無形民俗文化財の再興に向けて

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三宅島には、2000年の噴火による全島避難により途絶えてしまっている無形民俗文化財が二つあります。

これらの民俗芸能の再興に向けた、担い手である神社神職らを中心とした取り組みについて紹介します。

1.「御笏神社の神事」昭和32年2月21日指定 東京都無形民俗文化財(民俗芸能)

毎年10月10日に、三宅島の神着地区にある御笏神社で大祭が行われ続けていますが、祭式の中でかつてみられた舞などの神事芸能は、帰島後も休止中であり、「小神楽」の奉納のみが行われていました(小神楽は、古風をのこした、三宅島特有の神楽で、「大神楽」を短縮したものです。東京都指定無形民俗文化財「富賀神社の巡り神輿」や、元旦祭などでも行われています。)。また、令和5年からは月次祭が再興され、小神楽が行われています。 

令和6年10月10日の大祭では、神職と巫女による「大神楽」のさ再興が試みられました。やや短縮した形ではありますが、20分程かけて、伊豆諸島の島々の名と神々の名が出てくる歌詞をうたい、それに合わせて巫女が鈴をならしながら回転を繰り返すという、古風な芸能です。神楽は、伊豆諸島の神話である「三宅記」(三嶋大明神縁起)の内容にも通じる歌詞も特徴的です。

令和7年10月10日の大祭では、この文化財の中心的な四つの舞のうち「神鍋舞(かんなべまい)の一部が実施されました。その他の舞についても、令和元年頃に練習を開始しています。平安時代の面影を残すといわれる歌舞であり、映像資料などからの再現が可能と考えられていますが、完全な再興のためには、過去の音源の調査や祭式の時間延長、祭具の整備等の調整が必要です。担い手の育成を含め、研究者らの協力も仰ぎながら、様々な課題について検討がなされています。

 

 

 

 

 

 

 

大神楽(令和6年10月10日御笏神社撮影)

 





  

 

 

神鍋舞(令和7年10月10日三宅村教育委員会撮影)

 

2.「御祭神社の神事」昭和32年2月21日指定 東京都無形民俗文化財(民俗芸能)

令和7年1月8日、三宅島伊豆地区にある御祭神社と薬師堂との前にある庭において、神職が「小神楽」を奉納しました。1月7日に「お太刀様」が島を一周する「若菜祭」は全島避難からの帰島後も、例年行われていますが、翌日の1月8日に御祭神社と薬師堂にて行われていた「八日様」と呼ばれる行事は途絶えてしまいました。 

いくつかの神事や舞や儀礼から構成される盛大な祭りであった八日様の全体をすぐに蘇らせることは困難であるため、まずはこの日に行われていた神事の一部である「小神楽」を奉納することを再興への礎にしようと試みている中で、敷地内の安全確保と整備などの課題も出てきています。

「小神楽」自体は、島内の他の祭りでも奉納し続けられていますが、八日様の日に奉納する歌詞には特有のものがあるという記録に基づき、執り行われています。

 


 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

小神楽奉納と神事(令和7年1月8日見学者撮影)

 

令和7年度の活動状況につきましては三宅島の神社 公式ホームページにも紹介されています

 

 

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