○不登校児童・生徒への支援の在り方について

平成28年10月26日

28教指企第827号

区市町村教育委員会指導事務主管課長

日頃より、東京都教育委員会の教育施策について御理解、御協力をいただき、ありがとうございます。

このたび、別添写しのとおり、文部科学省初等中等教育局長から、平成28年9月14日付28文科初第770号「不登校児童生徒への支援の在り方について」の通知(以下「文部科学省通知」という。)がありました。

つきましては、貴管下の各学校に文部科学省通知を周知していただきますとともに、貴教育委員会及び貴管下各学校における、不登校児童・生徒への支援に向けた取組の一層の推進をお願いします。

1 個に応じた計画的な支援について

東京都教育委員会は、平成20年に、不登校児童・生徒のための「個別適応計画書」の様式を例示している中、各区市町村教育委員会では、独自の様式を使用するなどして、不登校児童・生徒への支援を計画的に実施されていることと存じます。

今回、文部科学省通知の中で、「児童生徒理解・教育支援シート(試案)」が提示されたことを踏まえ、あらためて、不登校児童・生徒に対する効果的な支援をお願いします。

なお、東京都教育委員会では、「個別適応計画書」の改訂を検討しています。

2 不登校児童・生徒への支援の充実について

東京都教育委員会では、平成27年に「不登校・中途退学対策検討委員会」を設置し、今後の不登校等の児童・生徒に対する支援の在り方等に関して「不登校・中途退学対策検討委員会報告書」に取りまとめ公表しているところです。

区市町村教育委員会におかれましては、本報告書の趣旨や文部科学省通知を踏まえ、より多くの不登校児童・生徒が、復学や社会的自立を果たせるよう、施策の充実をお願いいたします。

なお、東京都教育委員会では、平成28年5月に、有識者等による「教育支援センター(適応指導教室)等充実方策検討委員会」を設置し、教育支援センター(適応指導教室)及び教育課程特例校の充実・機能強化に向けて検討を進めています。本検討委員会による報告は、後日公表する予定です。

別添写し

平成28年9月14日

28文科初第770号

/各都道府県教育委員会教育長/各指定都市教育委員会教育長/各都道府県知事/附属学校を置く各国立大学法人学長/小中高等学校を設置する学校設置会社を所轄する構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長/殿

文部科学省初等中等教育局長

不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)

不登校児童生徒への支援につきましては,関係者において様々な努力がなされ,児童生徒の社会的自立に向けた支援が行われてきたところですが,不登校児童生徒数は依然として高水準で推移しており,生徒指導上の喫緊の課題となっております。

文部科学省におきましては,こうした状況を踏まえ,平成27年1月に「不登校に関する調査研究協力者会議」を発足させ,①不登校児童生徒の実情の把握・分析,②学校における不登校児童生徒への支援の現状と改善方策,③学校外における不登校児童生徒への支援の現状と改善方策,④その他不登校に関連する施策の現状と課題について総合的・専門的な観点から検討を願い,本年7月に「不登校児童生徒への支援に関する最終報告~一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進~」を取りまとめていただいたところです。

報告においては,不登校児童生徒を支援する上での基本的な姿勢として,

① 不登校については,取り巻く環境によっては,どの児童生徒にも起こり得ることとして捉える必要がある。また,不登校という状況が継続し,結果として十分な支援が受けられない状況が継続することは,自己肯定感の低下を招くなど,本人の進路や社会的支援のために望ましいことではないことから,支援を行う重要性について十分に認識する必要がある。

② 不登校については,その要因や背景が多様・複雑であることから,教育の観点のみで捉えて対応することが困難な場合があるが,一方で,児童生徒に対して教育が果たす役割が大きいことから,学校や教育関係者が一層充実した指導や家庭への働き掛け等を行うとともに,学校への支援体制や関係機関との連携協力等のネットワークによる支援等を図ることが必要である。

③ 不登校とは,多様な要因・背景により,結果として不登校状態になっているということであり,その行為を「問題行動」と判断してはならない。不登校児童生徒が悪いという根強い偏見を払拭し,学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添い共感的理解と受容の姿勢を持つことが,児童生徒の自己肯定感を高めるためにも重要であり,周囲の大人との信頼関係を構築していく過程が社会性や人間性の伸長につながり,結果として児童生徒の社会的自立につながることが期待される。

という観点が示されたところです。

本通知は,今回取りまとめられた最終報告に基づき,不登校児童生徒への支援についてまとめたものです。文部科学省としては,この最終報告の趣旨を踏まえ,今後更に施策の充実に取り組むこととしておりますが,貴職におかれましても,下記により不登校児童生徒への支援の充実に一層努められるようお願いします。また,都道府県・指定都市教育委員会にあっては所管の学校及び域内の市区町村教育委員会に対して,都道府県知事にあっては所轄の私立学校に対して,国立大学法人の長にあっては設置する附属学校に対して,株式会社立学校を認定した地方公共団体の長にあっては認可した学校に対して,この趣旨について周知を図るとともに,適切な対応がなされるよう御指導をお願いします。本通知に関しては,その内容について,内閣府,警察庁,法務省及び厚生労働省と協議済であることを申し添えます。

1 不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方

(1) 支援の視点

不登校児童生徒への支援は,「学校に登校する」という結果のみを目標にするのではなく,児童生徒が自らの進路を主体的に捉えて,社会的に自立することを目指す必要があること。また,児童生徒によっては,不登校の時期が休養や自分を見つめ直す等の積極的な意味を持つことがある一方で,学業の遅れや進路選択上の不利益や社会的自立へのリスクが存在することに留意すること。

(2) 学校教育の意義・役割

特に義務教育段階の学校は,各個人の有する能力を伸ばしつつ,社会において自立的に生きる基礎を養うとともに,国家・社会の形成者として必要とされる基本的な資質を培うことを目的としており,その役割は極めて大きいことから,学校教育の一層の充実を図るための取組が重要であること。また,不登校児童生徒への支援については児童生徒が不登校となった要因を的確に把握し,学校関係者や家庭,必要に応じて関係機関が情報共有し,組織的・計画的な,個々の児童生徒に応じたきめ細やかな支援策を策定することや,社会的自立へ向けて進路の選択肢を広げる支援をすることが重要であること。さらに,既存の学校教育になじめない児童生徒については,学校としてどのように受け入れていくかを検討し,なじめない要因の解消に努める必要があること。

また,児童生徒の才能や能力に応じて,それぞれの可能性を伸ばせるよう,本人の希望を尊重した上で,場合によっては,教育支援センターや不登校特例校,ICTを活用した学習支援,フリースクール,夜間中学での受入れなど,様々な関係機関等を活用し社会的自立への支援を行うこと。

その際,フリースクールなどの民間施設やNPO等と積極的に連携し,相互に協力・補完することの意義は大きいこと。

(3) 不登校の理由に応じた働き掛けや関わりの重要性

不登校児童生徒が,主体的に社会的自立や学校復帰に向かうよう,生徒自身を見守りつつ,不登校のきっかけや継続理由に応じて,その環境づくりのために適切な支援や働き掛けを行う必要があること。

(4) 家庭への支援

家庭教育は全ての教育の出発点であり,不登校児童生徒の保護者の個々の状況に応じた働き掛けを行うことが重要であること。また,不登校の要因・背景によっては,福祉や医療機関等と連携し,家庭の状況を正確に把握した上で適切な支援や働き掛けを行う必要があるため,家庭と学校,関係機関の連携を図ることが不可欠であること。その際,保護者と課題意識を共有して一緒に取り組むという信頼関係をつくることや,訪問型支援による保護者への支援等,保護者が気軽に相談できる体制を整えることが重要であること。

2 学校等の取組の充実

(1) 「児童生徒理解・教育支援シート」を活用した組織的・計画的支援

不登校児童生徒への効果的な支援については,学校及び教育支援センターなどの関係機関を中心として組織的・計画的に実施することが重要であり,また,個々の児童生徒ごとに不登校になったきっかけや継続理由を的確に把握し,その児童生徒に合った支援策を策定することが重要であること。その際,学級担任,養護教諭,スクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー等の学校関係者が中心となり,児童生徒や保護者と話し合うなどして,「児童生徒理解・教育支援シート(試案)」(別添1)(以下「シート」という。)を作成することが望ましいこと。これらの情報は関係者間で共有されて初めて支援の効果が期待できるものであり,必要に応じて,教育支援センター,医療機関,児童相談所等,関係者間での情報共有,小・中・高等学校間,転校先等との引継ぎが有効であるとともに,支援の進捗状況に応じて,定期的にシートの内容を見直すことが必要であること。

また,校務効率化の観点からシートの作成に係る業務を効率化するとともに,引継ぎに当たって個人情報の取扱いに十分留意することが重要であること。

なお,シートの作成及び活用に当たっては,「児童生徒理解・教育支援シートの作成と活用について」(別添2)を参照すること。

(2) 不登校が生じないような学校づくり

① 魅力あるよりよい学校づくり

児童生徒が不登校になってからの事後的な取組だけでなく,児童生徒が不登校にならない,魅力ある学校づくりを目指すことが重要であること。

② いじめ,暴力行為等問題行動を許さない学校づくり

いじめや暴力行為を許さない学校づくり,問題行動へのき然とした対応が大切であること。また教職員による体罰や暴言等,不適切な言動や指導は許されず,教職員の不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合は,懲戒処分も含めた厳正な対応が必要であること。

③ 児童生徒の学習状況等に応じた指導・配慮の実施

学業のつまずきから学校へ通うことが苦痛になる等,学業の不振が不登校のきっかけの一つとなっていることから,児童生徒が学習内容を確実に身に付けることができるよう,指導方法や指導体制を工夫改善し,個に応じた指導の充実を図ることが望まれること。

④ 保護者・地域住民等の連携・協働体制の構築

社会総掛かりで児童生徒を育んでいくため,学校,家庭及び地域等との連携・協働体制を構築することが重要であること。

⑤ 将来の社会的自立に向けた生活習慣づくり

児童生徒が将来の社会的自立に向けて,主体的に生活をコントロールする力を身に付けることができるよう,学校や地域における取組を推進することが重要であること。

(3) 不登校児童生徒に対する効果的な支援の充実

① 不登校に対する学校の基本姿勢

校長のリーダーシップの下,教員だけでなく,様々な専門スタッフと連携協力し,組織的な支援体制を整えることが必要であること。

② 早期支援の重要性

不登校児童生徒の支援においては,予兆への対応を含めた初期段階からの組織的・計画的な支援が必要であること。

③ 効果的な支援に不可欠なアセスメント

不登校の要因や背景を的確に把握するため,学級担任の視点のみならず,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等によるアセスメント(見立て)が有効であること。また,アセスメントにより策定された支援計画を実施するに当たっては,学校,保護者及び関係機関等で支援計画を共有し,組織的・計画的な支援を行うことが重要であること。

④ スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーとの連携協力

学校においては,相談支援体制の両輪である,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーを効果的に活用し,学校全体の教育力の向上を図ることが重要であること。

⑤ 家庭訪問を通じた児童生徒への積極的支援や家庭への適切な働き掛け

学校は,プライバシーに配慮しつつ,定期的に家庭訪問を実施して,児童生徒の理解に努める必要があること。また,家庭訪問を行う際は,常にその意図・目的,方法及び成果を検証し適切な家庭訪問を行う必要があること。

なお,家庭訪問や電話連絡を繰り返しても児童生徒の安否が確認できない等の場合は,直ちに市町村又は児童相談所への通告を行うほか,警察等に情報提供を行うなど,適切な対処が必要であること。

⑥ 不登校児童生徒の登校に当たっての受入体制

不登校児童生徒が登校してきた場合は,温かい雰囲気で迎え入れられるよう配慮するとともに,保健室,相談室及び学校図書館等を活用しつつ,徐々に学校生活への適応を図っていけるような指導上の工夫が重要であること。

⑦ 児童生徒の立場に立った柔軟な学級替えや転校等の対応

いじめが原因で不登校となっている場合等には,いじめを絶対に許さないき然とした対応をとることがまずもって大切であること。また,いじめられている児童生徒の緊急避難としての欠席が弾力的に認められてもよく,そのような場合には,その後の学習に支障がないよう配慮が求められること。そのほか,いじめられた児童生徒又はその保護者が希望する場合には,柔軟に学級替えや転校の措置を活用することが考えられること。

また,教員による体罰や暴言等,不適切な言動や指導が不登校の原因となっている場合は,不適切な言動や指導をめぐる問題の解決に真剣に取り組むとともに,保護者等の意向を踏まえ,十分な教育的配慮の上で学級替えや転校を柔軟に認めていくことが望まれること。

保護者等から学習の遅れに対する不安により,進級時の補充指導や進級や卒業の留保に関する要望がある場合には,補充指導等の実施に関して柔軟に対応するとともに,校長の責任において進級や卒業を留保するなどの措置をとるなど,適切に対応する必要があること。また,欠席日数が長期にわたる不登校児童生徒の進級や卒業に当たっては,あらかじめ保護者等の意向を確認するなどの配慮が重要であること。

(4) 不登校児童生徒に対する多様な教育機会の確保

不登校児童生徒の一人一人の状況に応じて,教育支援センター,不登校特例校,フリースクールなどの民間施設,ICTを活用した学習支援など,多様な教育機会を確保する必要があること。また,夜間中学において,本人の希望を尊重した上での受入れも可能であること。

義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において,指導・助言等を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについては,別記によるものとし,高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において,指導・助言等を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについては,平成21年3月12日付け20文科初第1346号「高等学校における不登校生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の対応について」によるものとすること。また,義務教育段階の不登校児童生徒が自宅においてICT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱いについては,平成17年7月6日付け17文科初第437号「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」によるものとすること。その際,不登校児童生徒の懸命の努力を学校として適切に判断すること。

なお,不登校児童生徒が民間施設において相談・指導を受ける際には,「民間施設についてのガイドライン(試案)」(別添3)を参考として,判断を行う際の何らかの目安を設けておくことが望ましいこと。

また,体験活動においては,児童生徒の積極的態度の醸成や自己肯定感の向上等が期待されることから,青少年教育施設等の体験活動プログラムを積極的に活用することが有効であること。

(5) 中学校卒業後の支援

① 高等学校入学者選抜等の改善

高等学校入学者選抜について多様化が進む中,高等学校で学ぶ意欲や能力を有する不登校生徒について,これを適切に評価することが望まれること。

また,国の実施する中学校卒業程度認定試験の活用について,やむを得ない事情により不登校となっている生徒が在学中に受験できるよう,不登校生徒や保護者に対して適切な情報提供を行うことが重要であること。

② 高等学校における長期欠席・中途退学への取組の充実

就労支援や教育的ニーズを踏まえた特色ある高等学校づくり等も含め,様々な取組や工夫が行われることが重要であること。

③ 中学校卒業後の就学・就労や「ひきこもり」への支援

中学校時に不登校であり,中学校卒業後に進学も就労もしていない者,高等学校へ進学したものの学校に通えない者,中途退学した者等に対しては,多様な進学や職業訓練等の機会等について相談できる窓口や社会的自立を支援するための受皿が必要であること。また,関係行政機関等が連携したり,情報提供を行うなど,社会とのつながりを絶やさないための適切な対応が必要であること。

3 教育委員会の取組の充実

(1) 不登校や長期欠席の早期把握と取組

教育委員会においては,学校等の不登校への取組に関する意識を更に高めるとともに,学校が家庭や関係機関等と効果的に連携を図り,不登校児童生徒に対する早期の支援を図るための体制の確立を支援することが重要であること。

(2) 学校等の取組を支援するための教育条件等の整備等

① 教員の資質向上

教育委員会における教員の採用・研修を通じた資質向上のための取組は不登校への適切な対応に資する重要な取組であり,初任者研修を始めとする教職経験に応じた研修,生徒指導・教育相談といった専門的な研修,管理職や生徒指導主事を対象とする研修などの体系化とプログラムの一層の充実を図り,不登校に関する知識や理解,児童生徒に対する理解,関連する分野の基礎的な知識などを身に付けさせていくことが必要であること。また,指導的な教員を対象にカウンセリングなどの専門的な能力の育成を図るとともに,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカー等の専門性と連動した学校教育への更なる理解を図るといった観点からの研修も重要であること。

② きめ細やかな指導のための適切な人的措置

不登校が生じないための魅力ある学校づくり,「心の居場所」としての学校づくりを進めるためには,児童生徒一人一人に対してきめ細やかな指導が可能となるよう,適切な教員配置を行うことが必要であること。また,異校種間の人事交流や兼務などを進めていくことも重要であること。

不登校児童生徒が多く在籍する学校については,教員の加配等,効果的かつ計画的な人的配置に努める必要があること。そのためにも日頃より各学校の実情を把握し,また加配等の措置をした後も,この措置が効果的に活用されているか等の検証を十分に行うこと。

③ 保健室,相談室や学校図書館等の整備

養護教諭の果たす役割の大きさに鑑み,養護教諭の複数配置や研修機会の充実,保健室,相談室及び学校図書館等の環境整備,情報通信機器の整備等が重要であること。

④ 転校のための柔軟な措置

いじめや教員による不適切な言動や指導等が不登校の原因となっている場合には,市区町村教育委員会においては,児童生徒又は保護者等が希望する場合,学校と連携した適切な教育的配慮の下に,就学すべき学校の指定変更や区域外就学を認めるなどといった対応も重要であること。また,他の児童生徒を不登校に至らせるような深刻ないじめや暴力行為があった場合は,必要に応じて出席停止措置を講じるなど,き然とした対応の必要があること。

⑤ 義務教育学校設置等による学校段階間の接続の改善

義務教育学校等において9年間を見通した生徒指導の充実等により不登校を生じさせない取組を推進することが重要であること。また,小中一貫教育を通じて蓄積される優れた不登校への取組事例を広く普及させることが必要であること。

⑥ アセスメント実施のための体制づくり

不登校の要因・背景が多様・複雑化していることから,初期の段階での適切なアセスメントを行うことが極めて重要であること。そのためには,児童生徒の状態によって,専門家の協力を得る必要があり,スクールカウンセラー及びスクールソーシャルワーカーの配置・派遣など学校をサポートしていく体制の検討が必要であること。

(3) 教育支援センターの整備充実及び活用

① 教育支援センターを中核とした体制整備

今後,教育支援センターは通所希望者に対する支援だけでなく,これまでに蓄積された知見や技能を生かし,通所を希望しない者への訪問型支援,シートのコンサルテーションの担当など,不登校児童生徒への支援の中核となることが期待されること。

また,不登校児童生徒の無償の学習機会を確保し,不登校児童生徒への支援の中核的な役割を果たしていくため,未設置地域への教育支援センターの設置又はこれに代わる体制整備が望まれること。そのため,都道府県教育委員会は,域内の市区町村教育委員会と緊密な連携を図りつつ,未整備地域を解消して不登校児童生徒や保護者が利用しやすい環境づくりを進め,「教育支援センター整備指針(試案)」(別添4)を参考に,地域の実情に応じた指針を作成し必要な施策を講じていくことが求められること。

市区町村教育委員会においては,主体的に教育支援センターの整備充実を進めていくことが必要であり,教育支援センターの設置促進に当たっては,例えば,自治体が施設を設置し,民間の協力の下に運営する公民協営型の設置等も考えられること。もとより,市区町村教育委員会においても,「教育支援センター整備指針」を策定することも考えられること。その際には,教育支援センターの運営が不登校児童生徒及びその保護者等のニーズに沿ったものとなるよう留意すること。

なお,不登校児童生徒への支援の重要性に鑑み,私立学校等の児童生徒の場合でも,在籍校と連携の上,教育支援センターの利用を認めるなど柔軟な運用がなされることが望ましいこと。

② 教育支援センターを中核とした支援ネットワークの整備

教育委員会は,積極的に,福祉・保健・医療・労働部局等とのコーディネーターとしての役割を果たす必要があり,各学校が関係機関と連携しやすい体制を構築する必要があること。また,教育支援センター等が関係機関や民間施設等と連携し,不登校児童生徒やその保護者を支援するネットワークを整備することが必要であること。

(4) 訪問型支援など保護者への支援の充実

教育委員会においては,保護者に対し,不登校のみならず子育てや家庭教育についての相談窓口を周知し,不登校への理解や不登校となった児童生徒への支援に関しての情報提供や相談対応を行うなど,保護者に寄り添った支援の充実が求められること。また,プライバシーに配慮しつつも,困難を抱えた家庭に対する訪問型支援を積極的に推進することが重要であること。

(別記)

義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて

1 趣旨

不登校児童生徒の中には,学校外の施設において相談・指導を受け,学校復帰への懸命の努力を続けている者もおり,このような児童生徒の努力を学校として評価し支援するため,我が国の義務教育制度を前提としつつ,一定の要件を満たす場合に,これら施設において相談・指導を受けた日数を指導要録上出席扱いとすることができることとする。

2 出席扱いの要件

不登校児童生徒が学校外の施設において相談・指導を受けるとき,下記の要件を満たすとともに,当該施設への通所又は入所が学校への復帰を前提とし,かつ,不登校児童生徒の自立を助けるうえで有効・適切であると判断される場合に,校長は指導要録上出席扱いとすることができる。

(1) 保護者と学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。

(2) 当該施設は,教育委員会等が設置する教育支援センター等の公的機関とするが,公的機関での指導の機会が得られないあるいは公的機関に通うことが困難な場合で本人や保護者の希望もあり適切と判断される場合は,民間の相談・指導施設も考慮されてよいこと。

ただし,民間施設における相談・指導が個々の児童生徒にとって適切であるかどうかについては,校長が,設置者である教育委員会と十分な連携をとって判断するものとすること。このため,学校及び教育委員会においては,「民間施設についてのガイドライン」(別添3)を参考として,上記判断を行う際の何らかの目安を設けておくことが望ましいこと。

(3) 当該施設に通所又は入所して相談・指導を受ける場合を前提とすること。

3 指導要録の様式等について

上記の取扱いの際の指導要録の様式等については,平成22年5月11日付け22文科初第1号「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について」のとおりとする。

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別添2

児童生徒理解・教育支援シートの作成と活用について

○児童生徒理解・教育支援シートとは

児童生徒理解・教育支援シートとは、不登校児童生徒一人一人の状況を的確に把握し、当該児童生徒の置かれた状況を関係機関で情報共有し、組織的・計画的に支援を行うことを目的として、学級担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を中心に学校が組織的に作成するものです。

これまでも児童生徒の状況に合わせた様々な支援計画書が学校現場で作成・利用されてきたところですが、一つの学年だけで利用され、上の学年に引き継がれる仕組みがなかったり、学校の中でのみ共有され、関係機関との役割分担がうまくいかなかったりすることが多く、一貫した支援が行われていないこともありました。

不登校には様々な要因・背景があり、教育のみならず、福祉、医療等の関係機関が相互に連携協力して支援を行うことが必要であり、中長期的な視点で一貫した支援を行うことが求められます。また、児童生徒の抱える背景や状況が複雑で、登校し始めても、再度不登校の状態になることもあるため、小学校から高等学校までの間、以前の情報が共有されることは非常に重要です。

児童生徒理解・教育支援シートを活用することで、不登校児童生徒の支援に必要な情報を集約し、それに基づく支援計画を学校内や関係機関で共通理解し、さらに、そのシートを校種間で適切に引き継ぐことによって多角的な視野に立った指導体制が構築できるようになります。こうすることで児童生徒やその保護者にとっても、「担当者が変わるたびに同じことを説明しなければならない」といった問題を減少させることが期待できます。そのため、教育委員会又は学校においては、「児童生徒理解・教育支援シート(試案)」をモデルとして、各学校においてシートの記載項目等をカスタマイズするなど、実態に合わせた形で実践的に使用していくことが望まれます。

○作成の対象、時期

基本的には連続又は断続して30日以上欠席した児童生徒のうち、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にある者について作成することが望まれます。なお、不登校児童生徒への支援は、早期から行うことが重要であり、予兆への対応を含めた初期段階から情報を整理し、組織的・計画的な支援につながるようにする必要があります。そのため、30日という期間にとらわれることなく、前年度の欠席状況や、遅刻、早退、保健室登校、別室登校等の状況を鑑みて、早期の段階からシートを作成することが望まれます。以上のことから、それぞれの地域の実態に合わせて、教育委員会又は中学校区単位で、作成開始等の基準を設定し、地域として組織的に支援が行えるようにすることが重要です。

また、学校においては、指導要録や出席簿のほか、特別な教育的支援を必要とする児童生徒に対する「個別の教育支援計画」や外国人児童生徒に対する指導計画等、児童生徒の課題の状況によって様々な表簿や支援計画が作成されています。それらの基本的情報は共通した内容もあると考えられますので、シートの作成に当たっては、校務の効率化の観点から、現在整備が促進されている「統合型校務支援システム」も活用し、記載内容が連動する仕様とすることで、共通する内容の記述を反映させるなど、作成に係る業務を効率化することも重要です。

加えて、学級担任は、教務日誌等を利用して、学級内の全ての児童生徒に関して日常的に状況を把握していると思います。児童生徒の気になった点について、他の教諭等からの情報も含めて記録してあれば、児童生徒理解・教育支援シートを作成するに当たって重要な情報となります。こうした観点から、教務日誌等を個人のメモではなく、組織として共有できる形で適切に保管しておくことは、負担を大きく増すことなく必要な情報が必要な時に得ることができ、継続的な支援を行うための手立ての一つとなります。同様に、保健室での保健日誌等も体調不良や相談で訪れた児童生徒の様子が記録されており、支援に当たって大きな手掛かりとなり、児童生徒によっては相談室や学校図書館が主な居場所となっている場合もあるため、気になる児童生徒について、各担当者が記録し、組織として情報を共有していくことが大切です。

なお、支援の結果、児童生徒が継続的に登校できるようになった場合においても、月別の遅刻、早退、欠席等の状況を継続して記録し、引き継いでいくことが、一貫した支援を行う上で大切です。

○内容

児童生徒理解・教育支援シートは、支援に関する情報を集約し、引き継いでいくものであるため、複数の関係者が正確な情報を共有できるようにすることが必要です。そのため、主観的な判断を避け、客観的な事実を記載するということが重要となります。また、具体的な支援計画を立てる根拠となったアセスメントについては、児童生徒の状態の全体像をつかむための大きな情報となるため、複数回アセスメントを実施した場合はその推移を記載しておくと、協議会等の際に一目で児童生徒の傾向を把握することができます。

〈共通シート〉

共通シートは、支援全体を通して利用・保存される不登校児童生徒本人の基本情報を記入するものです。そこには、遅刻・早退等の不登校に至る前兆や、本人の状態等について記入し、見立てを行う上で必要な情報を学校内で又は関係機関との間で共有できるようにすることがポイントです。

〈学年別シート〉

学年別シートは、対象となる児童生徒の状況を随時追記し、具体的な支援の計画を記入するものです。細かい欠席状況や、本人の学習・健康状況等を記載することで、継続的に本人の変化を把握します。また、関係機関と協議の上決定した支援方針とその実施状況を記入することで、支援状況の変遷を一覧できるようにします。これらにより、一貫して計画的な支援を行うことができるようにすることがポイントです。

また、不登校児童生徒の支援に関しては、次の学年でも引き続き行っていくことが重要となるため、当該学年での支援結果の評価を明確にしておくことが求められます。評価を行い、次年度における留意点等をまとめておくことで、担任・担当者が変わっても、継続して支援を行うことができます。

〈ケース会議・検討会等記録シート〉

ケース会議・検討会等記録シートは、本人・保護者・関係機関の支援に関連する協議結果をその都度記入・加筆するものです。

本人がどのような状況でどのような支援を望んでいるのか、保護者の希望を直接記入してもらったり、面談等で聞き取ったりして、記入・加筆していきます。本人・保護者の思いをできるだけそのまま残していくことを基本として、漠然としたニーズについても丁寧に拾い上げて、支援内容を導き出していくことが重要です。

関係機関との連携については、実際に連携した機関と個別にやりとりしたことも記録することで、他の機関とも共有できる形にしておくことで、支援者全体で状況を共通認識することに役立ちます。支援を開始するために初めて連絡を取るのでなく、普段から情報をやりとりし、お互いの業務について共通認識できるようにしておくことが重要です。そして、普段のやりとりの中で、それぞれの機関から得た情報などは、あらかじめケース会議・検討会等記録シート等を利用して記入・蓄積しておき、支援計画作成の際に活用します。

また、ケース会議・検討会等において、その都度支援計画の進捗状況を確認し、その場で合意・確認できた事項について、記録しておくことで、参考となるエピソードを集積し、支援の質を高めることにつながります。

なお、学年別シートや共通シートが作成される前にケース会議などが持たれた場合には、このケース会議・検討会等記録シート単独でも積極的に活用し、保存するようにします。こうすることで、不登校の状態になる前の当該児童生徒の情報が確認でき、より的確な要因の把握につながります。

○引継ぎ

学校や担当者が変わっても、不登校児童生徒一人一人が受けていた支援は、引き続き一貫して行われなければなりません。しかし、当該児童生徒や保護者の立場からは、進学や転学に当たって、前の学校の情報が引き継がれることに不安を感じるかもしれません。そのため、学校は、児童生徒や保護者に対して、児童生徒理解・教育支援シートが児童生徒の評価に利用されるものではないことや学校における守秘義務等について十分に説明をして、不安感を取り除くとともに、支援を通じて信頼関係を築き、児童生徒理解・教育支援シートを活用することで、組織的計画的な支援が可能となり、結果として児童生徒の生活を豊かにすることにつながることを理解してもらうことが大切です。

また、設置者が異なる中学校から高等学校、公立学校から私立学校等で引継ぎを行うことは、個人情報の保護への配慮等からためらわれる場合があるかもしれません。しかし、児童生徒理解・教育支援シートの引継ぎを適切に行い、支援計画の評価や見直しを繰り返しながら継続して支援していくことで、不登校児童生徒一人一人を支援するネットワークができ、学校だけで抱え込まない体制の整備につながります。そのためにも、不登校児童生徒の支援に必要な事項については適切に引継ぎを行うことが大切であり、進学先や転学先への引継ぎについては、原則として、当該児童生徒や保護者の同意を得る必要があります。

なお、引継ぎに関しては、共通シートのみならず、全てのシート(学年別シート、ケース会議・検討会等記録シート)を引き継ぐことが重要であり、また、単に児童生徒理解・教育支援シートの写しを渡すだけではなく、個別に情報交換をする場を設けるなど、責任を持って引継ぎを行う必要があります。また、児童生徒理解・教育支援シートの引継ぎに当たっては、保護者や関係者に十分内容を説明した上で、個人情報の取扱いや、関係機関等と共有する情報の範囲、守秘義務等について共通理解を図る必要があります。

○個人情報の保護(学校間における情報の引継ぎ)

不登校児童生徒への支援においては、一旦欠席状態が長期化すると、その回復が困難である傾向が示されており、継続した組織的な支援が重要です。そのため、一度不登校傾向が見られた児童生徒については、進学・転校後も不登校傾向が続く可能性がある場合が少なくなく、当該児童生徒の状況等については進学・転学先の学校へ適切に引き継ぎ、継続的・組織的支援を図っていく必要があります。また、不登校児童生徒が進学・転校先の学校でも不登校傾向が続いた場合には、本人から「本人に係る情報」を確認するのは難しく、進学・転校先において当該児童生徒のための適切な支援等が行うことができないことも考えられます。したがって、不登校児童生徒を継続的・組織的に支援していくためには、進学・転校したら終わりというのではなく、進学・転校先の学校が承知しておくべき情報については適切に引き継ぎ、双方の学校が連携して当該不登校児童生徒の支援に当たることが必要です。

個人情報保護の観点からどこまで不登校児童生徒の情報を引き継げるかについては、適用される関係法令に基づき各学校等が判断することとなります。基本法として、「個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第57号)があります。個人情報の保護に関する法律は、民間である私立学校・株立学校等に適用され、また、公立学校には、当該学校を設置する地方公共団体の個人情報保護条例が、国立学校には「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」(平成15年法律第59号)が適用され、個人情報を第三者へ提供する際には本人の同意を得ることが原則とされています。そのため、シートの作成や支援計画の策定、関係機関での個人情報の共有(提供)については、当該児童生徒やその保護者の同意の下に行うことが必要です。しかし、本人・保護者と連絡が取れない、本人・保護者が第三者への提供を拒否するなど、本人・保護者の同意を得ることが困難な場合であっても、不登校児童生徒への継続的・組織的な支援の観点から、進学・転校先への情報共有(提供)が必要となります。その場合の個人情報保護の取扱いに関しては、設置者別に以下の対応が考えられます。

<公立学校>

公立学校については、各地方公共団体によって個人情報保護条例の内容が異なることから、第三者提供の原則禁止の例外についての規定ぶりを確認する必要があります。また、条例の解釈はあくまで当該地方公共団体が行うものですが、仮に、行政機関の保有する個人情報保護に関する法律第8条(参考①参照)と同様の規定ぶりを有する条例の下では、公立学校が公立学校又は国立学校に、不登校児童生徒への継続的・組織的な支援のために、必要不可欠な範囲で情報を提供することは、一般に、社会通念上客観的にみて合理的な理由があるものと認められ、同法第8条第2項第3号に相当する規定の「相当な理由のあるとき」に該当し、また、私立学校・株立学校に同様の情報を提供することは、一般に同項第4号に相当する規定の「本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当し、本人や保護者の同意を得ることが困難であっても、第三者提供の原則禁止の例外として認められるとも考えられます。ただし、繰り返しになりますが、条例の解釈はあくまで当該地方公共団体が行うことになりますので、後述の国立学校や私立学校等の場合の例も参考にしつつ、各地方公共団体・各学校において適切に対応することが必要です。

また、私立学校・株立学校への情報提供については、条例によっては個人情報保護審議会の意見を聴取することが必要とされている場合もあるため、その規定ぶりをよく確認した上で、適切な手続をとることが必要です。

<国立学校>

国立学校について、国立学校又は公立学校に、不登校児童生徒への継続的・組織的な支援のために必要不可欠な範囲で情報を提供することは、上記と同様に、一般に、社会通念上客観的にみて合理的な理由があるものと認められ、独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律第9条第2項第3号(参考②参照)の「相当な理由のあるとき」に、私立学校・株立学校に、同様の情報を提供することは、同項第4号の「本人以外の者に情報を提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当すると考えられることから、第三者提供の原則禁止の例外として認められると考えられます。

<私立学校・株立学校>

私立学校及び株立学校について、他の学校に不登校児童生徒への継続的・組織的な支援のために必要不可欠な範囲で情報を提供することは、「○個人情報の保護(学校間における情報の引継ぎ)」に記載する観点等に鑑みて、個人情報の保護に関する法律第23条第1項第3号(参考③参照)により、第三者提供の原則禁止の例外として認められると考えられます※。この点、文部科学省所管事業分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成27年8月31日文部科学省告示第132号)(参考④参照)においても、第三者提供の制限に関する例外として、「公衆衛生の向上又は子供・若者の健やかな育成等の推進のために、特に個人データを第三者に提供する必要がある場合に、本人の同意を得ることが困難であるとき」とされています(注)。

<留意点>

なお、引き継ぎについては、前述のとおり、あくまでも本人・保護者の同意を得ることが原則であり、引き継ぎを望まない場合であっても、その理由を聞きつつ、引き継ぐことの利点や、どの程度の内容であれば引き継ぐことが可能かについて話し合うなど丁寧に対応することが求められます。同意を得る努力をしないまま安易に引き継ぐことは適切ではないことに留意が必要です。

また、情報の引き継ぎについて、本人・保護者の同意を得る際には、本人・保護者に対して、提供しようとする情報の内容を具体的に示すことが必要です。

○個人情報の保護(民間施設等への情報提供)

不登校児童生徒が、学校外の民間施設等を利用する場合には、一定の情報を適切に提供し、学校及び民間施設等双方が連携して当該不登校児童生徒の支援に当たることが効果的と考えられるケースもあります。その際、当該民間施設等において、守秘義務を負っているか否かをあらかじめ確認し、それを当該児童生徒や保護者に十分説明した上で、その個人情報の提供について同意を得ることが望ましいと考えられます。

○保存

児童生徒理解・教育支援シートは、条例や法人の各種規程に基づいて適切に保存されるものですが、出席の状況等指導要録の記載内容と重なる部分もあることから、指導要録の保存期間に合わせて、5年間保存されることが文書管理上望ましいと考えられます。

※当該私立学校及び株立学校が、個人情報の保護に関する法律に規定する「個人情報取扱事業者」に該当する場合。

(注)

個人情報の保護に関する法律及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の一部を改正する法律(平成27年9月3日成立・同月9日公布)の施行が平成29年春頃に予定されており、その施行に伴い、文部科学省所管事業分野における個人情報保護に関するガイドライン(平成27年8月31日文部科学省告示第132号)が廃止され、全ての事業分野に適用される汎用的な「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」が発出される予定です。

(参考)

① 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(抄)

(平成十五年五月三十日法律第五十八号)

(利用及び提供の制限)

第八条 行政機関の長は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。

2 前項の規定にかかわらず、行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。

一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。

二 行政機関が法令の定める所掌事務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。

三 他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。

四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

3 前項の規定は、保有個人情報の利用又は提供を制限する他の法令の規定の適用を妨げるものではない。

4 行政機関の長は、個人の権利利益を保護するため特に必要があると認めるときは、保有個人情報の利用目的以外の目的のための行政機関の内部における利用を特定の部局又は機関に限るものとする。

② 独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律(抄)

(平成十五年五月三十日法律第五十九号)

(利用及び提供の制限)

第九条 独立行政法人等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。

② 前項の規定にかかわらず、独立行政法人等は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができる。ただし、保有個人情報を利用目的以外の目的のために自ら利用し、又は提供することによって、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められるときは、この限りでない。

一 本人の同意があるとき、又は本人に提供するとき。

二 独立行政法人等が法令の定める業務の遂行に必要な限度で保有個人情報を内部で利用する場合であって、当該保有個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき。

三 行政機関(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十八号。以下「行政機関個人情報保護法」という。)第二条第一項に規定する行政機関をいう。以下同じ。)、他の独立行政法人等、地方公共団体又は地方独立行政法人に保有個人情報を提供する場合において、保有個人情報の提供を受ける者が、法令の定める事務又は業務の遂行に必要な限度で提供に係る個人情報を利用し、かつ、当該個人情報を利用することについて相当な理由のあるとき

四 前三号に掲げる場合のほか、専ら統計の作成又は学術研究の目的のために保有個人情報を提供するとき、本人以外の者に提供することが明らかに本人の利益になるとき、その他保有個人情報を提供することについて特別の理由のあるとき。

③ 個人情報の保護に関する法律(抄)

(平成十五年五月三十日法律第五十七号)

(第三者提供の制限)

第二十三条 個人情報取扱事業者は、次に掲げる場合を除くほか、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはならない。

一 法令に基づく場合

二 人の生命、身体又は財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

三 公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき。

四 国の機関若しくは地方公共団体又はその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき。

④ 文部科学省所管事業分野における個人情報保護に関するガイドライン(抄)

(平成二十七年八月三十一日文部科学省告示第百三十二号)

第7 個人データの第三者提供に関する義務

(2) 第三者提供の制限に関する例外(法第23条第1項関係)

以下の1.~4.のいずれかに該当する場合は、(1)の規定にかかわらず、個人データを第三者に提供することができる。

3.公衆衛生の向上又は子供・若者の健やかな育成等の推進のために、特に個人データを第三者に提供する必要がある場合に、本人の同意を得ることが困難であるとき

○切れ目のない組織的な支援を行うためのシート作成プロセス

画像

(別添3)

民間施設についてのガイドライン(試案)

このガイドラインは,個々の民間施設についてその適否を評価するという趣旨のものではなく,不登校児童生徒が民間施設において相談・指導を受ける際に,保護者や学校,教育委員会として留意すべき点を目安として示したものである。

民間施設はその性格,規模,活動内容等が様々であり,民間施設を判断する際の指針をすべて一律的に示すことは困難である。したがって,実際の運用に当たっては,このガイドラインに掲げた事項を参考としながら,地域の実態等に応じ,各施設における活動を総合的に判断することが大切である。

1 実施主体について

法人,個人は問わないが,実施者が不登校児童生徒に対する相談・指導等に関し深い理解と知識又は経験を有し,かつ社会的信望を有していること。

2 事業運営の在り方と透明性の確保について

① 不登校児童生徒に対する相談・指導を行うことを主たる目的としていること。

② 著しく営利本位でなく,入会金,授業料(月額・年額等),入寮費(月額・年額等)等が明確にされ,保護者等に情報提供がなされていること。

3 相談・指導の在り方について

① 児童生徒の人命や人格を尊重した人間味のある温かい相談や指導が行われていること。

② 情緒的混乱,情緒障害及び非行等の態様の不登校など,相談・指導の対象となる者が当該施設の相談・指導体制に応じて明確にされていること。また,受入れに当たっては面接を行うなどして,当該児童生徒のタイプや状況の把握が適切に行われていること。

③ 指導内容・方法,相談手法及び相談・指導の体制があらかじめ明示されており,かつ現に児童生徒のタイプや状況に応じた適切な内容の相談や指導が行われていること。また,我が国の義務教育制度を前提としたものであること。

④ 児童生徒の学習支援や進路の状況等につき,保護者等に情報提供がなされていること。

⑤ 体罰などの不適切な指導や人権侵害行為が行われていないこと。

4 相談・指導スタッフについて

① 相談・指導スタッフは児童生徒の教育に深い理解を有するとともに,不登校への支援について知識・経験をもち,その指導に熱意を有していること。

② 専門的なカウンセリング等の方法を行うにあっては,心理学や精神医学等,それを行うにふさわしい専門的知識と経験を備えた指導スタッフが指導にあたっていること。

③ 宿泊による指導を行う施設にあっては,生活指導にあたる者を含め,当該施設の活動を行うにふさわしい資質を具えたスタッフが配置されていること。

5 施設,設備について

① 各施設にあっては,学習,心理療法,面接等種々の活動を行うために必要な施設,設備を有していること。

② 特に,宿泊による指導を行う施設にあっては,宿舎をはじめ児童生徒が安全で健康的な生活を営むために必要な施設,設備を有していること。

6 学校,教育委員会と施設との関係について

児童生徒のプライバシーにも配慮の上,学校と施設が相互に不登校児童生徒やその家庭を支援するために必要な情報等を交換するなど,学校との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。

7 家庭との関係について

① 施設での指導経過を保護者に定期的に連絡するなど,家庭との間に十分な連携・協力関係が保たれていること。

② 特に,宿泊による指導を行う施設にあっては,たとえ当該施設の指導方針いかなるものであっても,保護者の側に対し面会や退所の自由が確保されていること。

(別添4)

教育支援センター整備指針(試案)

1 趣旨

○ 教育委員会は,教育支援センター(以下「センター」という。)の整備に当たって,この指針の定めるところに留意し,不登校児童生徒に対する適切な支援を行わなければならない。

2 設置の目的

○ センターは,不登校児童生徒の集団生活への適応,情緒の安定,基礎学力の補充,基本的生活習慣の改善等のための相談・指導(学習指導を含む。以下同じ。)を行うことにより,その学校復帰を支援し,もって不登校児童生徒の社会的自立に資することを基本とする。

3 自己評価・情報の積極的な提供等

○ センターは,その目的を実現するため,その相談・指導,その他のセンターの運営状況について改善・充実を図るとともに,自ら点検及び評価を行い,その結果を公表するよう努めるものとする。

○ センターは,その相談・指導,その他のセンターの運営の状況について,保護者等に対して積極的に情報を提供するものとする。

4 対象者

○ 入室や退室等に関する方針や基準が明らかにされていること。

○ 不登校児童生徒の入退室等の決定については,その態様等を踏まえ,センターにおける指導の効果が達せられるよう児童生徒の実情等の的確な見立て(アセスメント)に努めるものとする。その際には,当該児童生徒が在籍する学校関係者はもとより,専門家を含めて検討を行うことが望ましい。

○ 必要に応じて,中学校を卒業した者についても進路等に関して主として教育相談等による支援を行うことが望ましい。

5 指導内容・方法

○ 児童生徒の立場に立ち,人命や人格を尊重した人間味のある温かい相談・指導を行う。

○ 相談に関しては,共感的な理解に立ちつつ,児童生徒の自立を支援する立場から実施する。

○ 各教科等の学習指導に関しては,在籍校とも連絡をとり,センター及び児童生徒の実情に応じて実施する。

○ 指導内容は,児童生徒の実態に応じて適切に定め,個別指導と併せて,センター及び児童生徒の実情に応じて集団指導を実施するものとする。その際,児童生徒の実情に応じて体験活動を取り入れるものとする。

○ 家庭訪問による相談・指導は,センター,地域,児童生徒の実情に応じて適切に実施することが望ましい。通所困難な児童生徒については,学校や他機関との連携の下,適切な配慮を行うことが望ましい。

○ センターは,不登校児童生徒の保護者に対して,不登校の態様に応じた適切な助言・援助を行うものとする。

6 指導体制

○ センターには,相談・指導などに従事する指導員を置くものとする。

○ 指導員は,通所の児童生徒の実定員10人に対して少なくとも2人程度置くことが望ましい。

○ 指導員には,相談・指導,学習指導等に必要な知識及び経験又は技能を有し,かつその職務を行うに必要な熱意と識見を有する者を充てるものとする。

○ 教育委員会は,指導員の資質向上のため適切な研修の機会を確保するよう努めることとする。

○ カウンセラーなどの専門家を常勤又は非常勤で配置し,児童生徒の指導方針等につき,協力を得ることが望ましい。

○ その他,年齢,職種等,多様な人材の協力を得ることが望ましい。その際,協力を得る人材の実情に応じ,適切な研修を行い,又は指導体制等を整えることが望ましい。

7 施設・設備等

○ 施設・設備は,相談・指導を適切に行うために,保健衛生上,安全上及び管理上適切なものとする。

○ センターは,集団で活動するための部屋,相談室,職員室などを備えることが望ましい。

○ センターは,運動場を備えるなどスポーツ活動や体験活動の実施に関する配慮がなされていることが望ましい。適切な施設を有しない場合は,積極的に他のセンター等と連携することが望ましい。

○ センターでの個別学習や,家庭との連絡のため,必要な情報通信機器・ネットワークが整備されていることが望ましい。

○ センターには,相談・指導を行うため,児童生徒数に応じ,保健衛生上及び安全上必要な教具(教科用図書,学習ソフト,心理検査用具等)を備えるものとする。また,これらの教具は,常に改善し,補充するよう努めなければならない。

8 学校との連携

○ 指導員等は,不登校児童生徒の態様に応じ,その支援のため,在籍校との緊密な連携を行うものとする(定期的な連絡協議会,支援の進め方に関するコーディネート等の専門的な指導等)。

○ 指導員等は,不登校児童生徒の学校復帰後においても,必要に応じて在籍校との連携を図り,継続的に支援を行うことが望ましい。

○ 指導員等は,児童生徒の実情等の的確な見立て(アセスメント)にそった児童生徒の個々の回復状況を把握し,守秘義務に配慮した上で,本人,保護者の意向を確かめて在籍校に学習成果等を連絡するものとする。

○ 指導員等は,不登校に関し,学校に対する専門的な指導・助言・啓発を行う。

9 他機関・民間施設・NPO法人等との連携

○ センターは,教育センターや社会教育施設などの教育機関や児童相談所,警察,病院,ハローワーク等の関係機関との連携を適切に図り,不登校に関する地域ぐるみのサポートネットワークづくりに努めるものとする。

○ センターは,不登校関係の民間施設,NPO法人等との連携・協力を適切に図ることが望ましい。

○ 民間施設との連携については国が示している「民間施設についてのガイドライン」等に留意するものとする。

10 教育委員会の責務

○ 教育委員会は,前各項の趣旨が達せられるよう,教育委員会規則の制定や指導体制の充実等,センターの整備に関し必要な方策を講じなければならない。

○ 教育委員会は管轄地域以外のセンターの連携・協力関係が,適切に図ることができるよう配慮しなくてはならない。

不登校児童・生徒への支援の在り方について

平成28年10月26日 教指企第827号

(平成28年10月26日施行)

体系情報
指導部指導企画課
沿革情報
平成28年10月26日 教指企第827号