○夏季休業日の生活指導について

平成20年7月3日

20教指高第160号

都立高等学校長

夏季休業日は、生徒がゆとりの中で自己啓発に努め、自らの将来にわたる在り方生き方を考える上で有意義な機会です。各学校においては、生徒が夏季休業日の意義を十分に理解し、心身共に健康で安全に充実した日々を過ごすとともに、夏季休業日以降も希望をもって学校生活が送れるよう、全教職員の連携・協力の下に指導する必要があります。

今年度に入り、都立高校では、部活動中に生徒の生命にかかわる重大な事故が発生しています。夏季休業日を迎えるに当たり、下記の事項を踏まえ、自他の生命を大切にする指導の徹底を図るとともに、校内体制を整備し、家庭や地域社会にも積極的に働きかけ、生徒が夏季休業日を主体的・計画的に過ごすことができるよう、事前指導において積極的な指導・援助をお願いします。

1 健全で充実した生活を送るために

生徒が健全で充実した生活を送る上で、次の点に留意して、適切に指導する。

(1) 生徒の中には精神的に不安定になり、場合によっては家出や自殺を企図する者が出ることがある。これらを未然に防止するために、平素から学業や生活面での相談活動等を積極的に行い、継続的かつきめ細かに指導する。

(2) いじめ等の問題行動は、生命や人権の尊重の上から見過ごすことのできない極めて深刻な問題である。生徒に人間として絶対に許されない行為であることを認識させるとともに、その根絶を期して、早期発見、早期対応に努めるなど、一層の指導を徹底する。

(3) 欠席しがちな生徒や日ごろ保健室等で心身の不調を訴えることの多い生徒に対しては、ホームルーム担任や養護教諭等が協力してかかわりを深めるとともに、家庭と連携して生徒一人一人の状況を把握し、心のサインを見逃すことがないよう生徒理解に努める。

(4) 個人または友人との海や山あるいは宿泊を伴う旅行では、水難や転落など不慮の事故に遭遇する恐れがある。生徒だけでの旅行を認める場合は、計画や内容及び緊急時の連絡方法等を正確に把握し、適切に指導を行うよう、保護者に対して周知・徹底する。

(5) 安易な目的でアルバイトに従事することは、学習や家族との交流の時間を減らし、時には事故や問題行動のきっかけとなるなど、健全な生活習慣を乱す要因となる場合がある。保護者に学校の方針を明確に示し、家庭との緊密な連携を図り、適切に指導する。

(6) 生徒が日常生活の中で、様々な危険に対して的確に判断・対処し、万一事故や災害が起こった際にも適切な行動ができる能力を培う必要がある。地震や災害については、東京都教育委員会が発行している「地震と安全」「学校防災マニュアル」を参考にして、集会やホームルーム活動等で具体的に指導する。

(7) 振り込め詐欺や架空・不当請求、宅配等を装った品物の送り付けや名簿等の聞き出しなど、生徒も被害者となる犯罪について、身近な問題として理解させ、実際の事例に基づいて指導するとともに注意を促し、家庭と連携を図って、その被害防止に努める。

2 問題行動の防止について

夏季休業日には、生徒が開放感から不規則な生活に陥ったり、問題行動を起こしたりすることがある。各警察署の少年係や各地域の少年センター、東京都教育相談センター、健全育成地域支援組織などの関係機関と連携し、適切に指導する。また、夏季休業日以降の学校生活に不適応を示す例も見られるので、次の点に留意して、適切に指導・援助する。

(1) 喫煙、飲酒、暴力行為、万引、盛り場の徘徊、パーティー券購入の強要、勝馬投票券やスポーツ振興投票券購入等の賭博行為、マルチまがい商法などを未然に防止するため、関係法規を遵守し社会の一員として責任のある行動がとれるよう、具体的に指導・援助する。

(2) 暴力団・暴走族への加入や、暴力団・暴走族関係者との行動を禁じ、深夜走行、無謀走行等の行動をしないよう、家庭や関係諸機関との連携により指導の徹底を図る。

(3) 覚せい剤、大麻、MDMA、シンナーなどの薬物乱用は、生涯にわたって、心身の健康を損なう危険な行為である。生徒に薬物乱用が心身に与える影響の重大さや所持するだけでも法に触れることなどについて理解を深めさせるとともに、脱法ドラッグを含めた薬物の誘惑に負けない判断力と自制心を養うよう指導を徹底する。特に、関係機関等と連携し、夏季休業日前にセーフティ教室等で薬物乱用防止を取り上げる等、生徒に具体的に指導する。

(4) 性に関する情報が氾濫し、性の商品化が進行するなかで、出会い系サイトや出会い系カフェによる不純異性交遊や援助交際等が青少年の健全育成上の大きな問題となっている。また、自己の身体的な変化や性的成熟の自覚が高まるとともに、性に関する不安や悩みをもつ生徒も増加する。性に関する適切な指導を行うとともに、健全な判断力が身に付くよう生徒の実態に応じた指導・援助を行う。また、家庭との連携を密にし、教育相談的手法を活用し、性にかかわる問題行動の早期発見、早期指導に努める。

(5) インターネットや携帯電話の普及に伴い、チャット、掲示板、特に学校非公式サイトなどの匿名掲示板、ウェブログ、プロフィール、ダイアリー等への誹謗・中傷や個人情報の書込みにより、思わぬ人間関係のトラブルに発展したり、犯罪の被害者もしくは加害者となる可能性があることを理解させ、情報モラルの指導の徹底を図る。また、フィルタリング機能の設定による有害サイトへの接続防止について、生徒・保護者に対し積極的に啓発を行う。

(6) 服装や頭髪などの乱れが、学校生活の規則に反するとともに、基本的な生活習慣の乱れや問題行動の発生につながる場合もあることに触れ、高校生としてふさわしい服装や頭髪について指導する。

3 交通事故防止について

高校生が自動二輪車や原動機付自転車の事故により自らの生命を失ったり加害者となったりする痛ましい事例が相次いでいる。また近年は自転車走行中の事故が増加し、加害者となるケースも報告されている。家庭、地域社会、関係機関等と連携を図り、生徒が交通規則や交通道徳を守って、自他の生命を尊重する態度を育成する指導を徹底するとともに、交通事故を未然に防止するため、次の点に留意して、指導・援助を行う。

(1) 自転車の二人乗りや歩道への乗り入れにより歩行者と接触し、歩行者に怪我を負わせる事故が数多く報告されている。道路交通法の改正により自転車の走行は車道が原則とされたことを踏まえ、法令の遵守と適切な自転車の使用について指導を徹底する。

(2) 自動二輪車や原動機付自転車の乗車に際しては、必ずヘルメットを着用し、正しい姿勢で運転するとともに、常に心にゆとりをもち、歩行者や他のドライバーの立場を考えて運転するよう指導する。

(3) 無免許での運転、原動機付自転車の二人乗りや暴走行為は違法である。これらを防止するために、家庭、地域社会、関係機関等との連携を図り、生徒が交通規則や交通道徳を守って自他の安全に配慮できるよう指導する。

(4) 集団でのツーリングは、互いに競争心をあおられる等によって暴走行為に至り、交通事故につながる危険性が高い。また、深夜に出発するツーリングは、疲労も重なり注意力が低下して危険が増加する。これらの行動については、家庭と協力して、計画の見直しを含めた安全指導の徹底を図る。

4 部活動等における事故防止について

今年度に入り、部活動において、生徒の生命にかかわる重大事故が発生している。夏季休業日の部活動、合宿等の行事の実施に当たっては、指導体制の確立を図り、「部活動中の重大事故防止のためのガイドライン」等の活用により、事故や問題行動の防止に努めるとともに、綿密でゆとりのある計画の下に、次の点に留意して、適切に指導・援助する。

(1) 1年生は、自分の体力の限界を把握できない者もおり、過去において大きな事故が発生した事例もある。指導に当たっては、活動内容が生徒の体力や技能などに応じたものであるよう配慮する。

(2) 運動種目の特性や練習内容・方法から予測される危険性を再確認し、事故を未然に防止するよう活動を計画し運営する。

(3) 器具、薬品などの取扱いについては、事前に生徒に十分周知する機会をもつ等、事故の防止に努める。

(4) 高温多湿の気象条件や光化学スモッグに対して十分注意するとともに、生徒に熱中症等の予防について指導する。

(5) 事故発生に際して、適切な対応ができるよう、事前に全教職員の共通理解を図り、校内での指導・連絡体制を十分に整え、家庭、都教育委員会や関係諸機関等との連絡方法や対応について確認する。

5 家庭及び地域社会の一員としての喜びや自覚を高めることについて

夏季休業日は、家族や社会の一員としての自覚を養うよい機会である。各学校においては、次の点に配慮して指導・援助を行う。

(1) 生徒が自己の在り方生き方や進路について家族と話し合ったり、家庭での仕事を分担したりして、家族が協力して生活することや自己の役割を認識することの大切さについて指導する。

(2) 地域社会におけるボランティア活動等への参加を促し、社会の一員としての喜びや自覚を高めるとともに、社会に貢献しようとする精神をはぐくむよう指導する。

(3) 地域の人々をはじめとする社会と触れ合い、基本的なマナーやルールを身に付けるよい機会であり、規範意識や思いやりの心を育てるよう指導する。

(4) 夏季休業日における生活指導の重要性について、保護者会等の機会を活用することや文書等を通じて具体的に保護者や地域社会に周知し、問題行動等の防止についての協力・支援を要請する。

6 校内体制の整備について

夏季休業日は、校内の連絡体制が不十分になりがちである。事件・事故の予防体制を確立するとともに、事件・事故が発生する恐れがある場合や、発生した場合に、教職員、保護者、都教育委員会との連絡や警察との連携が十分に取れるよう、校内の体制を整備する。

(1) 不審者侵入防止のための設備点検や施設の安全点検を徹底し、校内巡回や非常事態時の役割分担の徹底等、校内体制の整備を行うなど、学校内における生徒の安全確保及び安全管理を徹底する。

(2) 安全確保について保護者にも理解・協力を求め、学校と家庭が共通した指導を行う。また、事故発生時に備え、被害者やその保護者への対応等について明確にする。

(3) 生徒の安全を確保するための地域ぐるみの取組を進めるとともに、関係諸機関等と一体となった安全管理体制を構築する。

(4) 生徒の健全育成に関する警察と学校との相互連絡制度を活用し、非行・問題行動に関し必要な情報の連絡等を行い、必要に応じて協力して指導する。

<参考>

(関係通知)

1 「幼児・児童・生徒の安全確保及び安全管理の徹底について」 (13教指企第163号)

2 「学校内外における生活指導の徹底について」 (13教指企第461号)

3 「学校の安全管理体制の緊急整備について」 (13教指企第169号)

4 「緊急時における自動火災報知設備の目的外使用について」 (13教指企第188号)

5 「生活指導の徹底について」 (14教指高第145号)

6 「生活指導の充実について」 (14教指義第431号)

7 「登山活動における事故防止の通知の改訂について」 (14教指企第691号)

8 「児童・生徒・学生の薬物乱用防止に関する指導の徹底について」 (15教指企第787号)

9 「児童・生徒の健全育成に関する警察と学校との相互連絡制度」 (16教指企第32号)

10 「人権尊重を基盤とした生活指導の充実について」 (16教指企第240号)

11 「生活指導の充実について」 (16教指企第319号)

12 「生活指導の充実について」 (16教指企第704号)

13 「生活指導の充実について」 (17教指企第313号)

14 「生活指導の充実について」 (17教指企第352号)

15 「生命尊重の視点に立った生活指導の徹底について」 (17教指企第457号)

16 「生命尊重の視点に立った生活指導の徹底について」 (17教指企第809号)

17 「生活指導の徹底について」 (17教指企第902号)

18 「生活指導の徹底について」 (18教指企第48号)

19 「架空・不当請求被害防止の指導の充実について」 (18教指企第64号)

20 「セーフティ教室の実施について」 (18教指企第105号)

21 「自然体験学習における事故防止について」 (18教指企第186号)

22 「生命尊重の視点に立った生活指導の徹底について」 (18教指企第406号)

23 「いじめの問題への取組の徹底について」 (18教指企第528号)

24 「『文部科学大臣からのお願い』について」の送付について (18教指企第588号)

25 「『いじめ防止強化月間』の取り組みについて」 (18教指企第789号)

26 「問題行動を起こす児童・生徒に対する指導について」 (18教指企第803号)

27 「生活指導の徹底について」 (18教指企第836号)

28 「部活動における事故防止の徹底について」 (19教指企第294号)

29 「部活動における事故防止等について」 (20教指企第110号)

30 「学校における体育活動中の事故防止等について」 (20教指企第143号)

31 「水泳等の事故防止について」 (20教指企第221号)

32 「熱中症事故の防止について」 (20教指企第301号)

33 「幼児・児童・生徒の安全確保について」 (20教指企第315号)

34 「学校における転落事故等の防止について」 (20教指企第329号)

(関係資料)

1 いじめ防止のための手引 「すべての子どもたちの豊かな学校生活を願って」 (平成7年3月 東京都教育委員会)

2 「中途退学問題を解決するために すべての生徒に学ぶ喜びを」 (平成7年3月 東京都教育委員会)

3 「学校防災マニュアル」 (平成8年7月 東京都教育委員会)

4 「東京都教育指導必携」 (平成9年9月 東京都教育庁指導部監修)

5 「生徒指導の手引」 (平成10年3月 東京都教育庁指導部)

6 「中途退学防止のために ~すべての生徒に豊かな高校生活を~」 (平成13年3月 東京都教育庁指導部)

7 平成14年度高等学校ブックレットVol1「生徒一人一人の健全育成のために」 (平成15年3月 東京都教育庁指導部)

8 平成14年度高等学校ブックレットVol2「進級・卒業に関わる指導体制の確立」 (平成15年3月 東京都教育庁指導部)

9 「性教育に関する指導資料」 (平成15年5月 東京都教育委員会)

10 「あなたを犯罪から守るチェックリスト24」 (平成15年9月 東京都教育庁指導部)

11 「~緊急提言~子どもを犯罪に巻き込まないための方策」 (平成15年10月 知事本部)

12 「東京都青少年の健全育成に関わる条例のあらまし」 (平成16年11月 東京都教育庁指導部)

13 「『性教育の手引』―高等学校編―」(改訂) (平成17年3月 東京都教育委員会)

14 「非行防止・犯罪防止教育推進指導資料」 (平成17年3月 東京都教育庁指導部)

15 「非行防止・犯罪防止教育推進指導資料 第2集―実践編―」 (平成17年3月 東京都教育庁指導部)

16 「子どもの命は大人みんなで守る 子どもを犯罪被害から守るための学校体制づくり」 (平成17年3月 東京都教育庁指導部)

17 「子どもの危険予測・回避能力を育てる安全教育」―防犯教育推進資料― (平成18年2月 東京都教育庁指導部指導企画課)

18 「セーフティ教室」 (平成18年3月 東京都教育庁指導部)

19 「安全教育の手引き」 (平成18年3月 東京都教育委員会)

20 「薬物乱用防止に関する指導資料」 (平成18年3月 東京都教育委員会)

21 緊急アピール「いじめを許さず、尊い命を守るために」 (平成18年11月 東京都教育委員会教育長)

22 「非行防止・犯罪防止教育推進指導資料 第3集」 (平成19年3月 東京都教育庁指導部)

23 「学校危機管理マニュアル」 (平成19年3月 東京都教育庁総務部)

24 「部活動顧問ハンドブック」 (平成19年4月 東京都教育庁指導部)

25 「地震と安全」 (平成19年8月 東京都教育庁指導部)

26 「子供の命を守ろう~子供の自殺予防に向けて~」 (平成20年3月 東京都教育委員会)

27 「児童・生徒一人一人に、危険を予測し、回避する能力を育てるために」 (平成20年3月 東京都教育庁指導部)

28 「平成19年度安全教育プログラム開発事業推進校 実践事例集」 (平成20年3月 東京都教育庁指導部)

29 「都立高校生の皆さんへ 交通事故防止のために」 (平成20年3月 東京都教育庁指導部)

30 「東京都高等学校交通安全教育指導事例集(第24集)」 (平成20年3月 東京都教育庁指導部)

31 「部活動中の重大事故防止のためのガイドライン」 (平成20年6月 東京都教育委員会)

夏季休業日の生活指導について

平成20年7月3日 教指高第160号

(平成20年7月3日施行)

体系情報
指導部指導企画課
沿革情報
平成20年7月3日 教指高第160号