○入試準備教育の是正について

昭和四〇年一一月一九日

四〇教指管発四五三号

区市町村教委教育長

各教育庁出張所長

各公立小・中学校長

学校教育がテスト中心に流れていると、社会全体が最近強く指摘するようになった。このことは、日本の教育の根本的病根をついたものであって、これが解決は一日もゆるがせにできない重大な問題である。

義務教育および高等学校教育は、国運の将来をになう青少年の教育として最も重大な段階である。この段階の教育において、正しい教育がゆがめられ、上級学校進学をめざす教育に過度の努力が傾けられているとすれば、まことに憂慮にたえないところである。教育の全体像を見失い、テストを目的とした教育が行なわれたり、知識の暗記のみに偏した教育が行なわれたりしているとすれば、教育の本末を転倒したものといわなければならない。

テスト重視の傾向が生まれたのは、父母の希望がそうさせたのであって、この父母の希望に添いたいという教師の気持ちはわからないではないが、父母はあまりに目前の利害だけを考えているのであって、教育者としては、教育本来の姿や将来の日本の姿を考えて、正しい教育理念のもとに教育を行なう信念をもたなくてはならない。

入学試験準備教育の重視を是正するのは、日本の社会全体の責任であって、父母や教師のみを責めることはできないが、教育者は一番先に立ち上がって、教育の正しい姿を実現する責務がある。

次にあげた項目については、その完全な表現は困難であるにしても、学校でできるところから具体案をたてて実行に移すよう努力し、日本の教育を正しい姿にもどす先べんを、教育者がつけなければならない。

一 入試を目的とする教育は行なわない。各領域の調和のとれた教育を行ない、とくに教科にあっては、その目標および内容をじゅうぶんに達成するよう一段の努力を払うこと。

二 学校外における模擬テスト等に参加することは自由であるとしても、それが入試準備教育を激化しないよう、児童生徒および父母に対し、徹底した指導を加えること。

三 学校内の各種テストについても、弊害を生むことのないよう留意し、正常な教育活動の反省と改善に資し、評価本来の主旨を生かすこと。

四 学習塾への参加、教師の宿題の出し方等についても、教育者の良心にもとづく適正な考慮と指導を加えること。

五 テスト教育を助長するような事業には、学校は援助を与えないこと。

入試準備教育の是正について

昭和40年11月19日 教指管発第453号

(昭和40年11月19日施行)

体系情報
指導部義務教育指導課
沿革情報
昭和40年11月19日 教指管発第453号