基本としつつ、それぞれの区の実態に即した私費負担の解消と教育水準の維持向上が図られるよう、特段のご配慮をお願いします。

なお、私費負担解消についての施策を徹底するためには、広く教育界と都民の理解と協力を得ることが必要であると考えますので、適切なご配慮をあわせてお願いいたします。

別添(略)

――――――――――

昭和四二年三月一三日

四二教総庶発第一四八号

各市町村長

義務教育にかかる公費負担の増額については、貴職の格段なご配慮により、年々公費が増額されているところでありますが、なお、私費に依存している分野が見受けられ、それが容易に解消しがたい事情にあることも事実であります。

今回、都としては、私費負担解消の施策を前進させるため、別添の「義務教育学校運営費標準」を設定しました。

ついては、これを参考とし、十分に活用され、各市町村と実態に即した私費負担の実質的軽減に、特段のご配慮をお願いいたします。

なお、この施策の徹底を図るため、都としては、児童・生徒一人当り三〇〇円を市町村振興交付金で措置することになりましたので、各市町村におかれましては、この措置が有効に生かされますよう、あわせてご配慮をお願いいたします。

別添(略)

○義務教育学校運営費標準の設定と公費で負担すべき経費の私費負担解消について

昭和四二年三月一三日

四二教総庶発第一四九号

各区教委教育長

私費負担の解消については、本都教育行政上の重点施策として、多年にわたり、その実現に努力してきましたが、今日においても、なお公費で負担すべき経費が私費に依存している実情であります。このまま推移するならば、父兄の公教育に対する信頼をそこない、義務教育の正常な発展をはかるうえからも大きな障害となるので、早急に解決しなければならないものと考えます。

このたび、都においては、学校運営に要する経費の公費、私費の負担区分を明確にしたうえ、学校運営費標準を作成し、所要財源を都区財政調整を通じて措置することとしました。

このことは、昭和四二年度を期して、学校運営における公費で負担すべき経費の私費負担を解消する基本的な措置であり、この標準を基本とし、区の実情に即し、必要な予算の確保をはかれるとともに、私費負担の解消が期せられるよう、下記事項に留意のうえ、格段の努力をお願いします。

一 義務教育学校運営費標準の取扱い等について

(一) この標準は、学校運営の過程について、特別区の一般的な学校の実態を基礎とし、標準学校の必要経費を算定し、作成したものである。したがつて都教育委員会としては、この標準によつても、都の水準としての教育が行えるものと考えるので、これを十分活用されたい。

(二) 区における学校運営費関係の予算計上等にあたつては、それぞれの区の実態に即して、この標準を基礎とした額を確保するよう努められたい。

なお、区独自の考えにより、教育の水準をたかめるために、この標準をこえて措置することは差しつかえない。

(三) 耐用年数のある備品等の経費については、この標準をもとにして、各学校における現有状況等を考慮して配分するなど、区内学校間の格差是正についても配慮されたい。

(四) 学校の運営は、この標準を参考にし、公費で措置された範囲内で、各学校の自主的な教育計画に基き、創意工夫をこらし、最大の効果を発揮するよう管下学校に対し強力に指導されたい。

(五) 今後の学校運営については、公費で負担すべき経費を私費に依存しないよう管下学校に対し強力に指導されたい。

二 問題点の取扱いについて

この施策を進めるにあたつて、種々の問題の解決を要するが、それについては、都教育委員会としては次のように考えるので、各区におかれてもこの趣旨を生かし、実情に即した指導を願いたい。

(一) 寄付受領の考え方とその取扱いについて

従来、父兄を主たる会員とするPTA、後援会、その他の団体から、学校後援のための寄付が行われてきた。こうした慣習は、おうおうにして、強制にわたる懸念もあり、一方このたびの措置により学校運営費が確保されることになるので、今後はこの種の寄付は受領しない。

(二) PTA会費その他徴収金の取扱いについて

PTA会費の徴収は、原則として教師が取扱わないのがよいと考えるので、学校とPTAとの緊密な関係も考慮し、その方法をPTAの自主的判断のもとで、より合理的に行われるよう工夫すること。

生徒会費、学級会費等の名目で、生徒会活動、学級会活動以外の種々の使途にあてる経費を含めて徴収していた例があるが、本来の生徒会活動、学級会活動はすべて公費で負担すべきものとし、その他の私費負担にかかる教材費等で一括購入の必要があれば、父兄の了解を得てその使途を明確にして徴収する。

(三) 諸行事の取扱いについて

入学式、卒業式及び周年記念式については、標準により公費をもつて措置することとしたが、学校における諸行事に伴う謝恩会、祝賀会は、教育の場であることを認識し、慎重に配慮すること。

(四) 私費雇用職員の取扱いについて

PTA等私費で雇用している職員を公務に従事させることは好ましくないので、今後は公務に従事させない。

三 父兄に対する協力の依頼

私費負担の解消は、ひとり行政諸機関の努力のみでは解決できない問題なので、父兄はもとより地域住民の理解と協力が得られるよう十分配慮されたい。

――――――――――

昭和四二年三月一三日

四二教総庶発第一四九号

各市町村教委教育長

学校運営にかかる公費負担の増額については、貴教育委員会におかれても日頃ご協力のことと思います。しかしながら、今日においても、なお、学校教育費のうち公費で負担すべきと思われる経費について私費に依存している分野があり、それが容易に解消しがたい問題であることも事実であります。

都においては、昭和四二年度を期して、学校教育の私費負担を解消するため、新たな方策として学校運営に要する経費の公費私費の負担区分を明確にしたうえ、学校運営費標準を作成しました。

この学校運営費標準は、学校運営の過程について、一般的な学校の実態を基礎として、標準学校の必要経費を算定し作成したものでありますが、市町村の実情からみても、十分利用にたえうるものと考えます。

また、市町村におけるこの施策を容易ならしめるため、昭和四二年度においては、特に私費負担の解消をはかるための助成(児童・生徒一人当り三〇〇円)が市町村振興交付金の中に措置されることとなりました。

ついては、各市町村教育委員会においても、この標準を参考とされ、さらに今回の助成措置の趣旨をいかし、教育費を確保するとともに、それぞれの実情に即した私費負担の解消を図られるよう特段のご配慮をお願いします。

なお、都教育委員会としては、私費負担の解消を期するため、各区教育委員会教育長及び区立小中学校長あて、別添のとおり通知しましたので、各市町村教育委員会においても、この趣旨を十分ご理解のうえ、指導上の参考としていただきたくあわせてお願いします。

――――――――――

昭和四二年三月一三日

四二教総庶発第一四九号

各区立小中学校長

学校運営費の私費負担解消については、都としても多年にわたり、公費の増額をはかる等その対策を進め、また貴職においてもこの趣旨を体し、教職員とともに努力されてきたところであるが、諸種の事情によりなお今日十分な実効をあげるまでにはいたつていない。

ついては、今後の学校運営にあたつては、学校教育費における公私費の負担区分を明確にし、公費で負担すべき経費については、私費に依存しないという基本的な考えで対処するため今回「義務教育学校運営費標準」を設定し、所要の財源措置を講じた。

学校としては、私費負担解消に対するそれぞれの区の具体的施策と、それに基く示達にしたがつて運営管理を行うべきである。貴職においても教職員に対し、この趣旨を十分に徹底するとともに運営費の一部を私費に依存している学校教育を正常化するため、その方策を学校をあげて検討のうえ、父兄の協力も得て私費負担解消の実効を期するよう努められたい。

なお、特に留意すべき事項をあげれば、下記のとおりである。

一 学校運営は、措置された公費をそれぞれの学校の実情に即して適正に配分し、その範囲内で創意工夫をこらし、計画的な執行により、最大の教育効果を発揮するよう努めること。

二 私費負担ときめられた範囲以外では、すべて公費で負担すべきものとなるので、この分野については、一切私費に依存しないこと。

三 義務教育学校運営費標準は、学校運営費を算定するための手段として作成したもので、各学校の自主的な運営を拘束するものではない。しかし、この標準は都における一般的学校運営の考え方をもとにしたものであるから、それぞれの学校運営の実態とにらみ合せて、十分活用すること。

四 PTAに対しては、別途この趣旨を徹底し、協力を依頼するが、学校とPTAとの関係、教師のPTAに対する役割等についても、十分に反省と検討を加えること。

○公費で負担すべき経費の私費負担解消について

昭和四二年三月一三日

四二教総庶発第一四九号

区立小中学校PTA会長

PTA会員の各位には、新教育制度発足以来、長い期間にわたつて公教育の充実発展のために多方面にわたるご尽力をいただいてまいりました。とくに義務教育学校の整備充実につきましては、物心両面にわたり、多大なご援助を賜わり、漸く現在の水準まで高めることができました。これもひとえに各位のお力添えによるものと心から感謝いたしております。

しかしながら、学校運営において、本来公費で負担すべき経費を私費に依存することは、教育の正常な姿でありませんので、都教育委員会は従来よりこの私費負担の解消に努めてまいりました。

このたび、この問題の抜本的解決を目ざし、義務教育学校運営費標準を設定し、それに見合う財政措置をすることによつて、昭和四二年度を期して、公費で負担すべき経費の私費負担を解消することにいたしました。

ついては、この趣旨の徹底をはかるため、関係各方面に対し、別添のとおり通知いたしました。

各位におかれましても、この施策の趣旨について十分ご理解のうえ、PTA役員だけでなく、広く一般会員にもご伝達いただき、私費負担解消の実効があがりますよう、格別のご協力をお願いいたします。

今後のPTA活動につきましては、その本来の活動を、父母と教師の相互理解のうえに立つて活発に進められ、社会教育団体としていつそうの進展をとげられますよう期待いたしております。

なお、これらのPTA活動の参考に供するため、資料「これからのPTA」を現在作成しており、近々各位にお届けする予定です。この資料の概要は別紙のとおりになつておりますので、あらかじめご理解のうえ新年度のPTA活動の参考に供していただきたいと存じます。

別紙(略)

義務教育における私費負担の解消について

昭和42年3月13日 教総庶発第148号

(昭和42年3月13日施行)

体系情報
地域教育支援部義務教育課
沿革情報
昭和42年3月13日 教総庶発第148号