第8回 東京都心身障害教育改善検討委員会(議事要旨)

更新日

1 日時

平成15年4月25日(金曜日) 15時~17時

2 場所

東京都庁第二庁舎31階・第27特別会議室

3 出席者(順不同、敬称略)

上野委員長 大南副委員長 西川委員 吉澤委員 山内委員 米谷委員 濱崎委員 冬木委員 吉田委員 坂田委員 斎藤委員 近藤委員 越智委員 時任委員 石川委員 臼井委員 山際委員 大舘委員 野村委員 津田委員 佐島委員

4 議事内容

1 開会

2 事務局より配布資料の確認

3 人事異動に伴う委員、幹事、事務局職員の変更について

4 第7回東京都心身障害教育改善検討委員会の議事要旨報告

5 今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)「文部科学省調査研究協力者会議」について 事務局より要旨説明

(1)現状認識

特殊教育諸学校もしくは特殊学級に在籍又は通級による指導を受ける児童生徒の比率は平成2年度から増加傾向に転じている。

重度・重複障害のある児童生徒、LD・ADHD等障害のある児童・生徒数の量的な拡大傾向、対象となる障害種の多様化による質的な複雑化も進行している。

専門性が不十分な状況があり、専門性向上のためには、個々の教員の専門性の確保や幅広い分野の専門家の活用や関連部局及び関係機関の連携が不可欠である。

教育の方法論として、障害のある児童・生徒一人一人の教育的ニーズを的確に把握して、自立や社会参加を支援するという考え方への転換が求められている。

また、近年の厳しい財政状況を踏まえ、既存の人的・物的資源の配分(有効活用)について見直しを行いつつ、教育の地方分権にも十分に配慮した新たな体制・システムの構築を図ることが必要である。

(2)基本的方向と取組

障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う「特殊教育」から障害のある児童・生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う「特別支援教育」への転換を図ることを基本とし、「特別支援教育の在り方の基本的考え方」を次のように規定している。

○ 特別支援教育の在り方の基本的考え方

「特別支援教育とは、従来の特殊教育の対象の障害だけでなく、LD・ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児童生徒の自立や社会参加に向けて、その一人一人の教育的ニーズを把握してその持てる力を高め、生活や学習上の困難を改善又は克服するために、適切な教育や指導を通じて必要な支援を行うものである。」
具体的取組として

  1. 個別の教育支援計画
    障害のある子供を生涯にわたって支援する観点から、一人一人のニーズを把握して、関係者・関係機関の連携による適切な教育的支援を効果的に行うために、教育指導や支援を内容とする「個別の教育支援計画」の策定、実施、評価が重要である。
  2. 特別支援教育コーディネーター
    学内、または、福祉・医療などの関係機関との間の連携調整役として、あるいは、保護者に対する学校の窓口の役割を担うものとして学校に置く。教育的支援を行う人、機関との連携協力が重要である。
  3. 広域特別支援連携協議会等
    地域における総合的な教育的支援のために有効な教育、福祉、医療などの関係機関の連携協力を確保するための仕組みで、都道府県行政レベルで部局横断型の組織を設け、各地域の連携協力体制を支援することなどが考えられる。
○ 特別支援教育を推進する上での学校の在り方
  1. 特別支援学校の設置
    特別支援教育を推進する上での学校の在り方について、以下のような提言をしている。
    障害種にとらわれない学校設置を制度上可能にするとともに、地域において、小中学校などに対する教育上の支援をこれまで以上に重視し、地域の特別支援教育のセンター的役割を担う学校として「特別支援学校」の制度に改めることについて、法律改正を含めた具体的な検討が必要である。
  2. 小中学校における特殊学級から学校としての全体的・総合的な対応へ
    「個別の教育支援計画」を策定すること、すべての学校に特別支援教育コーディネーターを置くことの必要性とともに、特殊学級や通級による指導の制度を、通常の学級に在籍した上での必要な時間のみ「特別支援教室」の場で特別の指導を受けることを可能とする制度に一本化するための具体的な検討が必要である。
  3. 特別支援教育体制を支える専門性の強化
    国立特殊教育総合研究所、国立久里浜養護学校の今後の在り方、専門性の高い総合的な特別支援教育体制の構築を図ること、特殊教育教員免許状については、障害の重度・重複化や多様化を踏まえ、総合化等制度の改善について期待する。

6 議事

(1)「これからの東京都の心身障害教育のあり方について」(中間まとめ)「素案」について事務局より説明

改善の理念

「障害のある幼児・児童・生徒等の特別な教育ニーズに応え、一人一人の能力や可能性を最大限に伸長する多様な教育を展開する。」

前回までの改善の指針5項目を見直し、4項目の指針に変更提案したい。

  1. 障害の重度・重複化、多様化に対応するため、LD等を含む障害のある児童・生徒等の個に応じた指導を充実し、「特別支援教育」を推進する。
  2. 地域の特別な教育ニーズに対応するため、都と区市町村が連携し、「特別支援教育」体制を充実する。
  3. 児童・生徒等の教育ニーズに応じた専門的指導を充実するため、学校の専門性と教員の資質・専門性の向上を図る。
  4. 児童・生徒等の多様な教育ニーズに対応するため、教育環境の整備を推進する。

参考:前回までの改善の指針

  1. 障害の重度・重複化、多様化に対応するため、個に応じた指導を充実し、盲・ろう・養護学校の教育の総合化を推進する。
  2. 児童・生徒等の多様な教育ニーズに対応するため、教育環境の整備を推進する。
  3. 地域の特別な教育ニーズに対応するため、心身障害学級及び盲・ろう・養護学校の特別支援センター化を推進する。
  4. 小・中学校に在籍している障害のある児童・生徒の特別な教育ニーズに対応するため、指導の個別化を推進する。
  5. 児童・生徒等の教育ニーズに応じた専門的指導を充実するため、学校の専門性と教員の資質・専門性の向上を図る。
意見・提言等(○委員 △事務局)

センター化と体制の違いについて確認したい。

センター化とは、都内を複数のエリアに分け、盲・ろう・養護学校や小・中学校のある地域の中心となる養護学校をセンター校とし、センター校を拠点とした障害児の教育体制づくりをセンター化と考えている。
体制とは、特別支援教育を推進するための幅広い組織のこと。エリア内の盲・ろう・養護学校や小・中学校等と地域の関係機関とによって形成するエリア・ネットワ―クや、エリア・ネットワークを有効に機能させる役割のコーディネーター、エリア内の連携体制であるパートナーシップ、特別支援教室など特別支援教育を推進する総合的な組織を体制と考えている。

(2)中間のまとめの概要版について事務局より説明

全体構成について説明
序章

1 東京都における心身障害教育の在り方

近年の社会のノーマライゼーションの進展、重度・重複化や多様化の進行、LD・ADHD等の児童・生徒への対応等状況の変化があり、抜本的な対応が求められている。

国の最終報告にある「特殊教育から、特別支援教育への転換を図る。」としたことへの対応

従来の心身障害教育対象者だけでなくLD・ADHD、高機能自閉症を含めて障害のある児童・生徒への対応、一人一人の教育的ニーズに応じた教育的支援を行う「新たな心身障害教育」の構築

2 東京都の心身障害教育の改善の基本的な方向

    東京都の教育環境や社会環境に留意する必要がある。そのため、これまでの、心身障害教育の実績、学校数、対象児童、関係機関、発達した交通機関等を踏まえ改善を進める必要がある。 なお、これまでの障害のある児童・生徒の教育を心身障害教育と表し、LD・ADHD等の児童・生徒を含めたこれからの教育を「特別支援教育」と表すこととする。

第1章 東京都における心身障害教育の現状と課題

東京都の心身障害学級設置の数や在籍数、進路の状況等を示した。心身障害教育の現状と課題について述べている。

第2章 今後の東京都の「特別支援教育」への展開に向けた改善の方向
  1. 改善の理念及び指針
    1. 改善の理念‘
    2. 改善の方針
  2. エリア・ネットワーク構想
    1. エリア・ネットワークの形成
    2. パートナーシップの推進
    3. 特別支援プロジェクトによる支援体制
第3章 個に応じた魅力ある「特別支援教育」の推進
  1. 個に応じた指導の充実
  2. エリア・ネットワークに基づく「特別支援教育の推進」
  3. コーディネーターが中心となった個別の支援計画に基づく教育的対応
  4. 重度・重複化に対応するための教育課程の編成等教育ニーズに応える教育の推進
  5. 障害の多様化に対応する中・高一貫型の教育課程の編成、類型化
  6. 自閉症等への専門的指導
  7. 病弱の生徒の学力の伸長、多様な進路希望に対する後期中等教育の充実
第4章 「特別支援教育」への展開に向けた都と区市町村との連携と協力
  1. 身近な地域での特別支援教育体制の整備・推進
  2. 児童・生徒のニーズに応じた特別支援教室の設置や校内体制の整備
  3. 乳幼児から学齢期までの支援ネットワークの整備
  4. 盲・ろう・養護学校に学籍を置く児童・生徒の「副籍」の検討
  5. 社会参加・自立を目指した「個別移行支援計画」の作成
  6. 特別支援教育センターの設置
第5章 学校の専門性の向上・教員の専門性の向上
  1. 児童・生徒一人一人の障害の程度、状態や教育ニーズに応じた質の高い教育を進めるための専門的指導の充実
  2. 専門性の高い教員の確保と育成を図るため、教員採用や特殊教育教員免許状の取得の推進、教員の異動・交流や派遣研修の改善
  3. エリア・ネットワークを活用した研修・研究の充実
  4. 学校の専門性の向上のため、専門家や関係機関との連携の推進
第6章 児童・生徒の多様な教育ニーズに対応した教育環境の整備
  1. 障害の重度・重複化に対応するため、複数の障害種部門の併置により複数の障害に対応できる学校の設置
  2. 自閉症児等を対象とした学級の設置等、教育環境の整備
  3. 多様な教育ニーズに応えるため,学区域の見直しや弾力
  4. 後期中等教育の在り方の検討
  5. 盲学校・ろう学校の適切な学習集団の確保、知的障害養護学校の施設条件の改善、肢体不自由養護学校の通学負担の軽減等教育条件の改善
  6. 都民に開かれた学校づくりの推進
第7章 一人一人のニーズに応じた教育の展開を目指して

東京都の「特別支援教育」を創造していく。

障害のある児童・生徒の教育の在り方にふさわしい適切な表現についての検討を提言

  1. 校長のリーダーシップに基づく学校の主体的取り組み
  2. 都教育委員会と区市町村教育委員会とのパートナーシップに基づく緊密な連携
  3. 教育、医療、福祉、労働等の関係機関の連携
  4. 保護者・都民の理解と協力
  5. 教育資源の有効活用

以上が中間のまとめの素案の概要である。

[ 委員からの意見・提言等 ]
序章

    「発達した交通・通信網」とあるが、発達は利便性だけとは限らない。渋滞や地域による交通網の差など、大都市東京特有の問題点もあるということを考慮し、文言を配慮すべきである。

    「これからは、地域の中で」という考え方が示されたが、障害のある子供の保護者や家族の地域生活についてもふれるとよい。

    「新たな、今後の」と述べられているが、今までの心身障害教育の継続の上に成り立ち、さらに広くという考え方であるから表現を整理したほうがよい。

    「変換、転換」とあるが、除々に変化していくという文言が必要ではないか。

    国の最終報告の内容を引用しているので、そのままにせざるを得ない。

    「新たな心身障害教育の構築」という部分については、諮問内容との整合性の問題もあるが、今後は「特別支援教育」とすべきではないか。

第1章 東京都における心身障害教育の現状と課題
第2章 今後の東京都の「特別支援教育」への展開に向けた改善の方向

    エリア・ネットワークにおいて、全体をエリアとして分割するのはよいが、1箇所をセンター校と決めず、行政単位や地域別プランを加えた方がよくなるのではないか。

    「個別の支援計画」、「個別の指導計画」等の用語の説明が必要である。

    「用語集」を作り、中間まとめの最後に載せる。必要な部分については、概要にも反映させる。

第3章 個に応じた魅力ある「特別支援教育」の推進

    指針1に対応した教員の専門性や具体的な内容に関する章なので、専門性に関わった内容に触れる必要がある。キーワードとして載せて、「詳細は別途」という形にした方がよい。

    「6 障害に応じた専門的な対応をするため、自閉症への」の部分が自閉症等となぜなっているのか。自閉症がなぜ強調されているのか意味がわからない。「障害特性に応じた」の方がよいのではないか。

    特別支援教育の対象を通常の学級に在籍するLD・ADHDなどの児童・生徒まで広げたと理解しているがよいか。

    現在の心身障害教育に検討を重ね、新たな心身障害教育として特別支教育が検討されてきているが、従来特別支援学級と特別支援教室の二本立てであったものが特別支援教室に一本化された点について、伺いたい。

    これまで、学級と教室を使い分けてきたが、理解しにくいようなので「教室」に統一した。 「特別支援教育」担当の教員が巡回指導を行う指導形態や担当の教員を固定的に配置し、特別支援教室で指導する形態等児童・生徒や保護者の多様なニーズに応じて医療、心理、発達等に関する専門家の巡回指導の形態等も検討し、特別支援教室とした。

    特別支援教室とするところが、今回大きく変わった点。その場合の問題点等補足説明がほしい。

    仮称はいつまで使うのか。

    この仮称は、中間まとめの考え方を表している。都の考え方、方向を案として出しているが、小・中学校の教育なので、区・市の判断もある。名称は、区市町村の考え方にもよる。

    中間報告で大きく変わったのは特別支援教室だけになった点で、国の動きを踏まえてのことと思う。特別支援教室は、すべての学校に設置されているのか、補足の図がほしい。

    サポートルームというような新しい呼称はいかがか。

    全体の改善からは、質的充実・質的向上であると思っているが、この章からは、LD・ADHDだけに枠を広げたと感じてしまう。幅広い指導や対応を考えているのだから、そのことがわかる表現の工夫をしてほしい。

    本文中で「従来の盲・ろう・養護学校、心身障害学級で指導の充実に努力してきました。」と述べ、その上で新たな対応の必要な子供達がいると述べている。盲・ろう・養護学校も、心身障害学級のある小・中学校や通常学級も新たな対応が必要であり、対象児に加えて改善していくということである。表現の不足なところは、改めていく。

    本文中に、「現在の心身障害教育の在り方について検討・改善を加え、さらに新たに特別支援教育として整えていく。」と加えるとよい。

第4章 「特別支援教育」への展開に向けた都と区市町村との連携と支援

    在籍についてであるが、副籍という考え方はいい。盲・ろう・養護学校が本籍で、地域の小・中学校が副籍、また、その逆のケースも可能か。

    盲・ろう・養護学校への通級については、いろいろな形態が考えられる。本文26ページを参照していただきたい。

    知的障害のある児童・生徒が、盲やろう等複数の教育的サービスが受けられるよう検討をお願いしたい。

    副籍については、今後の検討の中で論議を深めていきたい。

第5章 学校の専門性の向上・教員の専門性の向上

    当事者との関わりが見えない。文中に「当事者団体」という言葉をいれてほしい。

    本文37ページの(2)に「保護者等の民間の人材を起用」として掲げているが、書き方については検討したい。

    教員の専門性の向上については、自主研鑽を行っているが、本文の中に取り上げられていないため、専門性の低い教員としかみえてこない。現在も専門的に努力しているが、今以上に求められるのだということを前書きとして加え、関係者に配慮した記述がほしい。

    本文36ページの(2)に、実際に行っている取組みを記載している。

    盲・ろう・養護学校が、センター的役割を果たしていかなければならない。教師は自分の学校だけでなく、地域での役割へと広がっていく必要性が出てきている。前書きに研修の充実の必要性を記述してもよいのではないか。

    第5章の概要にコーディネーターをキーワードとして概要に出したほうがいいのではないか。

    専門の免許状保有者を最優先に採用してほしい。また、採用と異動は分けて記載してほしい。

    免許状保持率は、直近の14年度版のものを載せてほしい。

    表現が「・・に努める。」のような努力目標となっているが、達成目標や数値目標を基本としていれてほしい。

第6章 児童・生徒の多様な教育ニーズに対応した教育環境の整備

    (5)は、この章の先頭に持ってくるべきではないか。夢を実現するためには、現在在籍している児童・生徒に充実した指導をすることが大切。特別教室も無い状況では、良い教育は出来ない。知的障害養護学校の普通教室の不足の解消、整備・充実を図ることが先決問題である。

    重度・重複障害のデータでは、知的障害児の重複率が少なすぎる。知的障害にほとんど副障害が無いなどということは考えられない。注釈を付けるなり、障害の範囲やデータ等の整理をしないと、重複児童が多いということが言えなくなってしまう。

    教育環境の整備に関して、重度・重複学級の整備や訪問学級について抜けている。病気で入院している児童・生徒の訪問教育は肢体不自由校の中にある。本文に書き込む必要がある。

    まとめの形が水平な形が多い。現場のネットワークと行政のネットワークの連携をしっかり繋ぐとよい。

    特別支援教室の全校配置など今後の整備について書き込みが必要である。

    各委員からいただいた多くの意見・提言を次回の中間まとめの仕上げに向けてさらに検討していきたい。ホームページに出したいので、言葉も精査する。

第7章 一人一人のニーズに応じた教育の展開をめざして

この章だけ表記の仕方が他の章と違っている。見出しや表記の仕方について工夫してほしい。

■事務局より連絡事項 <略>

記事ID:031-001-20240815-008169