教員の職のあり方検討委員会報告
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教育庁
「これからの教員の任用制度について」 ~新たな職の視点から~
東京都教育委員会は、今後の東京都公立学校の教育職員等の「職のあり方と職に応じた処遇のあり方」を検討するため、平成18年4月に「教員の職のあり方検討委員会」を設置し、検討を重ねてきました。
このたび、職責・能力・業績をより適切に評価し処遇するという観点から、2級職(教諭)や管理職(校長等)の職の分化など、今後の教員の任用制度について改革の方向性を検討委員会の報告として、とりまとめましたので、お知らせします。
1 検討委員会報告書概要
1 教員の職をめぐる現状と課題
(1) 職層別の構成割合
教員の職層は4段階(校長、副校長、主幹、教諭・養護教諭)の簡素な構成となっており、しかも約85%が教育職員給料表の2級の適用を受ける教諭等の職に在職している。
(2)年功的・一律的な処遇
教員の給与は、一般の公務員と比べ、高い水準となっている。また、行政系職員が、選考により上位の職へ昇任し、職責に応じた水準の給与となるのに対して、2級の教諭等は生涯にわたり、より年功的・一律的に高い水準の給与となっている。
(3)職務の困難度・責任の度合いの違い
2級職の分化
教員の約85%が同一の教諭等の職にあるにも関わらず、実際には、職務の困難度や責任の度合いに、大きな違いがある。
管理職の職の分化
管理職(校長・副校長)についても、学校種別、指導困難校や進学指導重点校などの学校ごとの課題など、管理職が担う責任や困難度において、質的、量的に大きな違いが生じている。
1級職のあり方
1級職(実習助手及び寄宿舎指導員)の分化により新たに設置された、「専修実習助手」及び「主任寄宿舎指導員」の職については、その職務の困難度や責任の度合い等に応じた給与水準となるよう、見直しする必要もある。
授業力リーダー等の位置付け
東京教師道場で養成された授業力リーダー及び授業力スペシャリストの任用制度上の位置付け(複線型任用制度を視野に)
(4)教員の職責・能力・業績の重視
多様化、高度化する都民の公立学校教育への期待に、的確に応えていくためには、学校教育を担う教員一人ひとりの意欲を引き出し、資質・能力の一層の向上を図る必要がある。
そのためには、教員の職責・能力・業績を適切に評価し、処遇に的確に反映させていく制度を構築することが必要である。
2 2級職の分化
(1) 訪問調査の実施
2級職教諭等を「主任層」と「一般層」に分化 ⇒ 職の分化
目的
- 分化の指標等を得る。
実施内容
- 学校への訪問調査
- 区市町村教育委員会指導室課長等との意見交換
- 職務の困難度や資質・能力等における差異の実態
- 分化の起点とすべき経験年数等
(2)分化後のそれぞれの標準的な職務
主任層
- 一定の経験を積み、一般層としての資質・能力を十分に備え、求められる職務遂行のレベルを十分に満たしている。
- 幅広い視野に裏付けられた的確な児童・生徒理解を基に、実践的・効果的な指導を行うことができる。
- 分掌する校務について、的確に遂行できるとともに、主幹をサポートするなど、校務運営全体に貢献できる。
- 同僚や若手職員への助言や支援などの指導的役割が期待できる。
- 主任層としての役割と責任を自覚しており、円滑に職務を遂行するとともに、職務遂行能力向上のためのたゆまぬ努力を続けている。
一般層
- 教員として必要な資質・能力を備えている。
- 学級担任、教科担任等として、児童・生徒理解に努め、適切な指導を行うことができる。
- 分掌する校務について、支障をきたすことなく遂行できる。
- 自らの役割と責任を自覚しており、支障をきたすことなく職務を遂行できる。
(3)留意すべき点
1 10年経験者研修との整合性
- 教員として初任者段階から中堅段階に進む時期の資質向上を目的として、在職期間11年目に受講する研修を分化の起点と捉える。
2 国の動き
- 教職員給与のあり方等の総合的な検討を行い18年度中に結論を得るとしていること
- 教員免許更新制度の導入
3. 主幹・管理職選考との関係
- 昇任インセンティブの働く仕組み作り(主幹の予備選考的位置付けなど)
4 複線型任用制度の導入
- 授業力リーダーは、分化の起点とする10年経験者研修受講前でも「主任層」として位置付け
- 授業力スペシャリストの位置付け及び教職大学院派遣の現職教員の修了後の処遇は引き続き検討
5 選考基準の客観性・公正性・納得性の確保
- 客観性・公正性・納得性の高い選考を実施し、主任層」の統一的な資質・能力水準を確保
6 在職者の取扱い
- 制度導入時の大量の有資格者に対し、適正な能力を実証できる合理的選考を実施
(4)新たな教諭等の職の設置
- 2級職を分化し、特に高度の知識または経験を必要とする教諭等の職として、「主任教諭」(仮称)を設置
- 10年経験者研修受講時期(中堅段階に進む時期)に選考を実施し、「主任教諭」(仮称)へ任用
3 管理職の職の分化
職責及び能力に基づき校長等の職を分化
(1)分化の方向性
職責~困難度の高い校長等の職~
学校特性による区分
- 中等教育学校、小中一貫教育校、複数課程等の併置校、寄宿舎設置校等
- 地域事情や社会変化により、学校運営に克服すべき課題を生じている学校等
学校規模による区分
- 学級数・教職員数が多い大規模校
能力~能力の高い校長等~
- 経験豊富で、高い専門的知識を有し、若手管理職への指導・助言や地域における調整役を担うなど、困難度が高い職責を十分に果たすことができる校長等
(2)職の設置と位置付け
重要困難な校長級の職「統括校長」(仮称)の設置
- ポスト指定(指定数は厳格管理)
- 昇任・・・選考(業績評価等)による
副校長
困難度の高い学校には、複数配置等の対応
⇒職の分化の対象としない。
4 1級職のあり方
職の分化
1級職(実習助手・寄宿舎指導員)については、困難度の高い職務を果たす上位の職を分化済
実習助手 ⇒ 専修実習助手
寄宿舎指導員 ⇒ 主任寄宿舎指導員
処遇
「専修実習助手」及び「主任寄宿舎指導員」には高等学校教育職員給料表2級を適用
方向性
職務の困難度等に鑑みて、「専修実習助手」、「主任寄宿舎指導員」の処遇のあり方を適切に見直していく
5 今後の展開について
職の分化を含む職のあり方の方向性
留意点
- 給与制度検討委員会(第二次)報告で示された方向性「適正な給与水準への見直し」「適切な水準における給料表の一本化」
- 教職員給与や教員免許更新制導入をめぐる国の動き
- 都の行政系職員任用制度の動向
⇒関係機関と精力的に協議を重ね、制度として具体化
⇒職責・能力・業績より適切に評価 ⇒ 処遇
⇒学校教育を担う教員一人ひとりの意欲を引き出し、資質・能力の向上を図る。
2 検討委員会報告書
別紙「PDF [209.7KB]」のとおり
(教員の職のあり方検討委員会報告書 平成18年7月)