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第11回 東京都心身障害教育改善検討委員会(議事要旨)

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最終更新日:平成30年(2018)2月28日

1 日時

平成15年 9月19日(金曜日)  午後2時から午後5時

2 場所

東京都庁 第1本庁舎42階 特別会議室B

3 出席者 (以下25名・順不同・敬称略)欠席6名

上野委員長、大南副委員長、佐島委員、津田委員、吉澤委員、時任委員、越智委員、山内委員、石橋委員、野村委員、矢口委員、芦崎委員、川田委員、内藤委員、米谷委員、崎委員、吉田委員、坂田委員、齋藤(進)委員、 有留委員、斎藤(尚)委員、山際委員、臼井委員、石川委員、近藤委員、

4 議事内容

【1】開会

委員長あいさつ

【2】事務局より

(1)配布資料の確認 (2)傍聴希望者数の報告 (3)第10回委員会議事要旨について

【3】議事

「中間まとめに関する意見募集結果に基づく、検討課題の審議及び対応の方向について」

<委員長>

前回に続き、中間まとめに対する検討事項についての検討とともに、最終答申に向けた対応の方向について御審議を頂きたい。事務局より説明をお願いする。

<事務局>

委員会としての対応の方向について、共通する意見を4本の柱としてまとめた。その大きな4本の柱に対して、各々【対応の方向】を提示した。

第1の柱:中学校における特別支援教育体制に関する意見

(1)特別支援教室の在り方について
  • 都における特別支援教室の設置の在り方については、特別支援教育への移行の意義を踏まえつつ、これまでの固定の心身障害学級や通級指導学級が培ってきた教育の成果や対象となる児童・生徒や保護者のニーズを踏まえて検討していくことが大切である。
     例えば、固定的に教員を配置して相当の時間数の指導を行う特別支援教室を拠点的に設置する形態や、専門的な施設・設備を備えた特別支援教室を拠点的に配置し、必要に応じて児童・生徒が通うことができるようにする形態など、東京都の実情や児童・生徒のニーズに適切に対応できる柔軟な設置形態について検討していく必要がある。
  • 特別支援教室の標準的な施設規模や必要な設備、教室を確保できない場合の対応の在り方など、特別支援教室の設置にかかわる諸課題とその対応策等について、都としての「ガイドライン」を作成することも含めて、早急にモデル事業を実施し検証していく必要がある。
  • また、特別支援教育への移行に当たっては、通常の学級において児童・生徒同士が良好な人間関係を築くことができるよう、障害のない児童・生徒やその保護者等への理解啓発を図るなど、新しい制度に円滑に移行できる環境を計画的に整えていく必要がある。
(2)特別支援教室の教育内容・方法について
  • 特別支援教室で学ぶ児童・生徒の「個別指導計画」は、特別支援教室担当教員が中心となって作成することが望ましい。その際、特別支援教室担当の教員は、通常の学級の担任と十分な連携を図るとともに、保護者・本人の意向を十分に聞き取り、説明責任を果たすことが必要である。さらに、個別指導計画の実践と評価に当たっても、通常の学級の担任、保護者・本人の十分な理解と納得に基づき実施していく必要がある。
  • また、「個別指導計画」の作成・実施・評価に当たっては、児童・生徒一人一人の障害の状態に応じた適切な教育を行うため、必要に応じて外部の専門家や専門機関と連携を図り、指導内容・方法の充実に努める必要がある。
  • 特別支援教室における教育内容や指導方法については、固定の心身障害学級や通級指導学級におけるこれまでの教育成果等を踏まえ、児童・生徒一人一人の特別な教育的ニーズに適切に対応できる指導が必要である。
(3)教育ニーズへの対応について
  • 例えば、LD、ADHD、高機能自閉症の児童・生徒と知的障害のある児童・生徒の特別な教育ニーズはどのように異なるか、また、固定の学級でなければ成果が上がらない教育内容とはどのような事柄なのかといった点については十分な議論と実践的な研究が必要である。今後、小・中学校における特別支援教育体制の実施に関するモデル事業を実施する中で、これらの点について検証していく必要がある。
  • LD等を含む障害のある児童・生徒に対して柔軟な教育支援を行っていくためには、様々な選択肢が準備される必要がある。特別支援教室の設置形態や指導内容については、今後、都におけるLD児に関する研究の成果を踏まえ、実践的な研究を深めていく必要がある。
(4)条件整備について
  • 特別支援教育の移行に当たり、障害のある児童・生徒が通常の学級に在籍することは社会のノーマライゼーションの進展の観点から意義あることと考える。これを機会として、障害のある児童・生徒に対する理解推進をより一層進めていく必要がある。
    通常の学級における指導体制についても、アシスタント・ティーチャーや地域の学習ボランティアの導入等を検討するなど、現在ある社会資源を有効に利用することや新たな人材資源を開発することなどの工夫が求められる。また、盲・ろう・養護学校のセンター的機能の充実を図る中で、区市町村の小・中学校に対する支援策について検討していく必要がある。
  • 特別支援教育への移行に当たっては、これまでの心身障害教育とのかかわりが薄かった教職員や保護者、障害のない児童・生徒への理解啓発が重要である。今後、国の動向等を踏まえ、新たな制度に移行するまでの期間に、必要な理解啓発を計画的に行い、小・中学校の特別支援教育への円滑な移行に向けて、環境を整備する必要がある。
(5)校内組織体制の整備について
  • 特別な教育ニーズを有する児童・生徒の中には、特別支援教室における指導を必要としない程度の児童・生徒などがいることも想定されるため、校内委員会及び特別支援教育コーディネーターは、すべての小・中学校に置く必要がある。
  • 特別支援教育コーディネーターは、特別支援教育への知識や経験と理解のある教員や校内外の調整役、推進役としての能力のある教員などが担当することが望ましいと考える。
  • このため、特別支援教育に関する知識と経験を備えた特別支援教育コーディネーターの育成研修等のプログラムを早急に整えることが課題である。現在、国の委嘱を受けて実施されているモデル事業の成果や課題を踏まえ、校内体制の整備と特別支援教育コーディネーターの育成に計画的に取り組んでいく必要がある。
(6)特別支援教室における専門性について
  • 特別支援教育への移行に当たっては、これまでの心身障害教育において教員が個々に培ってきた障害種別の専門性を継続することはもとより、LD、ADHD、高機能自閉症と知的障害児の指導など、複数の障害に対応できる専門性を備えた教員の育成も必要である。
  • LD、ADHD、高機能自閉症児等の指導については、新たな専門分野として確立していく必要がある。今後、特別支援教育への移行に向け、専門的な知識と技能を備えた教員の計画的な育成等について、都と区市町村の役割分担や民間の研究機関との連携等を含めて検討する必要がある。

第2の柱:エリア・ネットワーク構想に関する意見

(1)エリア・ネットワークの考え方について
  • エリアの規模や配置等については、各エリアにおいて児童・生徒や保護者が適切な支援を受けることのできるよう、エリアが保有すべき機能等について、医療・保健、福祉、労働との関連など多角的な視点から実践的に研究し、都独自の在り方を検討する必要がある。
  • エリア・ネットワークの実効性を高めるためには、エリア全体をコーディネートできる機関や人材が必要である。
    そのため、各エリア内の盲・ろう・養護学校の中から、エリアの実情に応じて「センター校」を決定し、エリア内の自治体や小・中学校、保護者等のニーズを適切に把握し、エリア内の他の盲・ろう・養護学校や専門機関等との連携を図りながら対応していくことが重要であり、今後、モデル事業を実施する中でコーディネートの具体的な方法等について検証していく必要がある。
    都立盲・ろう・養護学校のセンター的機能については、LD、ADHD、高機能自閉症の教育内容・方法の充実についても、養護学校が地域の小・中学校等の教員を対象としてLD等の障害の理解に関する研修会を主催したり、専門家や専門機関に関する情報提供を行うなどのセンター機能を発揮する必要がある。
(2)特別支援プロジェクトについて
  • 特別支援プロジェクトは、各区市町村を単位として実施するものである。都教育委員会においては、国の委嘱により進めている「障害のある子供の教育相談体系化推進事業」(国分寺市)の成果を都内全域に還元するとともに、各区市町村におけるネットワーク構築の中核となるコーディネーター育成研修を実施している。今後は、都の実情を踏まえたモデル事業を実施するなどして、各区市町村におけるネットワークづくりをより一層支援していく必要がある。
(3)副籍について
  • 副籍の趣旨は、都立盲・ろう・養護学校に在籍する児童・生徒やその保護者が地域とのつながりを継続できるようにすることにある。
    そのための方法として、例えば、副籍校において所属学級を決定すること、運動会や学芸会、地域活動等の案内を行うこと、学校だよりや学級だより等を送付・交換することなど、初めは在籍校と副籍校の協力関係が図りやすい内容から実施することが望ましい。
    その上で、児童・生徒や保護者のニーズ、在籍校と副籍校の実情等に応じて、居住地交流を実施することも考えられる。
    実施に当たっての具体的な課題や対応策については、今後、モデル事業を検討する中で検証していく必要がある。

第3の柱:都立・ろう・養護学校の教育環境の整備に関する意見

(1)特別支援学校としての機能について
  • 複数の障害部門を併置するに当たっては、それぞれの障害部門の専門性を基盤とし、障害が重複する児童・生徒に対して必要に応じて、それぞれの専門性を生かした教育内容・方法の充実を図っていく必要がある。また、施設・設備についても、児童・生徒の安全面には十分に配慮したものとしていく必要がある。
  • 複数の障害部門を併置する学校の教育内容については、現在、都内に設置されている併置校における成果等を踏まえて検討していく必要がある。
  • 都立盲・ろう・養護学校における学校経営に当たっては、保護者に対する説明責任を果たし、十分な理解を得ることはもとより、専門家の意見を聞くなど、開かれた学校づくりに取り組む必要がある。
(2)適正規模・適正配置について
  • 学校の適正規模・適正配置については、聴覚障害教育推進構想の実現、知的障害養護学校における教室不足の改善、肢体不自由養護学校における通学負担の軽減、障害の多様化に対応した後期中等教育の充実等を目指し、都立盲・ろう・養護学校全体の再編の中で検討する必要がある。
  • また、盲・ろう・養護学校の再編は、聴覚障害教育推進構想や高校改革の実現によって統合される学校の活用など、既存の資源を有効に活用して効率的かつ計画的に実施するとともに、寄宿舎、生活訓練施設など既存の施設の在り方についても検討する必要がある。

第4の柱:学校の専門性・教員の専門性に関する意見

(1)学校の専門性・教員の専門性に関する意見について
  • 現職の教員を対象とした特殊教育教諭免許状取得のための認定講習の充実については、今後とも検討を進めていく必要がある。
  • 特別支援教育への移行に当たっては、これまで心身障害教育とのかかわりが薄かった教職員への研修の充実が重要である。今後、国の動向等も踏まえ、全面実施に移行するまでの期間に、必要な理解啓発を計画的に行っていく必要がある。
    また、ティーチング・アシスタント等として、LD等の障害のある児童・生徒にかかわる者についても、事前研修を実施するなどして基本的事項については周知徹底できる方法を検討する必要がある。
<意見・提言>   ○委員   △事務局
(1)小・中学校における特別支援教育体制に関する意見について
  • ○前回、保護者が理解していないと指摘したが、予算的な裏付けも国の方向性も不明な中で、この間の事務局の精力的な活動・努力に、最初に感謝し敬意を表したい。
  • ○1の柱の(1)特別支援教室の在り方についての、「対応の方向」は、(3)の、児童・生徒同士の良好な人間関係を築くなどが大事であるので、問題整理をして、これを最初にうたうべきある。
  • ○国からの提言を踏まえ、東京都として特別支援に対する概念定義、理解をしっかり固めるべきである。
  • ○具体的な人のこととか、予算のことがはっきりしないので、どういう形になっていくか具体的なことが見えない中で、たくさんの指摘があったのであろう。今後、障害の特性に応じたサービスを提供するに当たって、今日までの教育の継続性や整合性が具体的にどうなっていくかということである。
    また、一番のポイントは、コスト換算の基準がないことが問題である。人の配置についても国の方でも未提示であるが、東京都としては課題として残しながら、3、4年かけてその形について、検討していく必要がある。特別支援教室は、児童・生徒の人数、また、それに重みづけをして、人に換算していくシステムである。そこをはっきりさせるのが重要である。
  • ○盲・ろう・養護学校の保護者の間でも、不安感が増大している。この理念に基づいてどんな改革がなされようとしているのか、ガイドラインの読み方とかを分かりやすくする必要がある。
  • ○この改善検討委員会では、地に足のついた理念をしっかり出すことが必要である。その上で、現在の心身障害教育において、子供に対するサービスが低下することなく、尊重した上で柔軟なシステムをどう入れていくかである。システムの変換に当たっては、保護者の不安もあるので、いかにきちんとソフトランディングが実施されるかは、行政計画の実行にかかわってくる。そこに具体性とエネルギーを注ぐべきである。だが、本委員会は、行政計画を練る場ではない。基本的な方向を、理念の中で提案するというのが主要な役割である。
  • ○ソフトランディングとは、この会が最終的なまとめをするまでのソフトランディングなのか、特殊教育から特別支援教育に移行していく長いスパンのなかでの移行措置をソフトランディングというのかを、はっきりさせることが大切だ。この会合の立ち上げでは、現在の都立学校の現状は、早急に改善する必要があるということであった。それなら緊急的な課題については、実態に即して期日や見通しも明確にして改善策を出すべきだ。心身障害学級の中身については、全国的レベルで動き出している。コーディネーター等についても、校内委員会の立ち上げ等、モデル事業も始まっている。東京都でも、墨田区や稲城市で試行を始めている。それらの研究の成果を踏まえて決めていけば、心身障害学級の扱いについてはまだ十分間に合うと思う。
  • ○今議論しているところは、特別支援教室ということを中心にした部分である。ここはかなりいろいろな議論もあるので、丁寧な現状把握と、その水準を落とすことなく、大きな飛躍を目指してソフトランディングをやっていく必要がある。
  • ○特別支援教育は、実際に行うとなると、様々な課題が出ると思われる。柔軟な対応のできる教員を確保してほしい。
  • ○通常の学級と特別支援教室の担任が、良い関係を持たねばならない。あわせて、各学校にコーディネーターを置いて、その個別の指導を受けて、一人一人を見ていこうという理念の根幹がある。それが本当に子供のためにうまく運用されていくのかが重要である。
  • ○私の所にも、多くの方から手紙が寄せられた。その内容は、現在までの固定の心身障害学級の専門性が継続できるのか、同じ仲間の集団が、維持できるのかという不安が多かった。
    また、今回の構想は基本的に公立の学校についてであるが、私立の学校はどのように関係してくるかも課題である。
  • △私立の学校等については、具体的検討は、まだなされていない。モデルケースというわけではないが、都立ろう学校の幼稚部に在籍し、私立小学校に進学した児童が、補聴器調整ということで、月に1~2回都立ろう学校の幼稚部に通級しているケースもある。
  • ○特殊教育教諭免許状所有率問題だが、250人くらいの人が免許を持っているが、100人くらいは、盲・ろう・養護学校以外に配属されている。これは採用システムとして、説明しきれない状況である。採用や人事異動等も含んで障害種別の専門性のシステムを確立する必要がある。特に心身障害学級の場合は、区市町村の中で異動しているのでより厳しい。
  • ○教員の専門性について、種別の専門性は絶対に必要である。
  • ○今度の特別支援教室の特徴は、「校内委員会がある」点だと思う。コーディネーターも位置付けられた。保護者とか市民が入るとか、校内委員会も充実させて、質の高さと言う面をアピールしてほしい。
  • ○市民の反応が、委員に個人的に寄せられている。一方、7月17日の朝日新聞に「私の視点」ということで、医者の投稿が掲載されていた。その論点は、心身障害学級をなくすな、等々であった。50年近い実績を生かすべきである。通常の学級でやっていける子もいるかもしれないが、いけない子供がいるために心身障害学級があった。特に生活単元学習がなくなってしまうのではないか、というのが心配であるとのことだが、そのようなことはない。
    心身障害学級の良さ、積み重ねてきたものを、特別支援教室と名称が変わっても、生かし、さらに2、3年の実践を経て心身障害学級で受けた以上の質の高い教育が受けられるようになるのではないかと考えている。
  • ○学級担任の在り方に、言及している親が多い。「心身障害学級がなくなってしまう」といった誤解に基づく不安もあれば、学籍問題で、ほとんど指導を受けない先生が担任になったり、授業をしてくれる先生が担任でなかったり、という不安がある。特別支援教室の担任と通常の学級の担任が強い関係にあることを求めて、この概念を出している。保護者は、サービスの低下を恐れている。「サービスを低下させることは、改革の失敗である」と、私は考える。
  • ○「特別支援教育」というのは、現在の「特殊教育」に加えて、LDやADHDの教育ニーズのある子の教育のために、特別支援教室や学校が必要なのであり、その背景には通常の学級がある。通常の学級とか固定の心身障害学級とか通級指導学級というのではなく、連続したものである。戦後から今までに、50年が経った。これからの50年はどうなるのか。今までのように、あそこの先生に任せておけば良いという考え方ではない。
    特殊学級は、法的に位置付けられているが、現在、特別支援教室には、法的裏付けがない。だが、そのうちに法整備もされてくるだろうし、法的根拠が作られる方向にある。そうならないと、教員の配置や教育課程の編成がうまくできなくなる。
    特別支援教育を進めるに当たり次の3つのことが大事である。
    • (1)個別の支援計画
    • (2)特別支援教育コーディネーターと校内委員会
    • (3)エリア・ネットワーク
    特別支援教育コーディネーターに、保護者を入れるべきだという意見もあるが、あくまで校内組織であり、必要に応じて保護者の意見を聞くことはあっても、構成メンバーには入らない方向である。
    校内委員会と特別支援プロジェクトとは異なるものであり、保護者には、広域支援連携協議会の方で、必要に応じて協力していただく方向が良い。
  • ○保護者のかかわり方については、今後も検討の必要があるが、あくまでも意見を聞く程度であり、実際に施行するときには、インフォームドコンセントとか、グローバルスタンダードが重要である。
(2)エリアネットワークと都立盲・ろう・養護学校の問題について
  • ○特別支援学校の立場で、教室不足の実状の一例を話したい。6年前に100名強30学級で開校した学校が、現在は168名41学級の学校になっている。現状は教室不足のため、あらゆる特別教室等を用途変更して普通教室とし、切り抜けている現状である。盲・ろう・養護学校の再編整備についても、緊急な課題として検討すべきだと思う。
  • ○特別支援学校について、障害の重さとか、程度とか種類によって、専門性のタイプが必要で、視覚障害なら視覚障害の、聴覚障害なら聴覚障害の専門家が必要である。このことが一番大きい。
    特別支援学校にしても、特別支援教室にしても、3年なり5年なり、期限を区切って、保護者や地域の実情を聞きながら、形を作っていくことが必要である。
  • ○短期的なもの、長期的な対応も示していく必要がある。かつて知的障害児の希望者全員就学を決めた折、東京都は区立校や高校の空教室を借用し、分校を立ち上げた時期もあった。都立養護学校の過密校についても具体的な対応を示す必要がある。肢体不自由養護学校においては、重度・重複学級の課題がある。4割の子しか吸収できないでいる。普通学級の教育課程の編成に、たいへんな無理が生じている。重度・重複学級の子供の認定数、学級数増に伴う教室確保、整備の目途も示していく必要がある。
    また、長期的な視点から考えれば、肢体不自由校にも視覚障害児を受け入れるとなる場合、条件整備が当然必要になってくる。教員の配置対応等も考えるべきである。
  • ○養護学校だけでなく、すべての障害児教育において、重度化に伴う検討が必要であり、「重複」だけでなく「重度・重複」を落とさないように、必ず入れてほしい。
    肢体不自由においては、「医療的ケア」も大きな問題で、対応について長期的な目途を示す必要がある。
    エリア構想でも、盲・ろう・養護学校だけの充実ではなく、心身障害学級の児童・生徒や通常の学級の児童・生徒の支援も考えるとコーディネーター等、別途配置が必要になる。
  • ○早期教育が必要ということであれば、知的障害や肢体不自由の養護学校にも早期の教室が置かれてもいいのではないか。また、早期の教育については教員だけでなく、専門家がかかわるということをしっかりと明記してほしい。早期から指導、就学相談、さらには卒業後までの一貫した連続性のある計画も明記したい。
  • ○特別支援学校とは、複数の障害に対応できる学校である、例えば、A校は知と肢、B校は知と盲、C校は総合養護といったような、ことが求められてくる。京都市の市立養護学校のように、児童の通学の利便性を第一に考えている例もある。青森県立ろう学校など、時代逆行と思われがちだが、障害に応じた教育課程で成果を上げている。パートナーシップについてだが,コーディネーターが1人で大丈夫なのか、あるいは、盲・ろう・養護学校でそれができるのか、という問題もある。特別支援学校のエリアの中で、すべての障害に対応するのには、一人のコーディネーターでは、無理がある。地域の中に、特別な専門的施設・設備があり、区市で対応できる力があれば、そちらにその任に就いてもらい、任せる方法も可能であろう。
  • ○特別支援学校の在り方について、聴覚障害という面では、都立や区立の壁をはずして、自由に行き来できるようにするべきである。現在のろう学校が持っている、言語とか聴覚に関する専門性をエリア内に活用でき、その広がりが期待できる。
  • ○エリア・ネットワーク構想とは、障害種別や都と区市町村の制度上の違いがあっても、チャレンジして「やさしさを増す」努力をすることが大切である。
  • ○エリア・ネットワークは、説明不足で分かりにくい。副籍は良いが、一方、全国的レベルで見たとき、都立と区市町村の関係で、東京都は副籍という制度を作らなければ理解されないのか、そんなに遅れているのか、と見られても仕方がない。副籍がなくても、居住地の通常の学校では、いろいろな行事に「どうぞ自由に来てください」と、あるべきである。
  • ○「島しょにおける障害児教育のデザインが、含まれていない」とあるが、島しょの問題も、エリアとして考慮してほしい。そこで、教職員の配置とか、区市町村の学校とか、都立の学校とかという、ハードルを柔軟に実態に応じてクリアしていく必要がある。
  • ○特別支援学校ということで、一人一人のニーズに応じた教育に変化していく。それに伴って、寄宿舎についても、どんな在り方が良いか、検討した方が良い。
  • ○エリア・ネットワークの実効性を高めるには、人事問題や巡回相談の交通費など、人と金の使い方が柔軟に考えられるようにしたい。つまり、人事面や予算面も含めて、エリア内では自主的に自立的に柔軟に対応できるようにしたら良い。
  • ○知的障害養護学校では極端に教室不足である。一方、少子化を受けて小・中学校には空教室がかなりある。これらを、ミニ養護学校や分教室に活用し、通学したり地域で遊べるようにしたら良い。そうすれば、通常の学級の子供たちのためにも、刺激があって良い結果が現れると思う。
  • ○文京区には、国立大学の付属学校があるが、そのような学校とのネットワークの在り方について検討する必要がある。
(3)学校の専門性、教員の専門性と、その他の部分について
  • ○障害種別の免許があれば良いと、捕えられがちであるが、そういう問題ではない。障害種別の高い専門性を養い求めて行く必要がある。にもかかわらず、東京都は、新規採用3年で異動させるというが、専門性が高まるとはとても思えない。
  • ○人事異動要綱について、中身の理解が必要であり、3年とか6年とかの数字だけでなく、子供にとって良い状況を作っていくための異動要綱であるという視点もある。
    現在、都立高校の初任者は、特殊学校に1日研修するとか、義務教育の教員免許取得に当たり2日間の介護等体験が行われている。このようなことは、通常の学級の中にたくさん在籍している障害児に対して、以前より大きな成果を上げていると言える。静岡県では、普通教育の教員になり3年たったら、3年間、盲・ろう・養護学校を経験するといったことが行われているが、そうした人事交流も検討する必要がある。
  • ○異動の必要性は認めるが、聞こえない子供の場合、新しい先生がくると全く話が通じないという問題もある。ようやく通ずるようになったら、3年で異動となる。一番困るのは、現場の子供たちである。また、教師に、コミュニケーション技術、指導技術等を研修させてから現場に行かせないのが問題である。保護者の中からも専門性はどうやって維持するのかという不安の声がある。
    手話の指導を、通常の小・中学校からも依頼されるが、現在はボランティア活動として行っている。「障害のない児童・生徒やその保護者等への理解啓発を図る」対応として、もっともっと当事者団体とのかかわりを重く考えて欲しい。
  • ○コミュニケーションの指導方法等、一つ一つの研修をしてキャリアを積んで評価されるような人事のシステムが必要である。能力の高い者が、ろう学校に、10年、15年在籍しても良いだろう。一方、知的障害教育で10年、15年の専門性のある人間をろう学校でゼロからスタートさせることは、子供にも迷惑であり、大きな損失である。一つのことを積み上げた人が正しく評価されるシステムが必要である。
<副委員長より、本日のまとめ>

最終報告の中にある巡回指導も含めて、都立学校と区市町村立の学校の教員の行き来については、誰もが行けるということではなく専門性の高い人が行くようなシステムを作る必要がある。

幼児期から成人期までの連続性のある個別の教育支援計画については共通理解を深め、特別支援プロジェクトとの関係や盲・ろう・養護学校や小・中学校においての具体的な実施、就学指導委員会の役割等も含めて、さらに検討する必要がある。

緊急な課題として、知的障害養護学校の教室の確保、肢体不自由養護学校の通学、重度・重複学級の課題、医療的ケアの課題、訪問教育の課題等、整理し検討する必要がある。

また、副籍については、整理し、より検討する必要がある。

エリア・ネットワークについては、今のエリアで本当にうまく機能するのか、特別支援学校と特別支援教室の連携に関しては、都立でない学校との連携などについても検討する必要がある。

【4】その他審議事項

*今後の審議日程について

  • (1)審議日程を、当初予定の12回から3回増やして、15回とする。
  • (2)最終答申は、本年12月頃を目途とする。

全会一致で、了承確認

お問い合わせ

教育庁都立学校教育部特別支援教育課特別支援教育企画担当
電話:03-5320-6753 ファクシミリ:03-5388-1728
メール:S9000012(at)section.metro.tokyo.jp
迷惑メール対策のため、メールアドレスの表記を一部変更しております。
お手数ですが、メール送信の際は(at)を@に置き換えてご利用ください。

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