○小学校・中学校における「自然教室」及び宿泊を伴う「移動教室」の実施について
昭和五九年三月三一日
五八教指企第二六九号
各区市町村教育委員会教育長
教育庁各出張所長
各都立盲・ろう・養護学校長
学校が実施する「自然教室」及び宿泊を伴う「移動教室」は、豊かな自然環境の中で、楽しく規律ある集団宿泊生活を通じて人間的な触れ合いを深めるとともに、自律的に生活する態度を育てるなどするものであつて、人間性豊かな児童・生徒を育成する上で極めて重要な教育活動であります。
各学校においては、これまでもこの趣旨を踏まえ「移動教室」等を実施してきたところでありますが、最近の東京都における児童・生徒の実態や地域性を考慮するとき、今後一層有意義な教育活動として充実を図ることが望まれています。
ついては、これまで「小学校・中学校における宿泊を伴う「移動教室」の実施について」(昭和四四年一〇月二八日付四四教指管発第三八八号)によつて移動教室を実施してきましたが、今後貴管下各学校に下記事項を周知されるとともに、各学校において「自然教室」及び宿泊を伴う「移動教室」を実施する場合には、一層適切な計画と運営が行われるよう、十分御配慮願います。
記
一 性格及びねらい
「自然教室」及び宿泊を伴う「移動教室」(以下「自然教室等」と称する)は、学校内における平素の学習効果を一層高めるとともに、通常の学校生活では得がたい体験を得させるため、学校の教育課程に位置付けて校外の適切な場所を教室として実施する教育活動である。したがつて、夏季休業日等に行われる行事とは性格を異にするものである。
「自然教室等」は次のようなねらいをもつものである。
(一) 「自然教室等」において、自然観察、地域社会の生活や文化に関する学習、自然を対象とした造形的学習などの望ましい学習経験を得させるとともに、自然に対する愛護の精神や畏敬の念を涵養する。
(二) 豊かな自然の中での各種の野外活動等を通じ、児童・生徒の健康増進を図り、心身の鍛練に努めるとともに、忍耐心や協調の精神を育成する。
(三) 規律ある集団宿泊生活を通じ、基本的生活習慣や健康で安全な生活を保持する態度を身に付けさせるとともに、自立心や公共心・公徳心を養う。
(四) 共同の生活体験を通じ、自己の役割と責任を遂行させることによつて、集団の成員としての自覚を高めるとともに、望ましい勤労観を培い、社会連帯意識や奉仕の精神を育成する。
(五) 教師と児童・生徒が寝食をともにすることにより、教師と児童・生徒、児童・生徒相互の人間関係を深め、学校生活の充実を図る。
二 計画作成並びに実施上の留意事項
各学校における「自然教室等の」の計画作成並びに実施に当たつては、次の事項に留意するものとする。
(一) 計画作成上の留意事項
ア 「自然教室等」を学校の年間指導計画に明確に位置付けること。特に、移動の時間を除いた現地での学習については、授業時数の算定に繰り入れるなど、十分配慮すること。
イ 「自然教室等」の計画作成に当たつては、目的地に適した具体的なねらいを設定すること。
また、児童・生徒一人一人の実態を十分把握し、心身の発達段階に応じた指導内容や指導方法について十分工夫すること。
ウ 実施の時期及び期間は、児童・生徒、地域の実態に応じ指導効果が十分期待できるよう適切に定めること。
エ 宿泊する施設及び環境は、教育上望ましい場所に設定すること。
(二) 実施上の留意事項
ア 「自然教室等」の趣旨・目的・内容及び日程等について、保護者に十分説明し、理解と協力を得るとともに、諸経費については保護者の負担が過重とならないよう留意すること。
イ 病気等の理由で参加できなくなつた児童・生徒についても、適切な指導を行うこと。
ウ 事前の健康診断、天候・季節などに対する配慮、現地及び移動中における児童・生徒の事故防止等に細心の注意を払うこと。
エ 適切な指導計画を作成し、当該区市町村教育委員会の示すところによる所定の手続きをとること。
オ 「自然教室」については、文部省の補助対象事業(自然教室推進事業)に該当するので、教育庁体育部保健課と十分協議の上連絡調整すること。