○学校プールの衛生管理、安全管理等について

昭和五五年五月二四日

五五教体保発第四二号

各区市町村教育委員会教育長

多摩教育事務所長

各教育庁出張所長

各都立学校長

一 プールの管理体制の強化

学校においては、全職員がプールの衛生管理及び安全管理並びに水泳指導時の保健管理について、共通理解とその意識を高める方途を講ずるとともに、組織的かつ具体的な管理方法を明確にして職員の役割を決めるなど、プールの管理体制の充実強化を図ること。

二 プール開設前の措置

学校においては、プール開設前までに次の事項について措置するとともに、プール再開届を保健所へ提出すること。

(一) 一般施設・設備の検査・点検及び整備

学校薬剤師の協力を得て、次の項目について環境衛生検査及び安全点検を行い、その結果必要があるときは、施設・設備の修繕、整理整とん、危険物の除去、危険箇所の明示など、環境衛生の維持・改善及び危険防止のための措置をとる。

ア プール本体の破損及び危険箇所の有無

特に排水口及び循環水取入れ口の金網、鉄格子等は容易に移動できないようにするとともに、これらが常に正常な位置にあることを確認すること。

イ プールサイド及び通路の破損及び危険箇所の有無

ウ 給水及び排水設備の機能

エ 循環浄化装置の浄化及び消毒機能

オ シャワー、腰洗槽、足洗場、洗眼設備、便所、更衣所、照明設備等の附帯設備の機能及び故障、破損箇所等の有無

カ プール周辺の衛生及び安全環境

(二) 清掃の実施

プールの清掃は、まず壁面等の汚れをブラシ等でよく落としてから洗浄し、次に有効塩素五~一〇mg/lの消毒薬で消毒する。

なお、下水道が完備していない地域の学校にあっては、清掃後の汚水の排水に当っては環境保全にも十分配慮すること。

(三) 給水申込みに関する手続き

プール水の給水に関し、水道局営業所又は市町村水道主管部課に連絡をとり、必要な手続きを行うとともに、注水及び換水上の注意を受けておく。

(四) 電気設備の保安点検

循環浄化装置及び照明設備は、保安業務委託機関又は、専門技術者等による保安点検を受けておく。

(五) 救助・救急用具の整備等

ア 救助・救急用具については、欠損の有無を点検し整備しておく。

イ 救急時の医療機関をあらかじめ選定しておく。

(六) 児童生徒の保健管理

水泳指導に当たっては、学校医その他の医師の指導助言を得て、水泳の適否並びに水泳時の指導及び管理の方針を明確にしておく。

そのため、定期の健康診断及び日常の健康観察の結果を生かして、臨時の健康診断、健康相談等を実施する。

三 プール開設中の衛生管理等

学校においては、プール開設中次の事項の衛生管理等を実施すること。

(一) プールの水質管理

ア プールの汚染防止

(ア) 排水口から汚水の逆流及びプール周辺から汚水の流入のないよう注意する。

(イ) プールに入る前に、足洗場、シャワー等によって十分に身体を洗浄した後、入場させること。

また、水泳者が用便その他の理由でプールサイドの外へ出てもどったときは、再び身体の洗浄を行わせる。

なお、腰洗槽を使用する場合にあっては、高濃度の塩素に対し過敏症などの傾向がある水泳者に対しては、使用させず、シャワーによる洗浄で代替させること。

(ウ) 腰洗槽を使用する場合の遊離残留塩素濃度は五〇mg/l以上一〇〇mg/l以下に保つよう塩素系消毒薬を適宜追加するとともに、随時水の入れ替えを行い、清浄を保つこと。又排水に当っては、環境保全にも十分配慮すること。

(エ) シャワー水に用いる洗浄水は、効果的な洗浄に供するため、原則として温水を使用する等、洗浄水の温度を適温とする措置をとること。

イ プール水の浄化

(ア) プール水は、原則として常にあふれさせ、浮遊物を除去する。

(イ) 循環浄化装置は、少なくとも水泳指導開始一時間前から終了時まで連続運転し、また、浄化設備のろ材の逆洗を随時行う。

(ウ) 循環浄化装置の操作方法について、水泳指導に当たる教員はもとより、衛生管理及び安全管理に当たる全職員に周知させるとともに、機械室等の見やすい場所に操作方法を掲示しておく。

(エ) オーバーフロー水を再利用する場合には、プール本体の循環水と同程度の水質となるよう十分な浄化、消毒を行うとともに、常に新規補給水と循環水の割合に注意すること。また、オーバーフロー水の循環系統は随時清掃し、常に清浄を保つこと。

(オ) 入換式プールは、原則として五日に一回プール水の全量を入れ換えて清掃する。

ウ プール水の消毒

(ア) プール水は常に消毒し、その残留塩素濃度は、別表に掲げる基準値とする。また、その濃度の維持方法について学校薬剤師の指導助言を得ておく。

(二) 保健管理

ア 健康観察

水泳指導を行う際は、事前に健康観察を行い、その結果、眼の充血、咽頭痛、発熱のある者及び、その他水泳が不適当と思われる者に対しては水泳をさせない。

イ その他

(ア) 水泳指導終了後は、洗眼及びうがいをさせるとともに耳の中の水を出すよう指導する。

(イ) バスタオル等は、児童生徒間の貸し借りをさせない。

(三) 環境衛生の検査及び点検

ア 環境衛生検査

学校においては、プール開設中定期に次の項目について実施し、その結果、必要があるときは、学校薬剤師の指導助言を得て環境衛生の維持、又は改善の措置をとる。

(ア) プール水の定期水質検査は、残留塩素濃度、水素イオン濃度、濁度、有機物等、大腸菌群及び一般細菌については毎月一回以上行うこと。

(イ) 定期水質検査の試料採水地点はプール内の対角線上の位置二箇所以上とする。

(ウ) 屋内プールにあっては空気中の二酸化炭素の含有率が〇・一五%以下であること。また、二箇月以内ごとに一回、定期に測定を行うこと。

(エ) 屋内プールまたは夜間使用する屋外プールは、プール及びプールサイドの照度が一〇〇ルクス以上であること。また二箇月以内ごとに一回、定期に測定を行うこと。

(オ) プール水質基準

プールの定期水質試験の項目及び水質基準は、別表のとおりとする。

(カ) 施設・設備の衛生状態

(キ) 循環浄化装置その他プール水の浄化、又は消毒設備の機能

(ク) その他、プールの衛生状態

イ 日常の環境衛生点検

日常の環境衛生点検は、プール指導の行われる日に次の項目について行い、その結果必要があるときは、速やかに環境衛生の維持、又は改善を図る。

(ア) プール水は衛生的であること。

(イ) 遊離残留塩素は、プール使用前及び使用中一時間に一回以上測定し、その濃度はどの部分でも〇・四mg/l以上一・〇mg/l以下に保持されていること。

(ウ) 透明度に常に留意し、プール水はプール底が明確に見える程度に保たれていること。また、水中には、危険物等異物がなく、安全であること。

(エ) プールの附属施設・設備(足洗い、シャワー、腰洗い、洗眼・洗面及びうがい等の施設・設備)及び浄化消毒設備等は、清潔に保たれており、破損や故障がなく適切に使用されていること。

(オ) 随時、腰洗槽を使用する場合の遊離残留塩素濃度を測定しておくこと。

四 プール開設中の安全管理等

学校においては、プール開設中次の事項の安全管理等を実施すること。

(一) 安全点検は、プール指導が行われる日に次の項目について行い、その結果、必要があるときは、速やかに適切な措置をとる。

ア 一般施設・設備

(ア) 児童生徒が通常使用する施設・設備

(イ) プール周辺の安全環境

イ 電気設備

水泳指導前に循環浄化装置、照明設備等の電気設備について、次の状態を点検する。

(ア) 電源ヒューズ、ブレーカー又はマグネットスイッチが切れていないか。

(イ) 循環浄化装置を始動すると、電源ヒューズ、ブレーカー、又はマグネットスイッチが切れないか。また、運転時の電流計の指示に異常がないか。

(ウ) 循環浄化装置のモーターに異常音又は振動音がないか。また、異常な温度上昇やこげた臭気がないか。

(エ) 循環浄化装置から火花、又は油もれがないか。

(オ) 照明設備の架線が構造物等と接触していたり、異常にたれ下がっていないか。

(カ) その他、電気設備に異常がないか。

(二) 塩素系消毒薬等の保管及び廃棄

ア 保管

(ア) 消毒に用いる塩素剤等の薬品を保管するための専用の設備を設けること。

(イ) 保管設備は、火気、熱、直射日光、湿気及び振動等の影響がなく、かつ施錠できる設備であること。

(ウ) 消毒薬は、開封又は開栓したまま放置しない。

(エ) 消毒薬は、他の薬品類、金属類、油類(石油系を含む。)木炭等と一緒に保管しない。

(オ) 化学構造の異なる消毒薬は、混合しないよう保管する。

イ 廃棄

(ア) 消毒薬等は、一般廃棄物と一緒に廃棄しない。

(イ) 消毒薬等を廃棄する場合には、学校薬剤師の指導助言のもとに行う。

(三) 安全監視、救助等

ア 安全監視

(ア) 水泳指導中は、監視に当たる職員を十分配置する。

(イ) 監視に当たる職員は、プールの全体が見える場所に位置し、特にプールの底、排水口及びその周辺に注意して監視する。

イ 救助

水泳指導中は、救助法、人工呼吸法等ができる職員を配置する。

(四) 安全指導

プール底にある錠剤の消毒薬に、顔を近づけたり触れたりしないよう指導する。

五 事故発生時の措置

(一) 学校の措置

ア 教育委員会への報告

事故が発生したときは、速やかにその概要を教育委員会へ報告し、必要な指示を受けること。

なお、都立学校が報告すべき事項及び、その報告先は、「事故発生報告等処理要綱別表(昭和四六年一〇月一一日東京都教育委員会教育長決定)」を参照のこと。

イ 感染症発生時の措置

プールに起因すると思われる感染症が発生したときは、学校医、学校薬剤師、保健所等の協力、又は指導助言を得て次の措置をとること。

(ア) プールを介してさらに感染のおそれのある場合は、プールを一時閉鎖する。

(イ) 児童生徒及び教職員の健康調査を行い、また、必要に応じて臨時の健康診断を行うなど、速やかに異常者の発見及び把握に努める。

(ウ) 感染症に罹患し、又は疑いのある児童生徒に対しては、出席停止の指示をする。

(エ) 感染症発生の原因を調査し、必要な改善の措置をとる。

ウ 負傷事故等の発生時の措置

プールの施設・設備若しくはその周辺環境、又は水泳指導に起因すると思われる負傷事故等が発生したときは、学校医、学校薬剤師、保健所等の協力、又は指導助言を得て次の措置をとること。

(ア) 事故の原因を調査し、施設・設備の整備改善、安全管理体制の強化、安全指導、又は保健管理の徹底、水泳指導方法の検討など、必要な改善措置をとる。

(イ) 事故の原因となった施設・設備の改善若しくは代替措置がとられるまでの間、又は安全管理体制等が整備改善されるまでの間、プールの使用を一時中止するなどの措置をとる。

(二) 区市町村教育委員会の措置

ア 教育庁主管課への報告及び保健所への届出

区市町村教育委員会は、学校から一のアの報告があったときは、「事故発生等事務処理要綱の制定について(昭和四六年一〇月一一日付四六教総庶発第三八八号の二)」の処理に準じて、速やかに事故の概要を教育庁主管課長に報告するとともに、保健所へも届出ること。

イ 事故の対策

区市町村教育委員会は、当該学校、保健所等の協力を得て事故の状況を把握するとともに原因を究明し、必要な改善対策を講ずること。

六 その他

(一) 他校プールを利用する水泳指導

他校のプールを利用して水泳指導を行う場合は、事前に当該プール保有校とプールの衛生管理、安全管理等の具体的方法について十分協議し、衛生管理、安全管理等の役割、責任の所在などを明確にしておくこと。

(二) 学校教育目的以外のプールの利用

学校プールを社会体育の目的で利用に供する場合は、次の事項について配慮すること。

ア 利用に供するプール

利用に供するプールは、施設・設備が十分整備されているものが望ましい。

イ 利用対象

プールの利用対象は、教育委員会、又はスポーツ少年団、PTA等の社会教育団体が主催し、体育指導員等責任のある指導者が参加する水泳教室、講習会、競技会等であることが望ましい。

ウ 利用の許可

学校プールを開放する場合は、都及び区のプール条例に基づく許可対象施設となるので、学校側は主催者に対して保健所の指導を受けるよう指示する。

エ 利用後の管理

(ア) 施設・設備及びその周辺の衛生状態及び安全環境について点検する。

(イ) プールの透明度及び残留塩素濃度を特に注意する。

(三) プール日誌の作成

学校は、プール開設期間中プール日誌を作成し、天候、気温、水温、使用時間、水泳者数、残留塩素濃度、循環浄化装置の運転状況、ろ材の逆洗状況、事故発生のあった場合はその概要、その他プールの維持管理状況等を記録しておくこと。

別表

プール水質基準

残留塩素濃度

遊離残留塩素〇・四mg/l以上一・〇mg以下であること。

水素イオン濃度

pH値五・八以上八・六以下であること。

濁度

三度以下であること。

有機物等

過マンガン酸カリウム消費量は一二mg/l以下であること。

大腸菌群

検出されてはならない

一般細菌

一ml中二〇〇コロニー以下であること。

学校プールの衛生管理、安全管理等について

昭和55年5月24日 教体保発第42号

(平成5年3月8日施行)

体系情報
都立学校教育部学校健康推進課
沿革情報
昭和55年5月24日 教体保発第42号
昭和63年2月26日 教体保発第378号
平成5年3月8日 教体保発第751号