○東京都情報公開条例の施行について

平成11年12月20日

11政都情第366号

各局長、青少年・治安対策本部長、病院経営本部長、中央卸売市場長}あて

東京都情報公開条例の施行について

東京都情報公開条例(平成11年東京都条例第5号)は、都が都政に関し都民に説明する責務を全うするようにし、都民の理解と批判の下に公正で透明な行政を推進し、都民による都政への参加を進めるため、平成12年1月1日から施行し、運用してきたところである。

このたび、東京都情報公開条例の一部を改正する条例を平成29年6月14日に公布し、同年7月1日に施行することとなった。この改正の趣旨は、情報公開を推進し、都政の透明性をより一層高めるため、都民の負担を軽減するとともに、都民生活において情報通信技術が普及している時勢を踏まえ、インターネット等を活用して都民の利便性の高い情報公開を進め、開示請求によらない積極的な情報公表や提供の取組を強化するものである。また、東京都情報公開条例(以下「条例」という。)は、開示請求のあった公文書の原則公開を基本的な考え方としており、この視点から条例全体を解釈し運用しなければならない。

これらを踏まえて、改めて条例の趣旨及び運用を次のとおり明らかにしたので、所属職員に周知徹底しその運営に万全を期されたい。

前文関係

第1 趣旨

1 この前文は、本条例制定の背景や理念を明らかにするものである。

2 前文では、地方分権が進展する中で、開かれた都政の実現と憲法の保障する地方自治の確立が求められていることを踏まえ、情報公開制度がそれらの要請に応えていくために不可欠な仕組みであること、また、都民の「知る権利」が情報公開の制度化に大きな役割を果たしてきたことに対する認識を明らかにし、都民が知ろうとする都の保有する情報が得られるよう、情報の公開を一層進めていかなければならないとしている。

3 本条例は、このような基本認識の下に制定されたものである。

第1条関係(目的)

第1 趣旨

1 本条は、この条例の目的を定めるものであって、情報公開制度が地方自治の本旨という憲法の理念を踏まえた制度であること及び都が都民に対しその諸活動を説明する責務を果たさなければならないことを明らかにしている。

2 「日本国憲法の保障する地方自治の本旨に即し」とは、都民に対する都の説明する責務は、憲法が定める地方自治の本旨に由来し、この説明する責務を全うするための情報公開制度は、地方自治の本旨という憲法の理念を踏まえた制度であることをいう。

3 「公文書の開示を請求する都民の権利」とは、都が保有する公文書の開示を求める都民の権利をいい、実施機関には、条例に定める要件を満たした開示請求に応じる条例上の義務がある。

4 「情報公開の総合的な推進」とは、公文書開示制度の充実とともに、情報公表施策及び情報提供施策を整備拡充することにより、都が保有する情報の公開を総合的に進めていく趣旨である。

5 「都政に関し都民に説明する責務を全うするようにし、都民の理解と批判の下に公正で透明な行政を推進し、都民による都政への参加を進めるのに資する」とは、条例の究極の目的を明らかにしたものである。

(1) 「都政に関し都民に説明する責務を全うする」とは、都民から都政を負託された都が、都政の諸活動の状況を具体的に明らかにし、都民に対し説明する責務を果たしていくとする趣旨である。

(2) 「都民の理解と批判の下に公正で透明な行政を推進し、都民による都政への参加を進めるのに資する」とは、都政に関する情報を広く公開することにより、都政に対する的確な認識と評価に基づく都民の意思形成が可能となり、公正で民主的な開かれた都政が実現し、都政への都民の参加が一層進むことを述べたものである。

第2 運用

1 公文書開示制度の意義

公文書開示制度は、都民からの請求に応じて、都に、その保有する公文書の開示を義務付けることに意義がある。したがって、都民の開示請求権に基づく制度であるという点において、一般的な情報提供施策とは異なる。公文書開示制度においては、開示をしない旨の決定は、開示請求に係る公文書に不開示情報が記録されている場合にしか行えず、さらに、行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づく審査請求や行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)に基づく処分の取消訴訟の提起といった法的な救済手段も保障されている。

2 情報公開の総合的な推進

公文書開示制度は、民主主義の発展に大きな影響を持つものであるが、制度上の限界もある。すなわち、都民が開示請求をしない限り開示されないこと、また、開示の対象は、公文書そのものであり、分かりやすく加工された情報でないところから、必ずしも都民にとって理解しやすいものではないこと、さらに、開示請求者にのみ提供されるということから、その広報的効果は期待できないことなどである。そこで、情報公開を総合的に推進することを条例上明記し、開示請求を待つことなく各種の情報を積極的に公表・提供することにより、都政に関する正確で分かりやすい情報を都民が迅速かつ容易に得られるようにすることとした。

第2条第1項関係(実施機関)

第1 趣旨

1 本項は、地方自治法(昭和22年法律第67号)及び地方公営企業法(昭和27年法律第292号)等により、独立して事務を管理し、執行する機関である知事、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会、内水面漁場管理委員会、固定資産評価審査委員会、交通局長、水道局長、下水道局長、警視総監及び消防総監並びに都が設立した地方独立行政法人をもって、公文書の開示等を実施する都の機関としたものである。

2 地方独立行政法人は、地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)の規定に基づき、公共性の見地から地域において確実に実施されることが必要な事務及び事業を実施するために、地方公共団体が別の法人格を与えて設立する団体であり、都政に関する情報と同様に、その事業に関する情報の公開を推進するため、本条例の実施機関としたものである。

第2条第2項関係(公文書)

第1 趣旨

1 本項は、公文書の概念を明らかにし、その範囲を定めたものである。

2 「実施機関の職員」とは、知事、行政委員会の委員、監査委員、公営企業管理者、警視総監、消防総監及び都が設立した地方独立行政法人の役員のほか、実施機関の職務上の指揮監督権限に服するすべての職員をいう。

3 「職務上作成し、又は取得した」とは、実施機関の職員が自己の職務の範囲内において事実上作成し、又は取得した場合をいい、文書等に関して自ら法律上の作成権限又は取得権限を有するか否かを問わない。職務には、地方自治法第180条の2又は第180条の7の規定により他の実施機関から委任を受け、又は他の実施機関の補助執行として処理している事務等を含む。

4 「電磁的記録」とは、電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録全般をいい、光ディスク、磁気ディスク、磁気テープなどの媒体に記録され、その内容の確認に再生用の機器を用いる必要がある情報である。

5 「当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」とは、当該公文書がその作成又は取得に関与した職員個人段階のものではなく、組織としての共用文書の実質を備えた状態、すなわち、当該実施機関の組織において業務上必要なものとして利用、保存されている状態のもの(組織共用文書)を意味する。したがって、職員が自己の執務の便宜のために保有する正式文書と重複する当該文書の写しや職員の個人的な検討段階にとどまる資料等は、これに当たらないこととなる。

6 ただし書は、開示請求の対象となる公文書から除かれるもの、つまり、条例の適用を除外する公文書について定めたものである。

(1) 第1号は、「不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの」を開示請求の対象外とすることを定めたものである。これらは、一般にその内容を容易に知ることができるものであることから、本制度の対象外とした。

(2) 第2号は、特定歴史公文書等を開示請求の対象外とすることを定めたものである。東京都公文書等の管理に関する条例(平成29年東京都条例第39号)第2条第4項に規定する特定歴史公文書等については、公文書の開示の規定は適用されない。

(3) 第3号は、一般の行政事務処理上の必要性からではなく、歴史や文化、学術研究といった観点から、その資料的価値に着目して保有されているものを開示請求の対象外とすることを定めたものである。東京都情報公開条例施行規則で定める都の機関等において、歴史的若しくは文化的な資料又は学術研究用の資料として特別の管理がされているものは、条例の適用除外となる。

第2 運用

1 組織共用文書の範囲

(1) 作成した文書

職務上の内部検討に付された時点以降のものであって、当該組織において利用可能な状態で保存されているものをいう。具体的には、次のア及びイの両方の要件を満たすものが組織共用文書に該当する。

ア 職務上の内部検討に付された時点以降のもの

(ア) 「職務上の内部検討」とは、課長等一定の権限を有する者(以下「課長等」という。)を含めて行われる内部検討をいう。

(イ) 「一定の権限を有する者」とは、東京都事案決定規程等に規定する事案の決定権を有する者をいい、当該事案を担任する担当課長等が置かれている場合は、これを含むものとする。

(ウ) 課長等が不在の際、東京都事案決定規程等に規定する事案の決定又は審議の臨時代行者が検討に加わった場合は、職務上の内部検討に付されたものとみなす。

(エ) 課長等を含む内部検討に付されていないものであっても、台帳類・帳簿類及び簡易又は定型的な文書等であって当該組織において利用するために作成されたものは、職務上の内部検討に付されたものとみなす。

(オ) 起案文書については、事案の決定権者の指示により作成されるものであるため、起案者により作成された時点で職務上の内部検討に付されたものとみなす。

(カ) 「職務上の内部検討に付された時点以降」とは、組織として説明する責務を果たす観点から、作成した文書が職員の個人的検討の段階を離れ、一定の権限を有する者の関与を経て組織的に用いる文書としての実質を備えることとなった時点以降という趣旨である。

イ 組織において利用可能な状態で保存されているもの

(ア) 実施機関の定める文書管理規則等の規定に基づき、登録等が行われ、保存されているものをいう。ただし、登録等が行われていない場合であっても、共用のファイリングキャビネットや書庫等に保存されているものは、「組織において利用可能な状態で保存されているもの」に該当する。

(イ) 「保存されているもの」には、回付中の文書又は内部検討の途上にある文書を含むものとする。

ウ 具体例

(ア) 事案決定等の手続が終了した文書

(イ) 事案決定等の手続の途中の文書

(ウ) 課長等を含む内部検討に付された段階の素案等

(エ) 庁内の組織間での事務説明用に提出された資料

(オ) 部長会、部内課長会その他課以上の組織をまたがる会議、打合せ等に提出された資料

(カ) 局をまたがる関係部課長会等に提出された資料

(キ) 庁議等に提出された資料

(ク) 審議会、懇談会等の資料

(ケ) 説明会、対外的打合せ等の資料

(コ) 事務マニュアル、業務日程表等組織的に利用する文書

(2) 取得した文書

受領した時点以降のものであって、組織において利用可能な状態で保存されているものをいう。具体的には、次のア及びイの両方の要件を満たすものが組織共用文書に該当する。

ア 受領した時点以降のもの

受領した時点以降のものであれば、必ずしも収受印が押されている必要はない。したがって、会議等で配布された文書は、配布された時点で受領したことになる。

イ 組織において利用可能な状態で保存されているもの

上記(1)イに同じ。

ウ 具体例

(ア) 供覧の手続が終了した文書

(イ) 供覧の手続の途中の文書

(ウ) 会議等で受領した資料

(エ) 申請書、届出書、報告書等(実施機関へ提出された時点で対象となる。)

(オ) 委託契約等の成果物

(3) 電磁的記録の取扱い

電磁的記録についても、上記(1)及び(2)と同様の考え方とする。

ア 業務用システムのデータ等

汎用コンピュータ、オフィスコンピュータ、サーバー等により処理されている業務用システム(当該事務処理のために特別に作成されたプログラムを用いてパソコン等により処理を行っているものを含む。)のデータ等については、実施機関が組織的に利用・管理するものと認められるので、原則として組織共用文書に該当する。

イ 光ディスク等に記録された文書等

パーソナルコンピュータで作成された文書等で、光ディスクやハードディスク等(以下「光ディスク等」という。)に記録されたものについては、上記(1)又は(2)の要件に該当する場合は組織共用文書となる。

なお、起案文書や資料等を作成するため、職員が事務処理の過程で補助的、手段的に作成した文書であって光ディスク等に記録されているものについても、組織において利用可能な状態で保存されている場合は、組織共用文書に該当する。

ウ 具体例

(ア) 統計処理等数的処理のために利用しているデータ

(イ) 台帳、事例集等のデータベース

第2条の2関係(適用除外)

第1 趣旨

1 本条は行政機関の保有する情報の公開に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第43号)が平成13年4月1日に施行されることに伴い、法律で行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号。以下「情報公開法」という。)の規定が適用されないとされた文書について、条例の適用除外とする趣旨である。

2 登記簿、特許原簿、訴訟に関する書類等本条の対象となる文書は、それぞれの法令で閲覧等の手続が自己完結的に規定されていることから、国において情報公開法の適用除外とされたものであり、条例においても適用除外とすることとした。

第2 運用

1 都が保有する文書のうち、本条に該当するものとして次のようなものがある。

(1) 漁業法(昭和24年法律第267号)第50条第3項に規定する「免許漁業原簿」

(2) 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第53条の2に規定する「訴訟に関する書類及び押収物」

2 「訴訟に関する書類及び押収物」については、刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成・取得されたものをいう。

第3条関係(この条例の解釈及び運用)

第1 趣旨

1 本条は、前文及び第1条の規定とともに、条例全体の解釈及び運用の基本を定めたものである。

2 「この条例の解釈及び運用に当たっては、公文書の開示を請求する都民の権利を十分に尊重するものとする。」とは、実施機関は、条例に定める要件を満たした開示請求に係る公文書については、不開示情報が記録されている場合を除き開示しなければならないという原則公開の観点から、本条例全体を解釈し、運用しなければならないとする趣旨である。

3 「個人に関する情報がみだりに公にされることのない」とは、思想、心身の状況、病歴、学歴、職歴、成績、親族関係、所得、財産の状況その他個人に関する一切の情報は、公開を原則とする情報公開制度の下においても、最大限に保護されるべきであり、正当な理由なく公にされてはならないことを明らかにしたものである。

第2 運用

1 個人のプライバシーに関する情報が記録されている公文書については、第2章に規定する公文書の開示をする場合はもとより、第3章に規定する情報公開の総合的な推進を図る場合においても、本条の趣旨を踏まえて、最大限の配慮をするものとする。

第4条関係(適正な請求及び使用)

第1 趣旨

1 本条は、公文書の開示を請求しようとするものの責務を定めたものである。

2 公文書の開示を請求しようとするものは、公正で透明な行政の推進と都民参加の促進というこの条例の目的を踏まえ、公文書開示制度の適正な利用に努めなければならない。

第2 運用

1 適正請求及び適正使用の要請

(1) 実施機関は、不適正な請求をしようとするものがある場合は、そのものに対して、適正な請求をするよう要請するものとする。

(2) 実施機関は、公文書の開示によって、その情報が不適正に使用され、又は使用されるおそれがあると認められる場合には、当該使用者にその中止を要請するものとする。

(3) 著しく不適正な請求及び使用については、権利濫用の一般法理により対処する。

第5条関係(公文書の開示を請求できるもの)

第1 趣旨

1 本条は、何人も公文書の開示を請求できることを定めたものである。

2 「何人も」とは、自然人に限るものではなく、法人を含み、法人でない団体であっても争訟の当事者となり得るもの(行政不服審査法第10条又は民事訴訟法第29条に規定する「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めのあるもの」)は含まれる。また、日本国民のほか、外国人も含まれる。

第2 運用

1 実施機関は、明示された理由が公序良俗に反するようなものである場合は、開示請求者に対し、補正を求めることとする。

第6条関係(公文書の開示の請求方法)

第1 趣旨

1 第1項は、公文書の開示についての請求方法を定めたものであり、開示請求は、本項各号に定める事項を明らかにして行わなければならないとする趣旨である。

2 同項第2号の「開示請求に係る公文書を特定するために必要な事項」には、開示請求者が公文書の件名を明記することができない場合は、開示請求を受けた実施機関が合理的な努力をすることにより公文書を特定することができる程度の記載がされていることが必要である。

3 第2項は、開示請求に形式上の不備がある場合の補正手続について定めたものである。

(1) 「開示請求に形式上の不備があると認めるとき」とは、記載事項に漏れがある場合や、「開示請求に係る公文書を特定するために必要な事項」の記載に不備があり開示請求に係る公文書を特定することができない場合等をいう。

(2) 「相当の期間」とは、開示請求者が補正をするのに足りる合理的な期間をいう。

(3) 「補正の参考となる情報」とは、文書検索目録その他開示請求者が公文書を特定するために必要な情報をいう。

第2 運用

開示請求者は、一般的に行政実務に通じていないことから、「開示請求に係る公文書を特定するために必要な事項」を的確に記載することは困難な場合が多い。したがって、実施機関は、文書検索目録を案内したり、開示請求者と連絡を取り合うなどして、公文書を特定するために必要な情報を積極的に提供する必要がある。

第7条関係(公文書の開示義務)

第1 趣旨

1 本条は、実施機関は、開示請求があったときは、開示請求に係る公文書に本条各号のいずれかに該当する情報が記録されている場合を除き、当該公文書を開示しなければならないという原則公開の基本的考え方を定めたものである。実施機関は開示請求する都民の権利を十分に尊重し、不開示とする情報を最小限にするよう、本条各号の適用に当たっては、厳格な判断を行わなければならない。

2 開示請求に係る公文書に不開示情報が記録されている場合の実施機関の義務については特に定めていないが、不開示情報は、開示することの利益と開示することにより損なわれてはならない個人又は法人等の正当な利益や行政事務の適正な遂行等の利益との調整を図るものであるから、第9条の規定の反対解釈として、実施機関は、「公益上特に必要があると認めるとき」以外は開示してはならないこととなる。

第2 運用

1 本条と守秘義務との関係

(1) 本条は、不開示情報の範囲を定めているのに対して、地方公務員法(昭和25年法律第261号)第34条の守秘義務は、公務員の職務上知り得た秘密を守るべき職員の服務規律を定めたものであり、両者は趣旨及び目的を異にしている。地方公務員法等行政機関の職員に守秘義務を課している規定における秘密とは、非公知の事実であって、実質的にもそれを秘密として保護するに値するものと認められるもの(実質秘)をいうが、実質秘の範囲は具体的に定められているとはいい難い。したがって、本条と守秘義務とはその対象となる情報について重なる場合が多いが、当然にすべてが一致するものではない。

(2) 本条各号に該当する情報が守秘義務の対象となるかどうかは、個別具体的な事案ごとに判断するものであり、条例に基づき適法に開示をしている限りにおいては守秘義務違反とはならないものと考えられる。

2 本条と法令との関係

地方自治法第100条、民事訴訟法(平成8年法律第109号)第220条、弁護士法(昭和24年法律第205号)第23条の2の規定等のように、法令の規定により、実施機関に対して、公文書の提出又は閲覧等を要求されることがある。この場合における当該法令の規定と本条各号との関係についても、両者はその趣旨及び目的を異にするものであり、本条各号に該当するかどうかをもって、当該要求の諾否の理由とすることはできない。法令の規定に基づく提出又は閲覧等の要求に対しては、要求の根拠となった法令の趣旨、要求の目的、対象文書の内容等を総合的に判断して個別具体的に諾否を決定することとなる。

第7条第1号関係(法令秘情報)

第1 趣旨

1 本号は、法令及び条例の定めるところ又は実施機関が法律若しくはこれに基づく政令により従う義務を有する国の行政機関の指示等により、公にすることができないと認められる情報が記録されている公文書は、不開示とすることを定めたものである。

2 「法令」とは、法律及び政令、府令、省令、その他国の機関が定めた命令をいう。

3 「実施機関が法律若しくはこれに基づく政令により従う義務を有する国の行政機関の指示等」とは、国の行政機関からの指示等であって、法律又はこれに基づく政令に根拠を有し、実施機関を法的に拘束するものをいう。

4 「国の行政機関」については、次のようなものがある。

(1) 内閣府設置法(平成11年法律第89号)第4条第3項に規定する事務をつかさどる機関である内閣府、宮内庁、同法第49条第1項に規定する機関、同法同条第2項に規定する機関、デジタル庁設置法(令和3年法律第36号)第4条第2項に規定する事務をつかさどる機関であるデジタル庁

内閣の所掌事務をつかさどる機関として置かれる内閣府、宮内庁並びにその外局として置かれる委員会及び庁等

(2) 国家行政組織法(昭和23年法律第120号)第3条第2項に規定する機関

内閣の統括の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる省並びにその外局として置かれる委員会及び庁

(3) 法律の規定に基づき内閣の所轄の下に置かれる機関

国家公務員法(昭和22年法律第120号)第3条に規定する人事院

(4) これらに置かれる機関

府、省、委員会、庁又は人事院にこれらの所掌事務を遂行するため又は分掌するために置かれる機関若しくは部局等

5 「公にすることができないと認められる」とは、法令等の規定が公にすることを明らかに禁止している場合はもとより、法令等の趣旨及び目的から当然に公にすることができないと認められる場合等をいう。

第7条第2号関係(個人情報)

第1 趣旨

1 本号は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の立場から、個人のプライバシーを最大限に保護するため、特定の個人を識別することができるような情報が記録されている公文書は不開示とすることを定めたものである。

2 プライバシーの具体的内容は、法的にも社会通念上も必ずしも明確ではないため、本号では、個人のプライバシーに関する情報であると明らかに判別できる場合はもとより、個人のプライバシーに関する情報であると推認できる場合も含めて、個人に関する一切の情報は原則として不開示とした。その一方で、個人の利益保護の観点から不開示とする必要のないものや公益上公にする必要性の認められるものについて、本号ただし書により例外的に不開示情報から除くこととした。

3 「個人に関する情報」とは、個人の人格や私生活に関する情報に限らず、個人の知的創作物に関する情報、組織体の構成員としての個人の活動に関する情報、その他個人との関連性を有するすべての情報を意味する。具体的には、思想、心身の状況、病歴、学歴、職歴、成績、親族関係、所得、財産の状況その他一切の個人に関する情報をいう。

4 個人に関する情報であっても、特定個人情報(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成25年法律第27号。以下「番号利用法」という。)第2条第8項に規定する特定個人情報をいう。)及び個人番号(番号利用法第2条第5項に規定する個人番号をいう。)のうち死亡した者に係るものについては、本条第8号及び第9号で判断することとし、本号の個人情報の範囲から除外した。

5 「事業を営む個人の当該事業に関する情報」とは、本条第3号本文に規定する事業を営む個人の当該事業に関する情報と同義であるため、同号で判断することとし、本号の個人情報の範囲から除外した。ただし、事業を営む個人に関する情報であっても、その事業とは直接関係がない個人情報は、本号により、開示又は不開示の判断を行う。

6 「特定の個人を識別することができる」とは、氏名、住所、生年月日その他の記述等により特定の個人であると明らかに識別することができ、又は識別される可能性がある場合をいう。

7 「他の情報と照合することにより、特定の個人を識別することができることとなるもの」とは、その情報自体からは特定の個人を識別することはできないが、当該情報と他の情報とを照合することにより、特定の個人を識別することができることとなる情報をいう。

なお、個人識別性の判断に当たっては、一定の集団に属する者に関する情報を公にすると、その情報自体からは特定の個人を識別することができない場合であっても、情報の性質や内容によっては、当該集団に属する個々の者に不利益を及ぼすおそれがあり得ることを考慮する必要がある。

8 「特定の個人を識別することはできないが、公にすることにより、なお個人の権利利益を害するおそれがあるもの」とは、カルテ、反省文など個人の人格と密接に関わる情報や未公表の著作物等で、個人識別性のある部分を除いたとしても、公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあるものをいう。

9 ただし書のイは、法令等の規定により又は慣行として公にされている情報又は公にすることが予定されている情報を、不開示とする個人情報から除外することを定めたものである。

(1) 「法令等の規定により又は慣行として公にされている情報」とは、法令等の規定や慣行により、現に何人も容易に入手することができる状態におかれている情報をいう。

(2) 「公にすることが予定されている情報」とは、開示請求時点においては公にされていないが、将来、公にすることが予定されている情報をいう。

10 ただし書のロは、プライバシーを中心とする個人の正当な権利利益は十分に保護されるべきであるが、公にすることにより保護される利益がそれに優越する場合に、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることがより必要であると認められる情報については、開示することを定めたものである。

11 ただし書のハは、公務員等の職務の遂行に係る情報のうち、公務員等の職及び職務遂行の内容に係る部分を、不開示とする個人情報から除外することを定めたものである。

(1) 「公務員等の職務の遂行に係る情報」とは、公務員が行政機関若しくはその補助機関として、独立行政法人等の役員及び職員が独立行政法人等として、又は地方独立行政法人の役員及び職員が地方独立行政法人として、その担任する職務を遂行する場合におけるその情報をいう。

(2) 公務員等の勤務態度、勤務成績、処分歴等職員としての身分取扱いに係る情報などは、「職務の遂行に係る情報」には当たらない。

(3) 公務員等の職務の遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、「法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」の規定により開示又は不開示の判断を行う。

(4) 職務遂行に係る情報であっても、それが他の不開示情報に該当する場合には、その職及び職務遂行の内容に係る部分を含めて全体が不開示とされることとなる。

第2 運用

1 個人情報が記録された公文書の一般的な取扱い

個人に関する情報は、一度開示されると当該個人に対して回復し難い損害を与えることがある。個人のプライバシーに関する情報は、個人の尊厳及び基本的人権の尊重の観点から最大限に尊重するものとする。

2 死者の個人情報の取扱い

「個人」には、死亡した個人も含まれる。

3 個人情報に対する本人開示の取扱い

本号は、個人に関する一切の情報は不開示を原則とする趣旨である。したがって、開示請求者が、自己に関する情報について開示請求をした場合であっても、第三者からの開示請求の場合と同様に取り扱う。

個人情報に係る本人からの開示請求については、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号。以下「個人情報保護法」という。)及び個人情報の保護に関する法律施行条例(令和4年東京都条例第130号。以下「個人情報保護法施行条例」という。)の定めるところによることとなる。

4 会議費に関する文書及び知事交際費に関する文書の取扱いについて

それぞれ、別途定められている会議費や知事交際費に関する公文書の開示基準によるものとする。

第7条第3号関係(事業活動情報)

第1 趣旨

1 本号は、公にすることにより、法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められる情報が記録されている公文書を不開示とすることを定めたものである。

2 本号本文は、法人等又は事業を営む個人が有する正当な権利利益は、原則として、当該法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報を公にすることにより、害されるべきではないという趣旨である。

本号ただし書は、法人等又は事業を営む個人の事業活動により、現に発生しているか、又は将来発生するおそれがある危害等から人の生命、健康等を保護するために公にすることが必要であると認められる情報が記録された公文書は、本号本文に該当する場合であっても、開示しなければならないという趣旨である。

3 「事業を営む個人」とは、地方税法(昭和25年法律第226号)第72条の2第8項から第10項までに掲げる事業を営む個人のほか、農業、林業等を営む個人をいう。

「当該事業に関する情報」とは、営利を目的とすると否とを問わず、事業活動に関する一切の情報をいう。

4 「競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるもの」とは、次のような情報をいう。

(1) 法人等又は事業を営む個人の保有する生産技術上又は販売上の情報であって、公にすることにより、当該法人等又は事業を営む個人の事業活動が損なわれると認められるもの

(2) 経営方針又は経理、人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する事項に関する情報であって、公にすることにより、法人等又は事業を営む個人の事業運営が損なわれると認められるもの

(3) その他公にすることにより、法人等又は事業を営む個人の名誉、社会的評価、社会的活動の自由等が損なわれると認められる情報

5 「地位が損なわれると認められる」とは、公にすることにより、法人等の事業活動に何らかの不利益が生じるおそれがあるというだけでは足りず、法人等の競争上等の地位が具体的に侵害されると認められる場合を意味するものである。そして、公にすることにより、当該法人等の競争上等の地位が具体的に侵害されると認められるかどうかは、当該情報の内容、性質を始めとして、当該法人等の事業内容、当該法人等と行政との関係、その活動に対する憲法上の権利の保護の必要性等を考慮して総合的に判断するものである。

6 ただし書のイは、法人等又は事業を営む個人の事業活動により、人の生命若しくは健康に危害を加え、又は与えるおそれがある場合には、当該事業活動が違法又は不当であるか否かを問わず、人の生命等を保護するために公にすることが必要であると認められる情報が記録されている公文書は、開示しなければならないとする趣旨である。

事故や災害等による危害の発生を未然に防止し、現に発生している当該危害を排除し、若しくは当該危害の拡大を防止し、又は当該危害の再発を防止するために必要な場合は、本号本文に該当する情報であっても開示しなければならない。

7 ただし書のロは、法人等又は事業を営む個人の違法又は不当な事業活動により、人の生活に支障が生じ、又は生ずるおそれがある場合は、人の生活を保護するために公にすることが必要であると認められる情報が記録されている公文書は、開示しなければならないとする趣旨である。

人の生活に対する支障を未然に防止し、現に発生している当該支障を排除し、若しくは当該支障の拡大を防止し、又は当該支障の再発を防止するために必要な場合は、本号本文に該当する情報であっても開示しなければならない。

8 「違法若しくは不当な事業活動」とは、法令等の規定に違反した明らかに違法な事業活動又は法令等の規定に違反していると断定することはできないが社会通念に照らして著しく妥当性を欠く事業活動をいう。

9 ただし書のハは、法人等又は事業を営む個人の事業活動により、消費生活その他都民の生活を侵害し、又は侵害するおそれがある情報が記録されている公文書は、消費生活その他都民の生活を保護するために開示しなければならないとする趣旨である。

消費生活その他都民の生活に対する侵害の発生を未然に防止し、現に発生している当該侵害を排除し、若しくは当該侵害の拡大を防止し、又は当該侵害の再発を防止するために必要な場合は、本号本文に該当する情報であっても開示しなければならない。この場合、法人等又は事業を営む個人の事業活動が違法又は不当であるか否かを問わない。

第2 運用

1 事業活動情報に対する当該法人等からの開示請求の取扱い

本号は、法人等又は事業を営む個人の競争上等の地位が損なわれると認められる情報が記録されている公文書を一律不開示とする趣旨である。したがって、開示請求者(この場合、法人等又は事業を営む個人)が、自己に関する情報について開示請求をした場合であっても、第三者からの開示請求の場合と同様に取り扱う。

第7条第4号関係(犯罪の予防・捜査等情報)

第1 趣旨

1 本号は、公にすることにより、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報が記録されている公文書を不開示とすることを定めたものである。

2 「公共の安全と秩序の維持」とは、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、公訴の維持及び刑の執行に代表される刑事法の執行を主なものとする。

3 本号は、公にすることにより、犯罪の予防及び捜査活動等に支障を及ぼすおそれがある情報や、人の生命、身体、財産等への不法な侵害を招くおそれがあるなど、犯罪を誘発し、又は犯罪の実行を容易にするおそれがある情報を不開示とするものである。

4 本号に該当する情報とは、例えば次のような情報をいう。

(1) 公にすることにより、犯罪の予防及び捜査等の手法、技術、体制等が明らかにされ、その結果これらの活動が阻害され、若しくは適正に行われなくなり、又はその可能性がある情報

(2) 公にすることにより、犯罪の被疑者、被害者、参考人、通報者等が特定され、その結果これらの人々の生命若しくは身体に危害が加えられ、又はその地位若しくは正常な生活が脅かされることになるおそれがある情報

(3) 公にすることにより、特定の個人の行動予定、家屋の構造等が明らかにされ、その結果これらの人々が犯罪の被害者となるおそれがある情報

第7条第5号関係(審議、検討又は協議に関する情報)

第1 趣旨

1 本号は、都の機関並びに国、独立行政法人等、他の地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間における審議、検討又は協議に関する情報の不開示情報としての要件を定めるものである。

2 本号は、行政(独立行政法人等を含む。以下同じ。)における内部的な審議、検討又は協議が円滑に行われ、適正な意思決定が損なわれないようにする観点から定めたものである。行政における意思決定は、審議、検討又は協議を積み重ねた上でなされており、その間の行政における内部情報の中には、公にすることにより、外部からの干渉、圧力等により行政の内部の自由かつ率直な意見の交換が妨げられ意思決定の中立性が損なわれるおそれがあるもの、未成熟な情報が確定した情報と誤解され都民の間に混乱を生じさせるおそれがあるもの、又は特定の者に不当に利益を与え若しくは不利益を及ぼすおそれがあるものがあり、これらの情報については、不開示とすることとしたものである。

3 「都の機関」には、都議会も含まれる。

4 「都の機関並びに国、独立行政法人等、他の地方公共団体及び地方独立行政法人の内部又は相互間」とは、

(1) 都の機関の内部

(2) 国、独立行政法人等、他の地方公共団体又は地方独立行政法人の内部

(3) 都の機関の相互間(知事部局と行政委員会の相互間等)

(4) 都の機関と国、独立行政法人等、他の地方公共団体又は地方独立行政法人の相互間

(5) 国、独立行政法人等、他の地方公共団体又は地方独立行政法人の相互間をいう。

5 「不当に」とは、審議、検討又は協議に関する情報の性質に照らし、検討段階の情報を公にすることによる利益と支障とを比較衡量し、公にすることの公益性を考慮してもなお、その支障が看過しえない程度のものである場合をいう。

第2 運用

1 合議制機関等に関する情報の取扱い

合議制機関等の審議等に関する情報について、本号により開示又は不開示の判断をする場合は、当該合議制機関等の性質や審議事項の内容に照らし、個別具体的に、率直な意見の交換等を「不当に」損なうおそれの有無を判断する。

第7条第6号関係(行政運営情報)

第1 趣旨

1 本号は、公にすることにより、都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある情報が記録された公文書を不開示とすることを定めたものである。

2 本号のイからへまでは、都の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人の行う事務又は事業の内容及び性質に着目した上でグループ分けし、各グループごとに、公にすることにより生ずる典型的な支障を示したものである。

3 当該事務又は事業における公にすることによる支障は、イからへまでに限定されるものではない。したがって、公にすることにより支障が生ずる場合には、「当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」がある限り不開示とされる。

4 「当該事務又は事業の性質上」とは、当該事務又は事業の性質に照らして保護する必要がある場合のみ不開示とすることができることとする趣旨である。また、「当該事務又は事業」には、同種の事務又は事業が反復される場合の将来の事務又は事業も含まれる。

5 「事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの」とは、事務又は事業に関する情報を公にすることによる利益と支障とを比較衡量した結果、公にすることの公益性を考慮してもなお、当該事務又は事業の適正な遂行に及ぼす支障が看過しえない程度のものをいう。この場合、「支障を及ぼすおそれ」は、単なる抽象的な可能性では足りず、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を生じることについて、法的保護に値する蓋然性が認められなければならない。

第7条第7号関係(任意提供情報)

第1 趣旨

1 本号は、第三者が、実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供した情報その他公にされないと第三者が信頼して提供した情報(任意提供情報)を不開示とする場合の要件を定めたものである。

2 不開示を前提とした情報の任意提供は、一般的に他に知らされないという認識及び信頼の下に行われている。本号は、このような情報を公にした場合、当該第三者との信頼関係が損なわれるおそれがあることから定めたものである。

3 「実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に提供した情報」とは、実施機関が第三者に情報の提供を要請し、第三者が公にしないとの条件でこれに応じて任意に提供した情報をいう。実施機関において、当該情報の提出を求める法的権限があるにもかかわらず、行政指導により情報を提出させた場合は、本号には該当しない。

4 「第三者における通例として公にしないこととされているもの」とは、当該第三者が属する業界、業種等の通常の慣行に照らして、公にしないことに合理的な理由があるものをいう。

5 「当時の状況等に照らして」とは、当該情報の提供当時の諸般の事情に照らして判断することを基本とするが、必要に応じ、取得後の事情の変更も考慮することとする趣旨である。

6 「その他当該情報が公にされないことに対する当該第三者の信頼が保護に値するもの」とは、公にしないとの条件が明示的になされていない場合であっても、公にされないと第三者が信頼して情報を提供する場合などがあり、そのような第三者の信頼が法的保護に値するものをいう。

7 任意提供情報であっても、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められるものは、本号ただし書により開示することとなる。

第7条第8号関係(特定個人情報)

第1 趣旨

1 本号は、番号利用法において、法令に定める場合以外の特定個人情報の収集、保管及び提供を禁止していることに鑑み、本条第2号の適用だけでは特定個人情報の適切な保護が図れないことから、特定個人情報については例外なく不開示とすることを定めたものである。

2 「特定個人情報」とは、個人番号(個人番号に対応し、当該個人番号に代わって用いられる番号、記号その他の符号であって、住民票コード以外のものを含む。)をその内容に含む個人情報をいうものであり、法令の趣旨に基づき特定個人情報として一体的に保護し取り扱う必要があることから、個人番号のみを区分し不開示とする一部開示をするような取扱いは行わない。

3 特定個人情報も個人情報であり、個人情報は生存する個人に関する情報に限定されていることから、死者の情報は、本号で不開示とする特定個人情報には当たらない。

第2 運用

1 特定個人情報に対する本人開示の取扱い

特定個人情報に係る本人からの開示請求については、個人情報保護法及び個人情報保護法施行条例に基づく開示請求をすることとなる。

第7条第9号関係(死者の個人番号)

第1 趣旨

本号は、本条第8号の特定個人情報には死者の情報は含まれないが、番号利用法において個人番号の取扱いについても厳格な制限を設けている趣旨に鑑み、死者の個人番号について、これを不開示とすることを定めたものである。

第8条関係(公文書の一部開示)

第1 趣旨

1 本条は、開示請求に係る公文書の一部に不開示情報が記録されている場合において、不開示情報に係る部分を容易に区分して除くことができ、かつ、区分して除くことにより、当該開示請求の趣旨が損なわれることがないと認めるときは、当該公文書の全体を不開示とするのではなく、不開示情報に係る部分を削除し、当該不開示情報に係る部分以外の部分について公文書の開示をすることを定めたものである。

2 「不開示情報に係る部分を容易に区分して除くことができ」とは、開示請求に係る公文書から不開示情報に係る部分とそれ以外の部分とを区分し、かつ、不開示情報に係る部分を物理的に除くことが、当該公文書の中の不開示情報に係る部分を記録した状態や一部開示のための複写物を作成するために必要な時間、経費等から判断して、容易である場合をいう。

3 「開示請求の趣旨が損なわれる」とは、開示請求に係る公文書から不開示情報に係る部分を区分して除くと、開示される部分に記録されている情報が公表情報だけとなる場合や無意味な文字、数字等の羅列となる場合などをいう。

4 第2項は、開示請求に係る公文書の全部又は一部に個人識別情報(不開示情報)が記録されている場合に、個人識別性のある部分とそれ以外の部分とを区分して取り扱うべきこと及びその場合における不開示とする範囲について定めたものである。

5 「特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるとき」とは、氏名、住所等の個人識別性のある部分を除くことにより、公にしても個人の正当な権利利益が害されるおそれがないと認められる場合をいう。

6 「同号の情報に含まれないものとみなして、前項の規定を適用する。」とは、個人識別性のある部分を除くことにより、公にしても個人の権利利益が害されるおそれがないと認められる場合は、個人識別性のある部分を除いた部分は、第7条第2号の個人情報には含まれないものとみなして開示しなければならないとする趣旨である。

第2 運用

1 個人情報が記録された公文書の一部開示の取扱い

特定の個人であるかどうかを識別するのは、通常氏名及び住所をもって行われているので、氏名及び住所が記録されている公文書の場合は、おおむね第7条第2号の個人情報に該当すると考えられる。ただし、氏名、住所等を削除した場合に、公にしても個人の正当な権利利益が損なわれるおそれがないと認められ、かつ、開示請求の趣旨を損なわずに公文書の一部を開示することができるときは、当該氏名、住所等を削除したその他の部分の公文書の開示をすることとする。

なお、氏名、住所等を削除したとしても、他の情報と組み合わせることにより特定の個人が識別できる場合があるため、慎重に検討する必要がある。

第9条関係(公益上の理由による裁量的開示)

第1 趣旨

1 本条は、開示請求に係る公文書に不開示情報が記録されている場合であっても、不開示情報の規定により保護される利益に優越する公益上の理由があると認められる場合には、実施機関の高度の行政的判断により開示することができることを定めたものである。

2 法令秘情報、特定個人情報及び死者の個人番号については、法令等によって開示が禁止されている又は禁止されていると解される情報であり、本条例による開示の余地がないものであるから、裁量的開示の対象から除外する。

3 「公益上特に必要があると認めるとき」とは、第7条第2号(個人情報)ただし書ロの規定、同条第3号(事業活動情報)ただし書の規定又は同条第7号(任意提供情報)ただし書の規定による人の生命、健康などの個人的な法益保護のため必要な場合の開示義務に比べ、より広い社会的、公共的な利益を保護する特別の必要性のある場合のことをいう。

第10条関係(公文書の存否に関する情報)

第1 趣旨

1 開示請求に対しては、当該開示請求に係る公文書の存否を明らかにした上で、開示決定等をすべきであるが、本条は、その例外として、公文書の存否を明らかにしないで開示請求を拒否すること(存否応答拒否)ができる場合について定めたものである。

2 「当該開示請求に係る公文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することとなるとき」とは、例えば、特定個人の病歴の情報や特定企業の技術開発情報、犯罪の内偵捜査に関する情報等、開示請求に対し、当該公文書は存在するが不開示とするという回答又は当該公文書は存在しないという回答をすることによって不開示情報の保護利益が害されることとなる場合をいう。

第2 運用

1 本条により開示請求を拒否するときは、第11条第2項の開示をしない旨の決定を行うこととなり、必要にして十分な拒否理由の提示をする必要がある。

2 存否応答拒否をする必要がある公文書については、当該公文書が実際には存在しない場合であっても、不存在決定をするのではなく存否応答拒否をするものである。

3 本条は、開示請求に対する応答の例外規定であるから、本条の規定により存否応答拒否をする場合は、その妥当性を適切に判断する必要がある。そこで、存否応答拒否の適用にあたっては、総務局総務部情報公開課に対し、事前に照会するととともに、本条を適用した場合は、その都度、東京都情報公開・個人情報保護審議会へ事後報告をすることとする。

第11条関係(開示請求に対する決定等)

第1 趣旨

1 本条は、開示請求に対する実施機関の応答義務及び応答の形態を明らかにし、存否応答拒否をする場合及び文書の不存在を理由とする請求拒否をする場合についても明確に処分として位置づけることを定めたものである。

2 実施機関は、開示請求に対し、第1項又は第2項に規定する決定のいずれかをしなければならない。

第12条関係(開示決定等の期限)

第1 趣旨

1 本条は、開示請求に対する実施機関の応答の期限について定めたものである。

2 日数は、開示請求があった日の翌日から起算する。

3 第2項の「やむを得ない理由」とは、実施機関が、開示請求に対して、開示請求のあった日から14日以内に開示決定等をするよう誠実に努力しても、当該期間内に開示決定等をすることができないおおむね次のような場合をいう。

(1) 一度に多くの種類の開示請求があり、開示請求に係る公文書を短期間に検索することが困難であるとき、又は開示請求のあった公文書の内容が複雑で、期間内に開示決定等をすることが困難であるとき。

(2) 開示請求があった公文書に都以外のものに関する情報が記録されているため、都以外のものの意見を聴く必要があり、期間内に開示決定等をすることが困難であるとき。

(3) 天災等の発生や一時的な業務量の増大等のため、期間内に開示決定等をすることが困難であるとき。

(4) 年末年始等執務を行わない期間があるときその他の合理的な理由により、期間内に開示決定等をすることが困難であるとき。

4 「60日を限度としてその期間を延長することができる」とは、やむを得ない理由により、14日以内に開示決定等をすることができないときは、開示請求があった日から60日以内に開示決定等をしなければならないとする趣旨である。

なお、この期間延長は、原則として、再度行うことはできないものとする。

5 第3項は、開示請求に係る公文書が著しく大量であるため、開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることにより事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合における開示決定等の期限の特例を定めたものである。

(1) 「開示請求に係る公文書が著しく大量である」とは、開示請求を処理する部署において、開示決定等に関する事務を60日以内に処理しようとすると、当該部署の通常事務の遂行に著しい支障が生ずる程の量をいう。

(2) 「事務の遂行に著しい支障が生ずる」とは、通常生ずる支障の程度を超えた、業務上看過しえない支障をいう。

(3) 「相当の部分」とは、本項が、開示請求に係る公文書について、開示決定等を分割して行うことを認めた趣旨に照らし、実施機関が60日以内に努力して処理することができる部分であって、開示請求者の要求をある程度満たすまとまりのある部分をいう。

(4) 「相当の期間」とは、残りの公文書について、実施機関が処理するために必要な合理的期間をいう。

(5) 「本項を適用する旨及びその理由」には、開示請求に係る公文書が著しく大量であること、開示請求があった日から60日以内にそのすべてについて開示決定等をすることが、通常の行政事務の遂行に著しい支障を及ぼすことを具体的に記載するものとする。

第13条関係(理由付記等)

第1 趣旨

1 第1項は、第11条各項の規定により開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しないときは、理由の提示が必要であること、また、その場合は、開示しない根拠規定及びこれを適用する理由を客観的に理解できる程度に記載しなければならないことを定めたものである。

(1) 「第11条各項の規定により開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しないとき」には、開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しない旨の決定をする場合のほか、不存在の決定及び存否応答拒否をする場合を含むものである。

(2) 不存在決定の理由としては、不作成、未取得、廃棄等がある。

(3) 存否応答拒否をする場合の理由は、当該開示請求に係る公文書が仮に存在する場合、どの不開示条項に該当し、当該公文書の存在等を明らかにすることがなぜ不開示情報を明らかにすることになるのかを示さなければならない。

2 第2項は、開示請求に係る公文書に不開示情報が記録されている場合であっても、開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しない旨の決定の日から1年以内に不開示情報に該当する事由が消滅し、開示請求に係る公文書を開示することができるようになることが明らかであるときは、その旨を開示請求者に通知する趣旨である。

第2 運用

理由の付記は、開示請求を拒否する決定を適法にするための要件であり、理由を付記していない場合又は付記された理由が不十分な場合は、瑕疵ある行政処分となる。したがって、開示請求を拒否する処分を行う場合には、本条の趣旨に即し、不開示の理由を明確に付記しなければならない。

第14条関係(事案の移送)

第1 趣旨

1 第1項は、公文書が他の実施機関により作成されたものであるとき、又は開示請求に係る公文書に他の実施機関の事務に密接に関連する情報が記録されており、他の実施機関に処理を委ねた方が迅速かつ適切な処理ができる場合など、他の実施機関で開示決定等をすることに正当な理由があるときは、当該他の実施機関と協議の上、事案を移送することができることを定めたものである。

2 「他の実施機関と協議の上」とは、事案の移送は、実施機関相互の協議が整った場合に行うとする趣旨である。

3 事案の移送によって、開示請求者に不利益とならないようにするため、移送をした実施機関が移送前にした行為は、移送を受けた実施機関がしたものとみなされる。したがって、開示決定等の期限は、移送をした実施機関に開示請求があった日の翌日から起算することとなる。

4 第3項の「移送をした実施機関は、当該開示に必要な協力をしなければならない」とは、移送を受けた実施機関が当該開示請求に係る公文書を保有していない場合などを想定し、移送をした実施機関は、開示に必要な協力をしなければならないという趣旨である。

5 第4項は、本条例とは別に東京都議会情報公開条例(平成11年東京都条例第4号)が成立したことから、公文書が議会局職員により作成されたものであるときその他都議会議長において開示決定等をすることにつき正当な理由があるときは、第1項の規定を準用し、当該公文書について都議会議長に対し、事案を移送することができることとするとともに、事案が移送されたときは、開示請求があった日に、東京都議会議長に対し、東京都議会情報公開条例の規定に基づく公文書の開示の請求があったものとみなすことを定めたものである。

第2 運用

1 東京都議会議長からの事案の移送の取扱い

東京都議会情報公開条例第16条の規定に基づき、実施機関に対し、事案が移送された場合は、東京都議会議長に対する開示の請求があった日に本条例の規定に基づく開示請求があったものとみなされる。

第15条関係(第三者保護に関する手続)

第1 趣旨

1 第1項は、開示請求に係る公文書に都以外のもの(都が設立した地方独立行政法人は除かれる。)に関する情報が記録されているときは、当該情報に係る都以外のものに対し、意見書を提出する機会を与えることによって、慎重かつ公正な開示決定等をすることとする趣旨である。ただし、実施機関に対して、都以外のものに意見書を提出する機会を与えることを義務付けるものではなく、また、意見書を提出した都以外のものに対して、開示決定等についての同意権を与えたものではない。

2 第2項は、開示請求に係る公文書に第三者(都、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人及び開示請求者は除かれる。)に関する情報が記録されている場合において、第7条第2号ただし書ロ、同条第3号ただし書又は第9条の規定により開示しようとするときは、第三者に対する適正な行政手続を保障する観点から、当該第三者に意見書提出の機会を付与することを実施機関に義務付けることを定めたものである。

3 第3項は、第1項又は第2項の規定により意見書提出の機会を与えられた第三者が反対意見書を提出した場合において、実施機関が開示決定をする場合、当該第三者のために争訟の機会を確保する趣旨である。

4 「開示決定の日と開示をする日との間に少なくとも2週間を置かなければならない」とは、反対意見書を提出した第三者が、公文書の開示決定の取消しを求める争訟を提起し、開示の執行停止の申立てを行う期間について、開示請求者の迅速な開示への期待を斟酌し、2週間以上置くこととしたものである。

第16条関係(公文書の開示の方法)

第1 趣旨

1 本条は、第11条第1項の規定により公文書の開示決定をした場合における具体的な開示の方法を定めたものである。

2 公文書の種類別の開示の方法は、次のとおりである。

(1) 文書、図画又は写真については閲覧又は写しの交付

(2) フィルムについては視聴又は写しの交付。ただしマイクロフィルムの写しの交付については、印刷物として出力したものの交付

(3) 電磁的記録

ア ビデオテープ、録音テープその他の映像又は音声が記録された電磁的記録については視聴又は写しの交付

イ ア以外の電磁的記録については、当該電磁的記録を印刷物として出力したものの閲覧若しくは交付又は当該電磁的記録をディスプレイに出力したものの視聴又は電磁的記録媒体に複写したものの交付が容易である場合は、当該電磁的記録の視聴若しくは写しの交付により行う。

3 「公文書の保存に支障が生ずるおそれがあると認めるとき」とは、公文書の形態若しくは形状から公文書が破損され、又は汚損されるおそれがあるときをいう。

4 「その他合理的な理由があるとき」とは、公文書の一部を開示するとき、常用の公文書を開示することにより日常の業務に支障を生ずるときその他相当と認められるときをいう。

第17条関係(開示手数料)

第1 趣旨

1 第1項は、実施機関(都が設立した地方独立行政法人を除く。)が行う公文書の開示について、開示請求者にその公平な負担を求める観点から、開示手数料を徴収することを定めたものである。

2 第2項は、開示請求者が開示決定を受けたにもかかわらず当該開示に応じない場合、実施機関が再度日時及び場所を指定し、開示に応ずるよう催告をしても、開示請求者が正当な理由なくこれに応じないときは、開示したものとみなし、この場合において、開示請求者が公文書の開示を写しの交付の方法により行うことを求めていたときは、開示手数料を徴収することを定めたものである。

(1) 「正当な理由」とは、天災、交通途絶、不慮の事故、病気などのやむを得ない事情をいう。

(2) 「開示したものとみなす。この場合において、開示請求者が公文書の開示を写しの交付の方法により行うことを求めていたときには、別表に定める開示手数料を徴収する」とは、開示請求者が正当な理由なく開示に応じない場合、開示したものとみなして開示手数料を徴収する趣旨である。

3 第3項は、実施機関が開示決定に係る公文書を広く一般に公にすることを予定し、又は公にするべきであると判断するときは、開示手数料を免除することを定めたものである。

4 「不特定多数の者が知り得る方法」とは、報道機関への発表、公報登載やインターネットによる公表など、一般的に不特定多数の者に伝達することができると認められる方法をいう。

5 第4項は、以下の者から申請があったときに開示手数料を減額又は免除する趣旨である。

(1) 生活保護法(昭和25年法律第144号)第6条第1項の規定による同法の保護を現に受けている者

(2) 生活保護法第6条第2項の規定による同法の保護を必要とする状態にある者で、現にその保護を受けていない者

(3) 災害等不時の事故によって生計困難になった者

(4) その他知事において特別の理由があると認める者

6 第5項は、既納の開示手数料は原則として還付しないが、知事において特別の理由があると認める場合に還付することができることを定めたものである。

第17条の2関係(都が設立した地方独立行政法人の開示手数料)

第1 趣旨

本条は、都が設立した地方独立行政法人は、自ら規則等を定め、開示手数料を徴収することを定めたものである。

第18条関係(他の制度等との調整)

第1 趣旨

1 本条は、法令等による閲覧制度や閲覧・貸出を目的とする施設における閲覧・貸出制度など、他の制度との調整を図るものである。他の制度において閲覧等ができない場合には、法令等がこれを禁止する趣旨でない限り、本条例が適用される。

2 第1項は、公文書の閲覧若しくは縦覧又は謄本、抄本その他の写しの交付に関する手続が、法令又は他の条例に規定されている場合における本条例と当該法令又は他の条例との適用関係について定めたものである。法令又は他の条例が閲覧等の対象者、方法、期間又は範囲を定めている場合は、その限りにおいて、公文書の開示をしないこととしたものである。

3 第2項は、閲覧又は貸出をすることを目的として都の図書館等の施設において管理されている公文書やインターネットの利用その他実施機関の定める方法により公表又は提供を行っている情報(以下「インターネットによる公表情報等」という。)は、開示請求をするまでもなく迅速かつ簡便に当該情報が入手できるため、公文書の開示をしないことを定めたものである。

(1) 都の図書館等において、一般の閲覧に供し、又は貸し出すことを目的として収集、整理及び保存されている図書、資料類は、当該施設の管理規程等の定めに従った閲覧等によることとし、公文書の開示をしない。

(2) 本項が適用になる施設とは、図書、資料、刊行物等を一般の閲覧に供し、又は貸し出すことを事務事業として行っている施設をいい、公の施設であるか否かを問わない。その例として、次のようなものがある。

ア 都民情報ルーム

イ 東京都立中央図書館

ウ 東京文化会館

(3) 実施機関が情報通信技術を活用して、開示請求によらず積極的な都政情報の公表又は提供を進めるよう、インターネットによる公表情報等と同一の情報が記載された公文書は、当該インターネットによる公表情報等の閲覧によることとし、公文書の開示をしない。

「インターネットの利用その他実施機関の定める方法により公表若しくは提供を行っている情報」とは、第35条に基づき公表を行っている情報又は第36条に基づき提供を行っている情報のうち、インターネットの利用又は実施機関が別途定める方法により公表又は提供を行っている情報をいう。

「同一の情報が記載された公文書」とは、記録された媒体又はファイル形式等を問わず、インターネットによる公表情報等と記載内容が同一であることが明確に認められるものをいう。

第2 運用

1 本条例と法令又は他の条例との適用関係

法令又は他の条例の規定により、公文書の閲覧等の手続、対象者、期間等が限定的に定められている次のような場合は、本条例が適用されることとなる。

(1) 法令又は他の条例が閲覧又は縦覧の手続についてのみ定めている場合において、公文書の開示のうちの写しの交付の請求があったとき。

(法令又は他の条例が閲覧又は縦覧の手続のみを定めている例)

ア 貸金業の規制等に関する法律(昭和58年法律第32号)第9条の規定による貸金業者登録簿の閲覧

イ 都市計画法(昭和43年法律第100号)第20条第2項の規定による都市計画図書の閲覧

(2) 法令又は他の条例が対象者を限定している場合において、当該対象者以外のものから開示請求があったとき。

(法令又は他の条例が対象者を限定している例)

ア 土地区画整理法(昭和29年法律第119号)第84条第2項の規定による簿書の閲覧(利害関係者)

イ 公害紛争処理法施行令(昭和45年政令第253号)第15条の3の規定による公害審査会の事件記録の閲覧(当事者)

(3) 法令又は他の条例が閲覧等の期間を限定している場合において、当該期間外に開示請求があったとき。

(法令又は他の条例が請求期間を限定している例)

ア 都市計画法第17条第1項の規定による都市計画の案の縦覧(公告の日から2週間)

イ 東京における自然の保護と回復に関する条例(平成12年東京都条例第216号)第17条第4項の規定による保全地域の指定の案の縦覧(公告の日から2週間)

(4) 法令又は他の条例が閲覧等の対象文書の範囲を限定している場合において、当該文書以外に対する開示請求があったとき。

(法令又は他の条例が閲覧等の対象文書の範囲を限定している例)

ア 公職選挙法(昭和25年法律第100号)第192条第4項の規定による公職の候補者の選挙運動に関する収入及び支出の報告書の閲覧

2 都の図書館等で閲覧等をすることができる公文書等の取扱い

条例上の公文書に該当するものであっても、都の図書館等の施設で閲覧及び貸出に供されているものやインターネットによる公表情報等と同一の情報が記載されたものについては、公文書の開示をしないものであるから、開示請求があった場合、当該公文書の閲覧や貸出を受けるために又はインターネットによる公表情報等を閲覧するために必要となる情報を提供するものとする。提供する情報の例としては、当該公文書を所蔵する施設名、公表又は提供を行っている情報が掲載されたホームページのアドレスなどが挙げられる。

第19条関係(審理員による審理手続に関する規定の適用除外)

第1 趣旨

行政不服審査法第9条第1項では、審理員の指名について、条例に基づく処分について条例に特別の定めがある場合、その適用を除外する旨定めている。

これは、優れた見識を有する委員で構成された委員会等の直接的・実質的な審理により、公正かつ慎重に判断されることが担保されている場合、例えば、審査会が諮問を受けて実質的な審理を行っている場合などは、十分な審理が確保されているとの理由により、審理員による手続は不要とされる趣旨であることから、本条例においても適用除外規定を定めたものである。

第20条関係(審査会への諮問)

第1 趣旨

1 本条は、実施機関(都が設立した地方独立行政法人を除く。)がした開示決定等若しくは開示請求が条例に規定する要件を満たさない等の理由により開示請求を拒否する決定(第2条第2項各号又は第2条の2に規定する適用除外文書である場合又は第18条各項に該当するため公文書の開示をしない場合を含む。以下「開示決定等若しくは開示請求拒否決定」という。)又は開示請求に係る不作為について、行政不服審査法に基づく審査請求があった場合の救済手続を定めたものである。

2 第1項は、開示決定等若しくは開示請求拒否決定又は開示請求に係る不作為に対する審査請求があった場合、当該審査請求に係る審査庁は、本項第1号及び第2号に該当する場合を除き、東京都情報公開審査会(以下「審査会」という。)に対する諮問を経た後に、当該審査請求についての裁決を行う趣旨である。

3 第1項第1号の「審査請求が不適法であり、却下する場合」とは、行政不服審査法に基づく審査請求が、審査の結果、審査請求人としての要件に該当しない、期間経過後の審査請求であるなどの要件不備により却下される場合をいう。

4 第1項第2号は、開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しない旨の決定を取り消し、又は変更し、結果的に当該公文書の全部を開示する場合は、第15条第3項に規定する第三者からの反対意見書が提出されているときを除き、審査会への諮問が不要であることを定めたものである。

5 第2項は、審査請求に係る審査庁は、審査会に対し、速やかに諮問するよう努めることを定めたものである。

6 第3項は、行政不服審査法第9条第3項において読み替えて適用する同法第29条第2項において、審査庁が処分庁等以外である場合には、処分庁等に弁明書の提出を求めること、審査庁が処分庁等である場合には、審査庁に弁明書を作成することを義務付けていることから、審査庁が審査会に諮問するに当たっては、当該弁明書の写しを添えて行うことを定めたものである。

第21条関係(都が設立した地方独立行政法人に対する審査請求)

第1 趣旨

1 本条は、都が設立した地方独立行政法人がした開示決定等若しくは開示請求拒否決定又は当該地方独立行政法人に対する開示請求に係る不作為について、行政不服審査法に基づく審査請求をすることができること及びこの場合の手続には第19条及び第20条の規定を準用することを定めたものである。

第22条関係(諮問をした旨の通知)

第1 趣旨

1 本条は、諮問庁が、審査請求人や行政不服審査法第13条第4項に規定する参加人などの関係者に対し、審査会に諮問をした旨を通知しなければならないことを定めたものである。

2 第1号は、審査請求人及び当該審査請求に利害関係人として参加している参加人に対し、審査会に諮問をした旨を通知することとしたものである。

3 第2号は、開示決定について第三者が審査請求を提起している場合、開示請求者に対し、審査会に諮問をした旨を通知することとしたものである。

4 第3号は、開示決定等について反対意見書を提出した第三者が参加人となっていない場合であっても、当該第三者に対し、審査会に諮問をした旨を通知することとしたものである。

第23条関係(第三者からの審査請求を棄却する場合等における手続)

第1 趣旨

1 本条は、第三者に関する情報が記録されている公文書の開示決定等(第11条各項の決定をいう。以下同じ。)に対する審査請求について、開示決定(公文書の全部又は一部を開示する決定をいう。以下同じ。)に対する第三者からの審査請求を却下し、若しくは棄却する裁決を行う場合、又は開示請求に係る公文書の全部若しくは一部を開示しない旨の決定を変更し、当初の決定より開示する部分を拡大する裁決を行う場合に、当該裁決に係る公文書に自己の情報が記録されている第三者に訴訟提起の機会を確保するための手続を定めたものである。

2 開示決定に対する第三者からの審査請求を却下し、又は棄却する場合、当該公文書は開示されることとなるが、その結果、当該第三者に回復不能の利益侵害が生じるおそれがあるため、当該第三者に訴訟を提起する機会を与えることが、裁判を受ける権利の保障の観点から望ましい。そこで、このような場合には、審査請求に対する裁決の日と開示をする日との間に2週間以上の期間を置き、当該第三者が訴訟を提起する機会を確保することとした(第1号)

3 開示請求に係る公文書の開示決定等に対する審査請求が行われた結果、当該審査請求に係る開示決定等を変更し、当初の決定より開示する部分を拡大する裁決を行うこととなった場合についても、開示決定を行う場合と同様に、第三者の権利保護を図る必要があることから、開示決定等を変更する裁決の日と開示をする日との間に2週間以上の期間を置くこととした(第2号)

4 本条各号に該当する第三者に対し、開示する旨の裁決をした旨及びその理由並びに開示をする日を書面により通知しなければならない。

5 裁決により開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しない旨の決定が取り消された結果、処分庁が再度行う当該公文書の開示決定は、第11条第1項に基づくものであるから、第15条第3項が適用され、開示決定の日と開示をする日との間に2週間以上の期間を置くとともに、当該第三者に対し、開示決定をした旨及びその理由並びに開示をする日を書面により通知しなければならない。

第2 運用

公文書の開示決定の取消しを求める審査請求が提起された場合、当該審査請求の提起自体には、行政不服審査法第25条第1項の規定により、当該開示決定に係る公文書の開示に対する執行停止の効力はないが、同法第25条第2項又は第3項の規定により、処分の取消を求める審査請求に併せて執行停止の申立てがあり、これを審査庁が認めたとき、又は審査庁が職権により執行停止を行ったときは、当該審査請求に対する裁決の日までは開示をしないこととする。

第24条関係(東京都情報公開審査会)

第1 趣旨

1 本条は、第20条(第21条において準用する場合を含む。)に規定する諮問に応じて審議し、また、その審議を通じて情報公開に関する事項について実施機関に意見を述べるため、知事の諮問機関として、審査会を設置することを定めたものである。

2 本条は、第三者的機関である審査会が、開示決定等の当否について審議し、併せてその審議を通じて情報公開制度の改善や情報公開の総合的な推進を図るために必要な事項について、実施機関に意見を述べることにより、本条例の公正かつ民主的な運営を確保する趣旨である。

3 審査会には、第26条第1項の規定により、不開示情報が記録された公文書を直接見分するいわゆるインカメラ審理の権限が与えられている。そこで、第5項は、委員の守秘義務について定めている。委員がこの守秘義務に違反した場合、第44条の規定により罰則が科せられることとなる。

4 第6項は、審査会の委員には、公正性、政治的中立性が求められることから、委員の政治運動を制限する趣旨である。

(1) 「政党その他の政治的団体」とは、政治資金規正法(昭和23年法律第194号)第3条にいう「政治団体」と同一範囲のものをいう。

(2) 「政治運動」とは、地方公務員法第36条に規定する「政治的行為」に該当するものをいう。

第25条関係(部会)

第1 趣旨

1 本条は、審査会の迅速かつ機動的な運用を図るため、審査請求案件について、一部の委員で構成する部会に審議させることができる旨を定めたものである。

2 「審査請求に係る事件について審議させることができる」とは、部会において調査、審議し、その結論をもって審査会の答申とすることができるという趣旨である。

第26条関係(審査会の調査権限)

第1 趣旨

1 本条は、審査会が審査のために必要な調査を行うことができる旨を定めたものである。

2 第1項は、実施機関の行った開示決定等又は開示請求拒否決定の判断が妥当かどうか、不開示情報が当該公文書に記載されているかなどを確認するため、開示決定等又は開示請求拒否決定の判断がなされた公文書を審査会が直接見ることができるインカメラ審理の権限を審査会に認めたものである。

3 第2項は、審査請求のあった開示決定等又は開示請求拒否決定に係る公文書の提示を審査会から求められたときは、諮問庁は、これに応じなければならないことを定めたものである。

4 第3項は、審査請求のあった開示決定等又は開示請求拒否決定に係る公文書の量が多く、複数の不開示情報が複雑に関係する事案などの審議では、争点を明確にし、審理を促進する上で、審査請求のあった開示決定等又は開示請求拒否決定に係る公文書に記録されている情報の内容を分類又は整理した資料(ヴォーン・インデックス)が有効であることから、審査会は必要と認めるときに、実施機関に対し、その指定する方法により、ヴォーン・インデックスを作成するよう求めることができることを定めたものである。

5 第4項の「その他必要な調査」とは、審査会が審議するために必要な実地調査を行うこと等をいう。

第2 運用

1 インカメラ審理手続における公文書の提示

審査会は、事案の審議に当たり、通常の場合は、当該公文書を直接に見分した上で判断することとなると考えられる。しかし、個人情報や犯罪捜査情報などのように、情報の性質に応じて特別の考慮を必要とするものについては、審査会は、諮問庁から必要な説明を聴き、当該公文書を提示することによって生ずる支障の内容及び程度を的確に把握し、諮問に関する説明の要求その他の方法による調査を十分行った上で、当該公文書の提示を求める必要性について判断することとなる。

第27条関係(意見の陳述等)

第1 趣旨

1 第1項は、審査会は、審査請求人、参加人又は諮問庁(以下「審査請求人等」という。)の審査会に対する口頭による意見陳述を認めることができることを定めたものである。

2 第2項は、審査請求人又は参加人が口頭による意見陳述を行う際には、補佐人とともに出頭することができること、また、その場合、審査会による許可が必要であることを定めたものである。

3 第3項は、審査会は、審査請求人等の審査会に対する意見書又は資料の提出の申出を認めることができることを定めたものである。

「相当の期間」とは、意見書又は資料の提出のために社会通念上必要と認められる期間をいう。

4 第4項は、審査請求人等は、第28条の規定により審査会へ提出された意見書及び資料の閲覧等を求めることができるが、意見書及び資料が提出されたかどうかは審査請求人等には分からないので、意見書等が提出された場合、審査会は審査請求人等にその旨を通知するよう努めることを定めたものである。

第28条関係(提出資料の閲覧等)

第1 趣旨

1 第1項は、審査請求人等から審査会に提出された意見書又は資料は、当該意見書又は資料の提出人以外の審査請求人等の主張・弁明・反論のため参考となる場合が多く、また、審査会における公平な審議にも資することから、審査請求人等が、審査会に対して意見書又は資料の閲覧又は写しの交付を請求できることを定めたものである。

なお、本請求は審査会の調査審議手続における主張立証の便宜のために認められるものであることから、答申が行われた後に閲覧等を求めることはできない。

(1) 「第三者の利益を害するおそれがある」とは、審査会に提出された意見書又は資料に、個人又は法人等に関する情報が記録されており、当該意見書等の閲覧又は複写を認めることにより、当該個人又は法人等の権利利益を害するおそれがある場合をいう。

(2) 「その他正当な理由があるとき」とは、審査会に提出された意見書又は資料が公にされることにより、行政運営上支障を生じる情報が記録されている場合等をいう。

2 第2項は、審査請求人等から提出資料の閲覧等の請求があった場合、第三者の権利利益を害することがないよう、意見書又は資料の提出人の意見を聴取する義務を定めたものである。ただし、提出人の意見を聴くまでもなく、閲覧等の請求に対する判断を審査会が行うことが可能な場合には、意見を聴く必要はない。

また、審査会は、閲覧等の請求に対する判断に際し、提出人の意見に拘束されない。

3 第3項は、審査会が第1項の規定により意見書又は資料を閲覧等に供するときは、事件の調査審議に支障が生じないよう、その日時・場所を指定することができることを定めたものである。ただし、審査請求人等が十分な主張・立証をすることができるようにするという本条の趣旨を損なわない範囲において指定しなければならない。

第29条関係(審査請求の制限)

第1 趣旨

本条は、この条例の規定による審査会又は委員の処分又はその不作為については、審査請求をすることができないことを定めたものである。

第30条関係(答申書の送付)

第1 趣旨

本条は、審査会が答申をしたときには、審査請求人及び参加人への手続保障の観点から、両者に答申書の写しを送付すること、また、審査会の説明責任の観点から、答申の内容を公表することを定めたものである。

第2 運用

答申の内容の公表については、答申書そのものを公表することを求めているものではないため、答申書に、一般に公表することが適当ではない部分が含まれている場合には、当該部分を除いた内容を公表することとする。

第31条関係(審議手続の非公開)

第1 趣旨

1 本条は、公文書の開示決定等の当否を審査するという審査会の性格から、審査請求の審議の手続はすべて非公開とすることを定めたものである。なお、審査請求の審議の手続には、情報公開に関する事項について、実施機関に意見を述べるための手続は含まれないものである。

第2 運用

1 審査会が、情報公開に関する事項について実施機関に意見を述べる場合は、審査会が非公開とする旨の議決をした場合を除き公開で行われることとなる。

第34条関係(情報公開の総合的な推進に関する都等の責務)

第1 趣旨

1 本条は、情報公開の総合的な推進に関する都及び都の設立した地方独立行政法人の基本的な責務について定めたものである。

2 第2章に定める公文書開示制度は、情報公開制度において重要な位置を占めるものであるが、都民が開示を請求しない限り開示されないこと、開示の対象は公文書そのものであり、必ずしも都民にとって分かりやすい情報ではないこと、さらに開示請求者のみに開示されることなどの限界もある。

そこで、本条は、公文書開示制度のほか、都民が都政に関する正確で分かりやすい情報を迅速に得られるよう、都民からの開示請求を待つことなく、積極的に都政に関する情報を公表又は提供する情報公表施策及び情報提供施策の整備拡充を進め、情報公開を総合的に推進していくこと並びに都が設立した地方独立行政法人が行う事業に関する情報についても、同様に情報公開を推進していくことを明らかにしたものである。

3 「情報公表」とは、法令等に基づき、義務的に情報を公にすることをいう。

4 「情報提供」とは、法令等に基づかず、情報を提供することをいう。

5 「情報収集機能及び情報提供機能の強化」とは、都政についての要望、意見、提言等の情報を都民から幅広く収集するとともに、都政に関する正確で分かりやすい情報を都民に適切に提供する体制を充実し、又は整備することをいう。

6 「これらの機能の有機的連携の確保並びに実施機関相互間における情報の有効活用等を図る」とは、情報収集機能及び情報提供機能の相互の連携を緊密にするとともに、その実効性を確保するために、実施機関相互間において必要な情報の有効利用を積極的に進めることをいう。

7 「総合的な情報管理体制の整備に努める」とは、都政に関する正確で分かりやすい情報を適切に提供するために必要な情報管理を総合的に行う体制の整備に努めることをいう。

第2 運用

1 公表又は提供する情報

公表し、又は提供する情報は、実施機関が保有する都政情報一般であり、文書、図画、写真及びフィルムに記録された情報のほか、すべての電磁的記録を含むものである。

2 公文書開示制度と情報提供

本条例は、公文書の開示を請求する都民の権利を明らかにするとともに、開示請求の対象となる公文書の範囲、開示請求の具体的手続を定めたものである。一方、実施機関は、従来から所管する事務事業を円滑に執行するために、自主的に、あるいは都民からの求めに応じて、必要な資料等を都民に提供してきたところである。こうした情報提供は、公文書開示制度とは別に行われるものであるが、本条の情報公開の総合的な推進に関する都等の責務の趣旨を踏まえて、積極的に行うものとする。

第35条関係(情報公表制度)

第1 趣旨

1 本条は、実施機関の情報公表の責務について定めたものである。

2 第1項は、公表の対象となる情報を定めたものである。

(1) 地方自治法に基づく地方財政状況の公表など法令等に別段の定めがある場合は、当該法令等に基づく公表を行うこととなる。

(2) 第1項各号に定める情報が、第7条各号に規定する不開示情報に該当する場合は、公表しない。

(3) 公表の対象は、情報の内容であって、当該情報が記録された文書等の媒体ではない。

(4) 第3号の「これに類するもので実施機関が定めるもの」とは、都政の当面する基本的問題や重要課題について、幅広く有識者等の意見表明又は意見交換を行う場として知事が臨時に設置した会議体であって、構成員の半数以上が都の職員以外のものであるものをいう。

3 第2項は、複数回開示請求を受けた公文書等の公表について定めたものである。

(1) 同一の公文書について繰り返し開示請求がある場合には、当該公文書に含まれる情報について、原則公表を行う。公表に当たっては、当該情報の公表が都民の利便及び行政運営の効率化に資するかということを踏まえて検討を行う。

(2) 公表の対象は、開示請求を受けて開示をした情報である。対象となる公文書中に、第7条各号に規定する不開示情報が含まれている場合には、当該不開示情報を除いた部分を公表することとなる。

第36条関係(情報提供施策の拡充)

第1 趣旨

1 本条は、情報公開の総合的な推進を図るための情報提供施策の拡充について定めたものである。

2 第1項は、実施機関が、情報提供の量的拡充又は質的な向上に努め、都民や報道機関への情報提供の充実を図るとともに情報提供を行う施設においても利便性の向上等に努めることを定めたものである。

3 第2項は、実施機関が情報提供施策を拡充させるに当たり、情報通信技術の進展状況や都民への普及状況等を踏まえた上で、インターネット等を活用し、情報通信技術を積極的かつ効果的に活用することを定めたものである。

4 第3項は、実施機関が、効果的な情報提供を実施するため、都民の都政及び事業に対する意見並びに要望を幅広く適切に把握する広聴活動を積極的に行うとともに、その成果を広報活動へ還元し、都民が必要とする都政及び事業に関する情報を効果的に提供できる体制を整備するよう努めることを定めたものである。

第2 運用

1 情報の提供に当たっては、提供する情報へのアクセスの容易性の観点から、東京都公式ホームページへの掲載、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用した情報発信、都民の求めに応じて行う公文書情報提供サービスなど、インターネット等の情報通信技術を積極的に活用する。

第37条関係(出資等法人の情報公開)

第1 趣旨

1 本条は、都が出資その他財政支出等を行う法人であって、実施機関が定める「出資等法人」は、本条例の趣旨にのっとり、情報公開を行うよう努めるとともに、実施機関は、出資等法人に対し、情報公開を進めるよう指導に努めなければならないことを定めたものである。

2 出資等法人は、都とは別個の独立した法人であるため、条例上の実施機関とすることは困難であるが、都が出資その他の財政上の支出・援助等を行っており、その保有する情報の公開を進めていく必要があることから、出資等法人の設立趣旨や自律性に配慮しつつ、出資等法人が自主的に情報公開に努める責務について定める一方、実施機関に対しては、出資等法人の情報公開について指導する責務を課すこととした。

3 「都が出資その他財政支出等を行う法人であって、実施機関が定めるもの」とは、東京都政策連携団体の指導監督等に関する要綱(平成31年3月19日30総行革監第91号知事決定)に定める東京都政策連携団体をいう。

4 「必要な措置を講ずる」とは、出資等法人が、本条例の趣旨にのっとり、当該出資等法人の情報公開に関する内部規程を設けるなど、その保有する情報を自主的に公開するための制度を整えることをいう。

5 「指導に努める」とは、実施機関が出資等法人に対し、情報公開に関する制度を整備するよう、出資等法人の種別に応じた標準的な規程(モデル要綱)を示すなどして指導を行うことをいう。

第2 運用

1 出資等法人の情報公開

出資等法人は、都が提示したモデル要綱をもとに、必要な規定整備を講じるなど自主的に情報公開に取り組むこととなる。モデル要綱は、基本的には本条例に沿っているが、次のように法人としての特性を踏まえた内容になっている。

(1) 法人の特性を考慮し、公益法人版と株式会社版の2通りを定め、平成12年4月1日を目途に実施できるよう、各出資等法人を指導することとした。

(2) 株式会社版においては、会社法等に定めのある株主・債権者の権利との調整のため、「会社の株主及び債権者の利益を害するおそれがあるもの」を不開示情報とした。

(3) 出資等法人が行った開示決定等に対して不服がある場合は、当該出資等法人に対する審査請求を可能とし、その場合、出資等法人は、原則として、各々で設置する「情報公開審査会」の意見を聴いた上で審査請求に対し回答することとした。

第38条関係(公の施設の指定管理者の情報公開)

第1 趣旨

1 本条は、地方自治法第244条の2第3項の規定に基づき都の公の施設の管理を行う指定管理者は、本条例の趣旨にのっとり、当該公の施設の管理に関する情報の公開を行うよう努めるとともに、実施機関は、指定管理者に対し、情報公開を進めるよう指導に努めなければならないことを定めたものである。

2 指定管理者は、都とは別個の独立した法人その他の団体であるが、都に代わって公の施設の管理を行うものであり、その保有する、当該公の施設の管理に関する情報の公開を進めていく必要があることから、指定管理者制度の趣旨や指定管理者の自律性に配慮しつつ、指定管理者が自主的に情報公開に努める責務について定める一方、実施機関に対しては、指定管理者の情報公開について指導する責務を課すこととした。

第39条関係(東京都情報公開・個人情報保護審議会)

第1 趣旨

1 第1項は、情報公開に関する重要事項について、実施機関の諮問を受けて審議し、又は実施機関に意見を述べる機関として、東京都情報公開・個人情報保護審議会(以下「審議会」という。)を設置することを定めたものである。

2 「情報公開に関する重要な事項」とは、情報公開制度の運営に係る基本的な事項、情報公開の総合的な推進を図るため必要な事項等をいう。

3 第2項は、審議会は、個人情報保護法施行条例に規定する事項についても、実施機関の諮問を受けて審議することができることを定めたものである。

4 第3項は、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第30条の40第2項に規定する事項について、調査審議し、及び知事に建議することができることを定めたものである。

5 第4項は、特定個人情報保護評価に関する規則(平成26年特定個人情報保護委員会規則第一号)第7条第4項に規定する事項について、実施機関の諮問を受けて審議することができることを定めたものである。

6 第10項は、第3項及び第4項に規定する事項の審議に関して審議会の迅速かつ機動的な運用を図るため、一部の委員で構成する部会に審議させることができる旨を定めたものであり、部会において調査、審議し、その結論をもって審議会の決定とすることができるという趣旨である。

第2 運用

1 審議会における審議は、本条第11項が適用される場合又は審議会が非公開とする旨の議決をした場合を除き公開で行われることとなる。

第40条関係(文書管理)

第1 趣旨

1 本条は、情報公開制度が適切に運営される前提として、開示請求の対象となる公文書が適正に管理されていることが必要であることから、実施機関が公文書を適正に管理する責務を定めたものである。

第41条関係(文書検索目録等の作成等)

第1 趣旨

1 本条は、公文書の検索に必要な文書目録等を作成する責務を定めたものである。

2 「一般に周知する目的をもって作成した刊行物等」とは、都民に周知するために、実施機関が作成した報告書、答申書、提言書等の印刷物をいう。第2項は、実施機関は、これらの目録を作成し、毎年公表することを定めたものである。

第42条関係(実施状況の公表)

第1 趣旨

1 本条は、条例の運用状況の公表に関する知事の責務を定めたものである。

2 本条は、情報公開制度の実施状況を把握して今後の適正な運用を図るとともに、都民にこれを周知して都民の適正な利用及び情報公開制度の発展を推進する趣旨である。

第2 運用

1 実施状況の公表

知事は、毎年1回、各実施機関における公文書の開示請求件数、公文書の開示決定等件数などについての実施状況をとりまとめ、インターネットを利用する方法等によって公表するものとする。

第43条関係(委任)

第1 趣旨

本条は、この条例を施行するに際して必要な事項を各実施機関がそれぞれ都規則等により定めることとしたものである。

第44条関係(罰則)

第1 趣旨

本条は、第24条第5項の守秘義務規定に違反した審査会委員及び第39条第12項の守秘義務規定に違反した審議会委員及び臨時委員に対する罰則について定めたものである。

附則関係

第1 趣旨

1 第1項は、本条例の施行期日について定めたものである。

2 第2項から第11項までは、本条例の施行に伴う経過措置について定めたものである。

3 第2項は、本条例の施行の際、東京都公文書の開示等に関する条例(以下「旧条例」という。)に基づき、現にされている公文書の開示の請求であって、開示決定等がなされていないものについては、本条例に基づく開示請求とみなし、開示決定等を行う趣旨である。

4 第4項は、本条例の施行の際、現にされている行政不服審査法の規定に基づく不服申立手続については、本条例による手続に基づくことを定めたものである。なお、処分庁又は審査庁は、当該不服申立てに係る旧条例による開示決定等についての判断を行うこととなる。

5 第10項は、本条例公布の日(平成11年3月19日)前に開催された合議制機関等の会議に係る審議資料、議決事項、会議録等について、旧条例第9条第6号の規定(合議制機関等関係情報)に基づき、合議制機関等の議事運営規程又は議決により、その全部又は一部を開示しない旨を定めているものは、本条例の施行後においても、旧条例第9条第6号の規定により、開示をしないことができることとしたものである。なお、本項の規定を適用する場合は、「開示しない旨を定めている」とあるように、開示決定等をする時点において、当該合議制機関等の会議に係る資料の全部又は一部を開示しない旨の議事運営規程又は議決が有効なものとして存続していることが必要である。

6 第11項は、第10項に規定する情報が記録されている公文書についても、できる限り情報の公開をしていく趣旨である。

改正文(平成29年29生広情第191号)

平成29年7月1日から施行する。

改正文(令和4年3生広情第768号)

令和4年4月1日から施行する。

改正文(令和5年4総総情第1373号)

令和5年4月1日から施行する。

東京都情報公開条例の施行について

平成11年12月20日 政都情第366号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
総務部総務課
沿革情報
平成11年12月20日 政都情第366号
平成12年3月31日 政都情第549号
平成12年12月13日 政都情第357号
平成13年3月30日 政都情第514号
平成13年8月31日 生広情報第217号
平成14年3月29日 生広情報第523号
平成14年10月15日 生広情報第258号
平成15年3月27日 生広情報第544号
平成16年3月31日 生広情報第689号
平成16年12月28日 生広情報第535号
平成17年3月31日 生広情報第725号
平成19年3月30日 生広情報第619号
平成19年12月26日 生広情報第474号
平成20年3月31日 生広情報第656号
平成20年11月28日 生広情報第327号
平成22年7月9日 生文総総第825号
平成26年12月26日 生広情報第616号
平成28年3月31日 生広情第894号
平成29年6月30日 生広情第191号
令和2年3月27日 生広情第1447号
令和3年10月20日 生広情第395号
令和4年3月31日 生広情第768号
令和5年3月31日 総総情第1373号