○夏季休業日の生活指導について

平成20年7月7日

20教指義第143号

都立高等学校附属中学校長

都立中等教育学校長

夏季休業日は、生徒がゆとりの中で自己啓発に努め、自己の在り方生き方を考える上で有意義な機会です。各学校においては、生徒が夏季休業日の意義を十分に理解し、心身共に健康で安全に充実した日々を過ごすとともに、夏季休業日以降も希望をもって学校生活が送れるよう、全教職員の連携・協力の下に指導する必要があります。

今年度に入り、都内の学校では不慮の事故等により生徒のかけがえのない命が失われました。また、いじめ等による生徒間の人間関係に関するトラブルも発生し、いまだ解決に至らない状況もあります。夏季休業日を迎えるに当たり、下記の事項を踏まえ、自他の生命を大切にする指導の徹底を図るとともに校内体制を整備し、家庭や地域社会にも積極的に働きかけ、生徒が夏季休業日を主体的・計画的に過ごすことができるよう事前指導において積極的な指導・援助をお願いします。

1 健全で充実した生活を送ることについて

生徒が健全で充実した生活を送る上で、次の点に留意して、適切に指導・援助する。

(1) これまで身に付けた規則正しい生活習慣や自己を律する生活態度を持続できるよう、具体的な生活目標を立て、早寝・早起きをはじめ家庭学習、家事の手伝い、学校でのプール教室や補充教室、部活動など、健康で安定した夏季休業日を過ごせるようにする。

(2) 生徒の中には精神的に不安定になり、他人を傷つけたり、自暴自棄に陥ったりする者が出ることもある。これらを未然に防止するために、平素から学業や生活面での相談活動等を積極的に行い、継続的かつきめ細かに指導する。また、東京都教育委員会が発行しているいじめ等防止指導資料「子供の命を守ろう」等を参考にして、生命の大切さを深く自覚させるとともに、かけがえのない自他の生命を尊重する態度を身に付けさせるなど、一層の指導の充実に努める。

(3) いじめ等の問題行動は、生命や人権の尊重の上から見過ごすことのできない極めて深刻な問題である。生徒に人間として絶対に許されない行為であることを認識させるとともに、その根絶を期して、早期発見、早期対応に努めるなど、一層の指導を徹底する。

(4) 欠席しがちな生徒や日ごろ保健室等で心身の不調を訴えることの多い生徒に対しては、学級担任や養護教諭、スクールカウンセラー等が協力してかかわりを深めるとともに、家庭と連携して生徒一人一人の状況を把握し、心のサインを見逃すことがないよう生徒理解に努める。

(5) 生徒が日常生活の中で、様々な危険に対して的確に判断・対処し、万一、事故や災害が起こった際にも適切な行動ができる能力を培う必要がある。地震や災害については、東京都教育委員会が発行している「地震と安全」、「学校防災マニュアル」を参考にして、学年集会や学級活動等で具体的に指導する。

(6) 生徒が外出する際には、目的地、同行者、帰宅時間、連絡方法などを必ず保護者に伝えるよう指導を徹底する。特に、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」により、午後11時以降の深夜外出が制限されていることや、深夜徘徊に様々な危険が潜んでいることについて指導を徹底する。

(7) 振り込め詐欺や架空・不当請求、宅配等を装った品物の送り付けや名簿等の聞き出しなどの生徒も被害者となる犯罪について、身近な問題として理解させ、実際の事例に基づいて指導するとともに、注意を促し、家庭と連携を図ってその被害防止に努める。

2 問題行動の防止について

夏季休業日には、生徒が開放感から不規則な生活に陥ったり、問題行動を起こしたりすることがある。各警察署の少年係や各地域の少年センター、東京都教育相談センター、健全育成地域支援組織などの関係機関と連携し、適切に指導・援助する。また、夏季休業日以降の学校生活に不適応を示す例も見られるので、次の点に留意して、適切に指導・援助する。

(1) 喫煙、飲酒、薬物乱用などを踏まえ、セーフティ教室などによる規範意識を高める指導の徹底や家庭・地域との連携の強化に努め、早期発見と早期防止を図る。

(2) インターネットや携帯電話の普及に伴い、思わぬ犯罪に巻きこまれることがある。また、ホームページの掲示板、メール、チャットの利用では、誹謗・中傷などにより犯罪の加害者となることがある。これらを未然に防止するために、使用に当たってはルールやマナーに細心の注意が必要なことや、インターネットや携帯電話のサイトに他人の悪口や個人情報を書き込んだりする行為は絶対に許されない行為であることなどについて指導を徹底する。

(3) 服装や頭髪などの乱れが、学校生活の規則に反するとともに、基本的な生活習慣の乱れや問題行動の発生につながる場合もあることに触れ、附属中学校や中等教育学校の生徒としてふさわしい服装や頭髪について指導する。

3 交通事故防止について

自転車で外出したり、自宅周辺で遊んだりする際は、交通ルールを守るように具体的な事例を示しながら、生徒への指導を徹底し、交通事故の防止に努める。特に、自転車に乗って歩行者と衝突し、相手に被害を及ぼす事故が多発しているので、交通安全教室などの機会を活用しながら、自転車の正しい乗り方等を指導する。

4 部活動や宿泊を伴う行事等における事故防止について

夏季休業日の部活動や宿泊を伴う行事等の実施に当たっては、指導体制の確立を図り、事故や問題行動の防止に努めるとともに、安全に配慮した綿密でゆとりある計画の下に、天候、気温、場所等の状況により、活動内容を適切に判断する。その際、東京都教育委員会が発行している「部活動中の重大事故防止のためのガイドライン」等を参考にし、次の点に留意して、適切に指導・援助する。

(1) 生徒の中には、自分の体力の限界を把握できない者もおり、過去において大きな事故が発生した事例もある。指導に当たっては、活動内容が生徒の体力や技能などに応じたものであるよう配慮する。

(2) 事故発生時に際して、適切な対応ができるよう、事前に全教職員の共通理解を図り、校内での指導・連絡体制を十分に整え、家庭、教育委員会や関係諸機関などとの連絡方法や対応について確認する。

(3) 器具、薬品などの取扱いについては、事前に生徒に十分周知する機会をもつなど、平素から事故の防止に努める。

(4) 高温多湿の気象条件や光化学スモッグに対して十分注意するとともに、生徒に熱中症等の予防について指導する。

5 家庭及び地域社会の一員としての喜びや自覚を高めることについて

夏季休業日は、家族や社会の一員としての自覚を養うよい機会である。各学校においては、次の点に留意して、適切に指導・援助する。

(1) 生徒が自己の在り方生き方や進路について家族と話し合ったり、家庭での仕事を分担したりして、家族が協力して生活することや自己の役割を認識することの大切さについて指導する。

(2) 地域社会におけるボランティア活動等への参加を促し、社会の一員としての喜びや自覚を高めるとともに、社会に貢献しようとする精神をはぐくむよう指導する。

(3) 夏季休業日における生活指導の重要性について、保護者会等の機会を活用することや文書等を通じて具体的に保護者や地域社会に周知し、問題行動等の防止についての協力・支援を要請する。

6 校内体制の整備について

夏季休業日は、校内の連絡体制が不十分となりがちである。事件・事故の予防体制を確立するとともに、事件・事故が発生する恐れがある場合や、発生した場合に、教職員、保護者、学校経営支援センター、関係諸機関との連絡が十分にとれるよう、次の点に留意して、校内の体制を整備する。

(1) 不審者侵入防止のための設備点検、校内巡回や非常事態時の役割分担の徹底等、校内体制の整備を行うなど、学校内における生徒の安全確保及び安全管理を徹底する。

(2) 安全確保について保護者にも理解・協力を求め、学校と家庭が共通した指導を行う。また、事故発生時に備え、被害者やその保護者への対応等について明確にする。

(3) 生徒の安全を確保するため、関係諸機関等と一体となった安全管理体制を構築する。

(4) 生徒の健全育成に関する警察と学校との相互連絡制度を活用し、非行・問題行動に関し必要な情報の連絡等を行い、必要に応じて協力して指導する。

夏季休業日の生活指導について

平成20年7月7日 教指義第143号

(平成20年7月7日施行)

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