○学校における適正な進路指導について

昭和五一年六月一五日

五一教指管発一八一号

区市町村教育委員会教育長

多摩教育事務所長

教育庁出張所長

小笠原村長職務執行者

公立学校長

さきに、「入試準備教育の是正について」(昭和四〇年一一月一九日付四〇教指管発第四五三号)の通達において、テスト偏重の入試準備教育の是正のために教育関係者が率先して教育の正しい姿を実現するよう要望した。

また、「学校と家庭の教育上の協力について」(昭和四一年二月一一日付四一教指管発第五六号)の通達において、学校教育と家庭教育のそれぞれの在り方を明らかにし、学校と家庭の緊密な連携、協力により望ましい人間の育成に努めるべきことを強調した。

更に、都立高等学校の入学選抜体制を改めるに当たり、「高等学校入学選抜制度の改善と教育の正常化について」(昭和四一年七月一四日付四一教指管発第二七二号」の通達において、学校教育の正しい在り方を実現するために適切な教育課程の編成とその実施、日常の授業の充実、ひとりひとりを生かす指導の徹底を強く要請したところである。

教育委員会及び学校は、これらの通達の主旨を生かしてそれぞれの実情に即した具体的な実践への努力を積み重ね、教育本来の姿の実現に努めてきた。しかし、ここ数年来、進路指導上の問題点が指摘されるようになり、例えば、中学校では業者の作成によるテストを大半の学校が過度に実施し、教師、父母及び生徒それぞれが、進学希望校の選択に当たつてそのテストから得られる偏差値に依存する傾向が強まつてきた。また、家庭における子女の教育に対する考え方は、一般的に入試準備のための教育に偏する傾向があり、例えば、学習塾への通塾が目立つようになつた。

このような事態は、社会全体に根強く残つている学歴偏重の気風や上級学校への進学率の急激な上昇等を背景とし、児童・生徒及び父母の進学への強い希望とそれに応じたいという切実な教師の気持ちとがかかわりあつてのことであり、学校教育が次第にテスト中心に流され、進路指導において学校の主体性が失われるおそれさえあるという極めて深刻なものである。

この問題を解決するためには、教育委員会、学校及び家庭が正しい教育の理念に基づいて児童・生徒の将来を深く考え、それぞれの英知を集め、学校教育、家庭教育の一層の充実を図らなければならない。特に学校は、上級学校進学を目指した単なる知識の詰め込みやテストの結果のみにとらわれた教育に偏することなく、適正な教育課程の実施に努め、基礎的な知識、創造的な思考力、豊かな情操、主体的な態度等を身につけさせ、人間性豊かな児童・生徒の育成に努めなければならない。また、進路指導に当たつては、日常の教育活動を通して児童・生徒の特性の発見に努め、それぞれの能力・適性に即した指導を行わなければならない。

この際、学校は、下記の事項の徹底を期するよう努力されたい。

一 進路指導に必要な児童・生徒及び進路先に関する資料等については、学校が主体的にその創意を生かして作成し、適切な活用を図ること。

二 学校は、正しい進路指導の在り方について、父母の理解と協力を得るように努めること。

三 教育課程の管理、特に各教科等の授業時数を確保するために、入試準備にかかわる業者の作成によるテストは、平常の授業時間に実施しないようにすること。

四 進路選択の指導に当たつては、業者の作成によるテストの偏差値に頼ることなく、児童・生徒の能力・適性を考慮し、児童・生徒及び父母の希望を尊重して適切に行うこと。

五 学校は、テスト偏重の教育を助長するような事業には援助を与えてはならない。また、教職員の信用を失墜するような行為を厳に慎むこと。

参考

通達一「教育関係職員の服務の厳正について」(昭和四四年四月一五日付四四教人職収第一の三八〇七号一)

通達二「教職員の信用失墜行為の防止について」(昭和四四年五月一四日付四四教総監発第九号)

通達三「教育関係職員の服務の厳正について」(昭和四七年一二月九日付四七教人職発第一〇一号一)

学校における適正な進路指導について

昭和51年6月15日 教指管発第181号

(昭和51年6月15日施行)

体系情報
指導部義務教育指導課
沿革情報
昭和51年6月15日 教指管発第181号