都立図書館改革の具体的方策(概要版)
- 更新日
東京都教育委員会は、これからの都立図書館の役割及び新しいサービスのあり方を検討するため、平成16年10月に「第二次都立図書館あり方検討委員会」を設置し、昨年8月、「都立図書館改革の基本的方向」を公表しました。その後この報告書を基に、図書館改革を推進するために検討を重ね、このたび「都立図書館改革の具体的方策」をとりまとめました。
第1部 都立図書館改革の基本的考え方
1 都立図書館改革の必要性
都民の抱える課題の解決を支援するためには、以下の点で都立図書館改革が必要です。
- 都民ニーズの高い分野に重点を置いた情報サービスの提供
- 電子資料の活用と情報化への対応
- 「待ち」の姿勢から積極的な情報発信へ
- 都立図書館と区市町村立図書館との役割分担の明確化
2 都立図書館改革の経緯
- 平成14年1月 「(第一次)都立図書館あり方検討委員会」報告
- 平成17年8月 「第二次都立図書館あり方検討委員会」報告
- 平成18年3月 東京都立図書館協議会答申
「調査研究図書館におけるサービスのあり方について」 - この間、広く都民の皆様や都議会、区市町村からご意見をいただきました。
3 都立図書館改革の取組み方針
- 図書館サービスの新たな展開
- 利便性の高いサービスの実施
- インターネットの活用
- 都の行政施策との連携
- 区市町村立図書館との連携・協力
- 組織・業務運営の見直しと人材の育成
第2部 都立図書館改革の具体的な取組み
第1章 都立図書館サービスの新たな展開
1 重点的情報サービスの推進
都民ニーズの高い分野に重点を置いた情報サービス(重点的情報サービス)として、都市に関する情報と、都民や企業等の活動を支援する情報等を提供し、都民の課題解決を支援します。
(1)都市に関する情報の提供
- 都市産業
- 都市環境
- 都市文化・世相
(2)都民及び企業等の活動の支援
- 経済活動情報
- 健康・医療情報
- 法律情報
- 児童・青少年サービス
2 「東京マガジンバンク」の創設
一般雑誌から学術雑誌まで広範な雑誌を提供する「東京マガジンバンク」(仮称)を創設し、身近な話題から世界的なニュース、専門的領域の動向まで、都民のさまざまな関心に応えます。
3 タイムリーな企画展等の実施
都立図書館の蔵書・サービス内容等を広く周知し、都民がより一層活用できるように、タイムリーで魅力的なイベントを、効果的に実施します。
第2章 利便性の高いサービスの実施
1 ワンストップサービスの導入と利用しやすい蔵書配置
総合レファレンスカウンターの設置等により、各種サービスを1ヶ所あるいは1回の手続きで提供するワンストップサービスを実施するとともに、利用しやすい蔵書配置にして開架冊数を増やす等、利用者の立場に立った迅速かつ適切なサービスの提供を目指します。
2 蔵書の充実
重点的情報サービスの各分野に係る資料及び「東京マガジンバンク」(仮称)創設に必要な雑誌の収集を行い、蔵書の充実を図ります。
また、蔵書内容を検証するため、外部評価を導入します。
第3章 インターネットを活用した情報サービスの推進
1 オンラインデータベースの活用
- オンラインデータベースの利用者への提供
2 インターネット利用環境の改善
- インターネット接続パソコンの増設
- 館内無線LANの利用範囲の拡大
3 メールを活用した情報発信
- メールマガジンの発行
- 新着図書情報サービスの構築
4 遠隔サービスの充実
- 全所蔵資料のOPAC公開(注1)
- ホームページからの複写申込み手続きのワンストップ化
- ホームページのコンテンツの充実
5 貴重資料の電子化の拡大と公開
- 貴重資料の電子化の拡大
- 江戸東京情報のデジタルコンテンツの作成
6 都庁Web情報の蓄積・公開
東京都公式ホームページの情報を収集・整理・保存し、「都庁Web情報の保存庫」として、都民が過去の都政情報にアクセスできるような仕組みづくりを目指します。
(注1)OPAC(Online Public Access Catalog)
オンライン閲覧目録。コンピュータを使って利用者が直接図書館の蔵書を検索するための目録。
第4章 都の行政施策との連携
1 都が設置する他の図書館等との情報の共有化
- 東京都関係の図書館等の横断検索システムの構築
- 協同レファレンスサービスの実施
- 資料の相互利用
2 子供の読書活動の推進
- 子供読書活動推進資料の作成・配布
- 区市町村立図書館等との連携事業の実施(子供読書活動報告会の開催等)
3 学校に対する教育活動支援
- 都立学校の児童・生徒の学習活動支援(資料提供、講師派遣)
- 都立盲・ろう・養護学校の読書活動支援(おはなし会、図書の紹介)
- 都立学校図書館支援(レファレンスサービス、研修)
4 政策立案支援サービスの充実
- 幅広い情報の収集と調査
- 政策立案に貢献する情報サービスの提供
- 効果的な情報収集の支援
第5章 区市町村立図書館との連携・協力
1 区市町村立図書館への新しい支援と連携・協力
東京都全域の図書館サービスのレベルアップに資するため、都内公立図書館の取組みについて最新の情報を収集するとともに、図書館運営に必要な調査・研究を進め効果的な支援を行っていきます。また、都立図書館は東京に関する情報センターとして、地域資料等に関する連携の仕組みづくりに取り組みます。
- 区市町村立図書館のサービスと運営への支援
- 「都内公立図書館地域資料総合目録データベース」(仮称)の作成
- 地域資料に関する協同レファレンスサービス
2 相互貸借の促進と協力貸出の見直し
都立図書館は、横断検索システムの構築等により都内公立図書館間の相互貸借の促進を進めてきました。今後、区市町村立図書館と協議しながら、相互貸借ルールの整備を行うとともに協力貸出の見直しを行い、東京都全体での資料の有効活用を目指します。
- 相互貸借の促進
- 協力貸出方針の見直し
- 費用負担・搬送方法の検討
- 収集・保存分担についての協議
第3部 都立図書館改革の基盤づくり
第1章 組織と業務運営の見直し
1 中央図書館と多摩図書館との機能分担の推進
中央図書館と多摩図書館は、都立図書館としての機能を分担し、それぞれ特色のあるサービスを展開します。
(1)中央図書館の果たす役割と機能
中央図書館は、今後とも都立図書館の中心館として、企画・運営等の統括機能を持つとともに、児童・青少年サービス及び「東京マガジンバンク」以外の業務を担当します。特に、東京に関する情報の提供、都民等の活動への情報支援について、機能強化を図ります。
(2)多摩図書館の機能
多摩図書館は、従来からの児童・青少年サービスに加え、「東京マガジンバンク」(仮称)を設置し、新たな雑誌サービスを展開します。
2 中央図書館における情報サービス体制の効率化
サービスカウンターを1ヶ所に集中するとともに、資料の再配置など新たな施設設備の整備を行い、より効率的なサービスが実施できるよう業務体制を見直します。
3 業務委託の推進
現在の司書の業務のうち、資料出納、定型的データ入力など非基幹的業務の委託範囲を拡大し、図書館運営の一層の効率化を進めるとともに、司書は基幹的な業務に専念し、図書館サービスの一層の高品質化を図っていきます。
4 収蔵対策
資料の保存に対する基本的な考え方を明確化し、短期的な取組みとして書架の増設、複本の除籍などにより、収蔵能力の向上を図ります。
- 中期的な収蔵対策(媒体変換の検討、書庫棟の建設)
- 長期的な収蔵対策(新館の建設)
5 利用者による費用負担
オンラインデータベースについては、利用者が自ら利用できる環境を整備します。その中で、高品質な情報サービスを提供するものについては、受益者負担の観点から原則として利用者に適正な費用負担を求めます。
6 ICタグの導入の検討
ICタグの技術・コスト等の動向を注視しつつ、図書館業務への活用を検討していきます。
7 図書館サービスの評価
サービスに関する指標及び数値目標を設定します。それらに基づき、図書館による自己点検・評価と、外部有識者等による第三者評価を行います。その結果を公表するとともに、都立図書館の運営に反映させて、サービス向上を図ります。
第2章 図書館を支える人材の育成と確保
1 職員が習得すべき能力・知識の明確化
都立図書館に働くすべての職員は、それぞれの職務に求められる能力・知識の研鑽に励み、一丸となってサービスの向上に努めます。特に司書は、今後習得すべき能力・知識を明確なものとしたうえで、その習得に取り組みます。
2 職務経験に応じた能力開発計画の策定
役割・担当に応じた能力開発の目標を明らかにし、必要な研修体系を整備することで、専門性の高い職員の育成を目指します。
3 専門職員の確保
平成19年度以降、「団塊の世代」の職員の大量退職が始まることから、司書の職務知識の継承を図り、都立図書館の新たな活性化につながるよう、将来の都立図書館を担う専門性の高い司書職員の確保に努めます。
第3章 国や他自治体との連携
1 国立国会図書館との連携
都立図書館は、国立国会図書館が運用している「レファレンス協同データベース」に積極的に参加し、連携・協力して、その充実に努めます。
2 近隣の県立図書館等との連携
東京都周辺の県立図書館等と、さまざまな会議等を通じて情報交換を行うなど、密接な連携を図っていきます。
3 日比谷図書館の地元区への移管
日比谷図書館については、千代田区へ移管する方針が決まっており、今後は円滑な移管に向けて、協議を進めていきます。